世界のゴルフスイング事情|ドライバーとアイアンの打ち方は変えるべきか?
ゴルフリサーチャーTASK【世界のゴルフスイング事情】vol.5
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ゴルフリサーチャー・タスク
国際金融マンからゴルフリサーチャーに転身。米国のゴルフサイエンス団体Jacobs 3D GOLFのアドバイザリーメンバーであり、日本のアンバサダー。USGTF Teaching Professional、TPI Certified資格を所持。
打ち方を変える必要性はないが別の部分に違いが求められる
「偏重心構造」はドライバーからパターに至るまで、全てのゴルフクラブの共通の特性です。これこそ、ゴルフのゲーム性の根本であるとともに、私たちが年齢を重ねてもある程度の飛距離を得ることができ、生涯スポーツとしてのゴルフの核心であることは間違いありません。
一方でドライバーとアイアンは、物理基本構造はほぼ共通しますが、その扱い方については感覚的に違うようにも感じられてしまいます。
はたして、ドライバーとアイアンはその打ち方を変えるべきなのでしょうか。
女子プロのHubPathとClubPath
結論を先にお伝えしてしまうと、クラブ力学的にはその構造がほぼ同一である以上、「打ち方自体を変える必要はない」ということになります。
ただし、ドライバーとアイアンでは重心距離や重心深度、シャフトの長さやフレックスが大きく変わってきますので、それをよく理解したセットアップが必要ということになります。
ただ一点だけ、明らかな違いがあります。それが、ボールコンタクトのさせ方です。
アイアン、またフェアウェイウッドなどは、基本的に芝生の上にあるボールをヒットするわけで、クラブヘッドはディッセンディングブローでボールにアタックさせて、バックスピンコントロールをします。
現代のアイアンは低重心に作られているものが多く、シャローにヘッドが入ればボールは上がりやすい構造になっています。一方で、ドライバーだけはボールをコンタクトさせるべき理想的な位置が、そのヘッドのフェース面の赤道より少し上が理想で、ボールのスピンが減って最も効率的に飛距離を得られると言われます。よって当然ドライバーはティアップしたボールをアッパーブローで打ち抜くことが必要です。
ここで重要なのは、アイアンと同様にドライバーもスイングの際に最下点を意識するということです。実際には、二重振り子と言われる特性の中で理想的なスイング中の支点は、若干移動しながら曲率半径の増大を伴った円運動をすることになるため、インパクト付近の円弧の曲率は最小となり、直線に近い長いインパクトを得ます。その場合でも、必ず最下点は存在します。
アイアンはその最下点でボールを捉えるわけですから、ドライバーはその最下点に向けてヘッドを下ろす意識を持てば良いのです。結果、ドライバーのヘッドは最下点を適切な入射角で通り過ぎ、アッパーブローでボールへ向かいます。
アイアンはヘッドの円運動のほぼ最下点でボールを捉えますが、実はドライバーのティアップの位置とその高さは、そのアイアンのボール位置を起点に決まります。
アイアンのボール位置の飛球線方向側へティを横置きしたときの、ティの先端位置がドライバーの適切なティアップの位置となります。
そう考えると、ドライバーのティアップの位置やティの高さは重要で、正しくセットアップをして、アイアンと同じスイングをすれば良いとシンプルに考えることができます。もちろん、さらに積極的なティアップの仕方により、ボールフライトをデザインすることも可能になります。
一方で、全体のスイングとしてのキネマティックスは、ドライバーとアイアンでは若干違います。アイアンの場合はクラブヘッドのパスとグリップのパス(HUBPATH)の相違がかなり大きくなりますが、ドライバーはそれぞれのパスの相違が小さく、そのパスの円弧は重なってきます。
ドライバーのボール位置はアイアンのボール位置で決まる
協力/Jacobs 3D
GOLF TODAY本誌 No.578 140〜141ページより
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