「マッスルバック」は本当に難しいのか?
重箱の隅、つつかせていただきます|第13回
スイング、ゴルフギア、ルールなどなど……。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。
GOLF TODAY本誌 No.591/70ページより
戸川景
とがわ・ひかる。1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。
「マッスルバック」は本当に難しいのか?
ゴルフギア全般の飛距離性能の進化は、21世紀に入って目覚ましいものがある。だが、アイアンの飛距離アップは必要なのだろうか。
アイアンに本来求められる機能は、コース内の様々なライから飛距離を“刻む”こと。飛べばいい、というものではない。
その観点から、私はことアイアンに関しては“アンチ飛ばし設計派”だ。特に「ストロングロフト設計」は大嫌い。だが、最近のアイアンにはプロモデルっぽい見た目でストロングロフト、なんてものも出てきている。メーカーの仕掛けが間違っているのか、ユーザーの求めるものがおかしくなっているのか。
私は、ユーティリティがユーザーに認知され、ロングアイアンが消えた時点から、アイアンは「マッスルバックのプロモデル」がベストになったと思っている。その理由はただひとつ“ロフトが寝ている”からだ。
アイアンの打ちやすさは、地面からの打球高さの出しやすさとイコール。低重心や深重心設計よりも、圧倒的にロフトの大きさが効く。プロモデル、特にマッスルバック系もストロングロフト化の傾向はあるが、まだ寝ているものは多い。だから、本当は“やさしい”のだ。
事実、プロゴルファーはマッスルバックとはいかなくても、ハーフキャビティなどのプロモデル使用者が大半を占める。昨今のプロは、ドライバーを見てもわかる通り“やさしい”クラブでスコアを作るのが常識になっている。だから、プロモデルはポケットキャビティなどより“やさしい”はずなのだ。
アイアンは進化が止まっている、という人もいるが、ルール上で決められた形状のまま、ロフト30度以上のアイアンをこれ以上やさしくすることはできないと思っている。プロモデルの7、8番が難しくて打てない、という人は見たことがないし、逆にポケットキャビティの8番がとても打ちやすい、という感想も聞いたことがない。
打ちやすさを7番で比較すると、話がややこしくなる。飛び系は、プロモデルの5番相当のスペックだったりするので、やれスイートエリアが広いだの、高さが出るだの、飛ぶだのと、的外れな点で高評価となることが多い。逆に「バンカー越えのピンを狙えますか?」と聞きたいところだ。
アイアンはキャリーで運べて、止められてナンボのはず。飛び系も高さで止める、というが、ラフからの試打で上手くいったことがない。
ラフといえば、タイガー・ウッズはレッスン動画でライごとに“曲げ球”で対応し、落とし所をコントロールしていた。おそらく、ポケットキャビティではできないテクニックだろう。
スイートエリアが広すぎない、ソール幅が適度に狭いというのは、ライ対応には大きな武器。操作性ではやはりマッスルバック系のほうが“やさしい”。
アベレージクラスにとっても、ロフトがあると球を拾いやすく、ミスヒットでも曲がり幅は小さく、ショートする方向に外れるだけで大ケガはない。
ちなみに、ヘッド素材は軟鉄でなくてもいい。昔、タイトリストにステンレス製の『DCI990』という優秀なプロモデルもあった。
実は、ウッド類やユーティリティもロフトが大きいほど圧倒的にやさしくなる。注意すべきはつかまりすぎぐらいだ。
クラブを番手ではなく、ロフトとレングス(長さ)のバランスで選べるようになればいいが、それまでは取りあえずアイアンはプロモデル(6番〜)、それもマッスルバック(ロフト大)で揃えるのがベストだと思っている。
Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
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