女子プロのドライバースイング解説|笹生優花・田中瑞希・西郷真央
「アース・モンダミンカップ」をスイングで振り返る!PART1《躍動した若手編(1)》
今季の女子ツアー開幕戦。無観客の上に最終日は月曜日に順延という異例づくしの大会となったが、渡邉彩香の涙の復活優勝などインパクトは豊富だった。そして特筆されるのがツアーデビューの田中瑞希らの大活躍。田中たち7人のルーキー、鈴木愛、渋野日向子の実力者、スイング大改造が実って今大会5位タイの大里桃子ら10選手のスイングを石井忍が解説してくれた。
PART1ではツアー初優勝と2勝目を2週連続で成し遂げた笹生優花、そして田中瑞希、西郷真央の3人のスイングを解説する。
◉スイング解説
石井忍
いしい・しのぶ
1974年8月27日生まれ、千葉県出身。日大ゴルフ部を経て98年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くのツアープロを指導。千葉、神保町、赤坂で「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアのレッスンも行なっている。
躍動した若手編─1|両ワキの締めを意識したストレート軌道が特長
田中瑞希
たなか・みずき( フリー)
1998年10月24日生まれ熊本県出身。151㎝2019年のプロテストに合格し、ツアーデビュー戦の今大会で早くも優勝争いを演じて素質の高さを見せた。
インパクトゾーンが長いため打点が安定しやすい
両ワキを締めておくイメージが強いスイングです。そのためバックスイングはクラブがインサイドに上がり、トップでクラブヘッドが軽くループを描いてダウンスイングはアウトサイド気味に振り下ろしています。
アウトサイドから下ろすと通常はカット軌道になりやすいのですが、田中瑞希選手の場合はインサイド方向に上げておいて、ダウンスイングでは腰の回転主導でクラブを少し立ててくるという感じ。そのためほぼストレートな軌道でボールをとらえています。「インサイド・ストレート」の表現がぴったりのスイングだと思います。
腕とクラブを体の真正面にキープしていて、振り遅れてしまうポジションもまったくない。結果として左ワキの前でインパクトを迎えることができ、ショットの正確性がアップします。インパクトゾーンが長いのが魅力ですね。
左ワキの前でボールをとらえる
躍動した若手編─2|左足の強烈な蹴り上げで大きなパワーを生み出す
笹生優花
さそう・ゆうか(ICTSI)
2001年6月20日生まれ
東京都出身166㎝。圧倒的な飛距離を武器とする大型新人プレーヤー。「アメリカのメジャー大会に出たい」と大きな夢を持っていたが、2021年「全米女子オープン」で畑岡奈紗とのプレーオフを制してメジャー初優勝! 早くもその夢を実現させた。
下半身のパワーを有効活用した飛ばしのスイング
笹生優花選手も今大会5位タイの成績を残した期待のルーキー。身体能力がとても高くて、将来が楽しみな大型プレーヤーです。
特徴的なのはテークバックの始動とインパクトの左足の蹴り上げです。テークバックはクラブヘッドよりもグリップ側が先に動かしだしています。クラブヘッドから動かそうとすると手打ちになりやすいのですが、笹生選手は体の回転を先行させることでグリップが先に動き、そこからシャフトをしならせてトップへと勢いよく上げているのです。切り返しでも体の回転が先行し、自然と大きなタメが作られています。
そしてインパクトで左ヒザを一気に伸ばすように左足を蹴り上げて腰の回転スピードをアップしています。リストを柔軟に使ってヘッドを走らせる動きに加えて、ドラコン選手たちと共通した下半身使いが驚異の飛ばしにつながっているといえます。
バックスイングでシャフトがしなる
ダウンスイングは腰の回転がリード
左足の蹴り上げが パワーの源
インパクトで左ヒザを伸ばす
躍動した若手編─3|体は小さくてもキレキレスイングで飛ば右足内側を踏み込むから深い捻転が作られる
西郷真央
さいごう・まお(大東建託)
2001年10月8日生まれ
千葉県出身158㎝。ジャンボ尾崎ゴルフアカデミーの1期生で、19年の日本女子アマ優勝。昨年のプロテストは最年少で合格。
体の横の動きで大きなパワーを生み出すスイング
西郷真央選手もなかなかのロングヒッターですが、笹生優花選手が縦の動きでパワーを発揮しているのに対して、西郷選手の場合は横の動きでパワーを生み出すタイプといえます。
その特長がよく表われているのがバックスイング中の右足の踏ん張り。右足の内側でゴムティを踏んでいるとすれば、ゴムティを思い切り踏むようにして右足の内側に圧力をかけて上体を捻転させています。右足の内側でしっかり踏ん張れば右ヒザは多少右に動いても構いません。このように深い捻転を作っておけば飛ばしのパワーが存分に蓄えられて、ダウンスイング以降でターゲット方向にパワーをぶつけるイメージでヘッドを走らせることができるのです。
右足の外側に重心が乗ってしまうと右足の内側がめくれて、右ヒザや腰がスエーしてダウンスイングで体を正しく戻せなくなってしまいます。
バックスイングで深い捻転を作る
右足の内側で捻転のパワーを支える
GOLF TODAY本誌 No.579 26〜33ページより
「アース・モンダミンカップ」をスイングで振り返る!
Part2へ続く(※順次アップします)
●「アース・モンダミンカップ」をスイングで振り返る!
Part1:《躍動した若手編》・田中瑞希・笹生優花・西郷真央
Part2:《躍動した若手編》・古江彩佳・安田祐香・吉田優利・西村優菜
Part3:《今年も来るぞ!大本命編》・鈴木愛・渋野日向子《スイング劇的改造編》・大里桃子