【スライス特集】スライサー卒業はクラブ&ボール選びから!ギアで脱!スライス
長年悩んでいて、どうしても治らなかったドライバーのスライス対策 PART4

上達するために練習するのは当然として、自分に合ったギアを見つけることも同じくらい大切だ。ゴルフほどギアの選択肢が多い競技は他になく、つまりギア選びもゴルフの実力のうちと言っても過言ではない。とくに「脱!スライス」を目指すならば、ギアに頼るのが近道だ。
それでも右に飛んでしまう?いますぐ曲がりを抑えたい?
そんなあなたに即効く''処方箋''!

絶対に避けたいのはスライスの悪循環

「左を向いて構えたり、自分からつかまえにいったりなどスライスを助長するクセを抑制するためにも、最初からスライスしにくいギアを使うことが有効です」(ダンロップクラブドクター・小出浩樹さん)
クラブ開発者の思いとジレンマ|歴代『ゼクシオ』のスライサー救済作戦
2000年に初代が発売されて以来、ベストセラーを20年続けてきた『ゼクシオ』。いわば日本でもっとも多くのアベレージゴルファーに頼られてきたドライバーである。その開発者がギアによる「脱!スライス」のポイントを明かしてくれた。

2種類のやさしさ「つかまり」と「芯の広さ」をどうやって両立させるか
水谷成宏さん
◉住友ゴム工業 スポーツ事業本部 商品開発部 クラブ技術課長代理
6代目『新・ゼクシオ』の後『スリクソン』を担当し、現在は再び『ゼクシオ』を手がける。






ミスヒットに強いクラブほどスライスが出やすい?

杉本靖司さん
◉住友ゴム工業 スポーツ事業本部 商品開発部 クラブ技術課長
『ゼクシオ』の開発を初代からイレブンまで担当。『ゼクシオ』の生き字引的存在。
スライス対策は最優先しかし100%ではない
「脱!スライス対策」でもっとも結果が出やすいのはフェース角とライ角だ。
「フェース角をフックにしたり、ライ角をアップライトにすれば球が右に出にくくなるのでスライスの度合いは確実に小さくなります。ただしやり過ぎは禁物です。フックの度合いがきついとスクエアに構え直したくなるので意味がなくなってしまいます。ライ角も極端に立てると左を向いて見えます」(水谷さん)
それを防ぐために『ゼクシオ』にはちょっとした工夫があると杉本さん。
「フェースとクラウンの境目で方向を合わせる人が多いので、真ん中から先が右に逃げて見えるようにクラウンを塗装。フェース面は左を向いていても、ヘッド全体はストレートに見えるので、ポンと置いて構えて打てば球がつかまる仕掛けです」
フェースプログレッション(FP)の影響もかなり大きい。「FPが小さいほどインパクトが遅れるので球はつかまります。ただしグース感が強過ぎると構えにくくなるし、インパクトロフトが立って球が上がりにくくなるのでほどほどが大事です」(杉本さん)
重心距離の長大化がスライサーにとって壁となっているケースも多い。
「重心距離は短いほどヘッドローテーションしやすくなりますが、短すぎると慣性モーメントが小さく打点のばらつきに対して敏感になってしまいます」(水谷さん)
球のつかまりとミスヒットに対する強さ。相反する性能のバランスをどこに落とし込むかが開発者の工夫のしどころである。
アベレージにはトルク大きめが合う
『ゼクシオ』などアベレージモデルのシャフトは総じて軟らかい。「ヘッドスピードの遅い人、切り返しでタメが作れない人はトルクの大きなシャフトを使った方がクラブヘッドが返りやすくなって球がつかまる傾向になります」(杉本さん)
ただしモノや人によっては、逆効果になることもあるので注意が必要。
「シャフトのどこを軟らかくするか。スイングタイプによって手元が軟らかいシャフトがつかまる人もいるし、先が軟らかいシャフトの方がつかまる人もいます」(水谷さん)
シャフトの軽量化でもスライスは軽減できる。
「振りやすければ球をつかまえやすくなります。逆にオーバースペックは避けるべき。重すぎや硬すぎはクラブの挙動を感じにくく、その結果振れなくなります」(水谷さん)
また、カウンターバランスはスライスにも有効だ。「『ゼクシオセブン』からシャフトの手元重心化を進め、『イレブン』ではグリップエンドに相当な重りをつけました。スライサーの多くはテークバックからクラブをアウトに引いていますが、手元を重くすることでインサイドに引きやすくなりトップも安定。ダウンスイングもインサイドから下りるのでスライスがドローに変わることも期待できます」(杉本さん)
クラブでスライスを軽減する方策はたくさんある。
大重心角と長尺効果は人それぞれ?
シャフト部分を机に置いたときのフェース面の向き(仰角)を重心角という。ヘッドの返りやすさの指標としても使われているが、重心角が大きいとトップでフェースが大きく開きやすいため、スイングタイプによってはつかまりにくくなることも。フックフェースのクラブはその分重心角が大きい。
クラブレングスは、同一スペックでかつ同じように振れるという前提なら長い方がしなりやすいのでつかまりはよくなる。また、スイングプレーンがフラットになってトゥがアップするので左に行きやすくなる可能性もあるが、振り遅れると右に行くため、その結果バラつくことになる。
自分のスイングにスペックが合っているかどうかの見極めが大切だ。
わずかな違いで効果はてきめん!ドクターが処方!ヘッドとシャフトで球筋はどう変わる?

◉指導 クラブドクター
小出浩樹さん(ダンロップクラブハウス新宿店)
スイングとギアに精通し、「デジタルインパクトワールド」計測器を駆使して最適なクラブ選びをサポートする特別なクラブフィッター。
スイングを直す前にクラブを見直そう!
スライスの原因をクラブから考えると、ヘッドの重心がシャフト軸よりも遠く、後方にあるため、バックスイングでフェースが開きやすく、インパクトでスクエアに戻しにくいことが最大の理由です。また、ダウンスイングで体が早く開くとクラブが遅れて開いたまま当たりやすくなります。さらに、インパクトを合わせようと手でクラブを引き下ろせばヘッドが外から入るため余計にスライスの度合いが大きくなってしまいます。
クラブのスペックが自分に合っていないこともスライスの大きな要因になります。フェース角やライ角、重心位置、シャフトのキックポイントなどを考えずにヘッドスピードだけでクラブを選んでいる人が多いようです。また、重量などオーバースペックのクラブを使うことで、軸のブレが大きくなって余計にスライスしてしまう人もいます。
スライスを解消するにはスイングを直すのが一番いいですが、合っていないクラブのままでスイングを直したとしても結局同じことの繰り返しになります。いまは昔と違って色々なクラブを選べるし調整もできるので上手に利用すべきでしょう。
スライスをフックに変えるのはスイングも関わってくるので難しいけれど、曲がり幅を狭めてストレートに近づけることはクラブでいかようにも可能です。クラブで曲がりが抑えられれば余計な動きをする必要がなくなるのでスイング自体も良くなり、結果的に早く上達できます。
上がりやすいクラブを使うのも◎!

(1ライ角)2度アップライトでフェードがドローに変わった

スイングに関係なく効果が出る

アップライトなクラブはボールが右に出にくいので、原因が何であれスライスの曲がり幅を確実に減らせます。
(2重心距離)ウエイトを入れ替えただけでストレートに!

ヒールを重くしたらフェースが返る

ライ角はフラット(57度)なままでも明らかにフェースがターンしやすくなりほぼストレートな弾道に変わりました。
(3 カウンターバランス)鉛1枚で打ち出し方向もサイドスピンも改善!


スライス成分が減って飛距離もアップ

ライ角がフラット(57度)なので少し右に出ますがスライス回転がかなり減ってほぼストレートに近い弾道に。ヘッドスピードも上がりました。
(4シャフト重量硬さ)軟らかくて軽いシャフトは劇的につかまる

スライスが軽いドローに変化

60g台は球が少し右に滑るイメージ。50g台のシャフトは明らかに振り抜きがよくしっかりと球がつかまります。
ディスタンス系ボールでスライス軽減!クラブドクターが処方!キックポイントで球筋を変えられる
(5キックポイント)典型的スライサーには手元調子がマッチ


手元調子はしなり幅が大きい

クラブをアップライトに上げるスライサーにとっては、手元の軟らかいシャフトの方がヘッドが戻りやすく球がつかまります。

先調子=手元が硬い(ディアマナRF)


手元調子=手元が軟らかい(テンセイCKオレンジ)


(6ボール)ディスタンス系は曲がりが小さく距離が出る

ボールの直進性がスライスを軽減

打ち出し方向は同じ。スライス回転がドロー回転になることもありませんが、スピン量は減るのでその分確実に曲がりは少なくなります。
先調子がつかまるとは限らない
先調子のシャフトの方が球のつかまりがよくスライサー向き。そう誤解している人も多いと思いますがそうとは限りません。クラブをアップライトに上げてアウトサイドインに振る典型的なスライサーにとっては、手元の硬いシャフトはしなり戻りを使いづらく、手元の軟らかい元調子の方がヘッドのターンを助けてくれるので球がよくつかまります。
逆にフラットに上げてインサイドアウトに振るドローヒッターが元調子を使うとダウンスイングでヘッドがたれてフックのミスが出やすくなります。フックに悩んでいる人はクラブを立てたまま下ろしやすい先調子の方がミスを減らせるし、フェード気味の球を打てる可能性もあります。
インターナショナル・フレックス・コードについて

シャフトの硬さを表すダンロップ独自の指標。バット、バット寄り中間、チップ寄り中間、チップの4箇所の相対的な硬さが1~9までの数字で表されるので、シャフトの剛性設計を判断しやすい。直営店のダンロップクラブハウスには同じ基準で計測された他社の試打シャフトも用意されており、自分に合ったシャフトを選びやすい。

脱!スライスはヘッド選びから始めましょう

自分でフェースを返すタイプの人には『スリクソンZX7』や『スリクソンZX5』のようなアスリートモデル。オートマチックに球をつかまえたい人は『ゼクシオイレブン』や『ゼクシオエックス』のように球が上がりやすくて直進性に優れたモデルをオススメします。
クラブ設計家・山代谷哲男が2代目ゼクシオを愛用する理由

ここ1、2年の間に出たドライバーは、重心距離が40ミリ以上、慣性モーメント(MOI)も5000g・㎠を超えるものが珍しくありません。しかし、長重心・高MOIヘッドはフェースを開きすぎると閉じるのが難しく、ダスティン・ジョンソンのようにシャットに上げるスイングが要求されます。アマチュアにとってフェースローテーションを使いやすいのは重心距離が38ミリ前後でMOIも3800~4000g・㎠程度のドライバーです。また、MOIは3800g・㎠くらいあればミスヒットにも十分強く、それ以上大きくても目に見えた違いは出にくくなります。
また、MOIが2000g・㎠台のFWやUTに比べてドライバーだけ巨大化しているのも問題。短いクラブが真っすぐ打てるのにドライバーだけスライスする原因にもなっています。したがって、スライス対策として重心距離が短くMOIの適度な小さめのヘッドを使うのは大正解です。その際はシャフトを少し短めにして、クラブ慣性モーメントを小さくすると、さらに振りやすいクラブになります。
最近のヘッドはアスリートモデルでも大型化しているので、少し古いヘッドを探すのも手です。

協力/ダンロップクラブハウス新宿店
GOLF TODAY本誌 No.581 44〜51ページより
【シリーズ一覧】
●PART1 メカニズムを知ればスライスはカンタンに直る!
●PART2 原因別の対策ドリル
●PART3 スライスを味方につける!
●PART4 スライサー卒業はクラブ&ボール選びから!ギアで脱!スライス