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MT-28(フォーティーン)|時代の先を読み潮流を作ることのできる独自の開発姿勢が産んだ人気ウェッジ

商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第14回]

2022/03/12 ゴルフサプリ編集部

ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話をメーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はMT-28が主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.597/68ページより

時代の先を読み潮流を作ることのできる独自の開発姿勢が産んだ人気ウェッジ

研磨職人の都丸和寛氏の「MT CUSTOM」と原口鉄也プロ「T28(テツヤ)」の二人の名前からとって「MT-28」に。

日本屈指のクラブデザイナー竹林隆光による「誰か一人のために」というコンセプトが作り出した逸品

都内から関越自動車を使い2時間、高崎市の山際の吉井町にフォーティーンはある。冬晴れの澄み切った空気の中で、斜面沿いに瀟洒な建物が3棟立ち、グリーンも併設されている。藤岡で創業し、高崎市内へ事務所を移動して、この地には30年前の1991年に移転した。この地で生まれたウェッジ「MT-28」の成り立ちについて、当時の事情に詳しい取締役営業部長の桐谷一郎氏に伺った。フォーティーンといえば、現在ドライバーからパターまで作っている総合クラブメーカーであるが、スピンが強烈に効くウェッジのイメージが強い。それだけ「MT-28」の印象が強烈だったからである。

フォーティーンの創業者は日本屈指のクラブデザイナーの故・竹林隆光氏である。1949年生まれ、2013年64歳の若さで逝去された。1981年にフォーティーンは竹林氏を含め3名で創業された。クラブ設計請負とカスタムオーダークラブの会社としてスタートした。売り上げは設計業務が主流で、各メーカーの黒子として活動していた。プロギア、ヤマハ、ブリヂストンスポーツ、パワービルト等多くのメーカーが設計を依頼し、ヒット商品を出している。
「MT-28」のスタートは、若い研磨職人の都丸和寛氏が入社し、カスタムグラインディングでウェッジを削り始め、2000年頃、原口鉄也プロの要望を受けて、彼に合うクラブを作ろうとスタートした。もともと万人に合うクラブよりは、個人に合うクラブ、「誰か一人のために」との基本的なポリシーがあった。

一方、順調に設計請負業務で業績を伸ばしていたが、1990年代後半から、CADの進化により3次元CADでの設計・デザインが主流となり、各メーカーもCADを使い自社設計が中心となってきた。設計会社として図面を引いて金型を納める流れの仕事が少なくなってきた。フォーティーンはクラブメーカーとして、商品をだしていかなければ生き残れない時代となった。

当時、クリーブランドやボーケイのウェッジがプロの間で使われ始め、ロジャー・クリーブランドと親交のあった竹林氏は、まだ大手メーカーが参入していない隙間をねらうウェッジに目をつけたのではないかと思われる。今ではウェッジはアイアイセットと別に1〜4本選ぶ時代になっている。まさに「時代の先を読み、潮流を作る」竹林氏の真骨頂がここに発揮されていた。

取締役営業部長の桐谷一郎氏は会社の創成期を知る少ない社員の一人。

妥協を許さない形状へのこだわりが商品価値を上げて男子ツアーで使用率No1に!

名称「MT-28」は、原口鉄也プロが愛称として「T28(テツヤ)」を使っていて、研磨職人都丸氏の「MT CUSTOM」を組み合わせて「MT-28」と命名された。「MT-28」は2001年12月に発売された。原口プロとの開発は2000年ごろから始まり、試作を重ね、原口プロに合うソール形状を研磨し、フェースについては機械加工で平面を出し、溝を機械加工した。原口プロが試打で下りの傾斜のグリーン面に打って、バックスピンで斜面を登り戻ったとの逸話が残っているくらい、スピン性能が良かった。

発売の10カ月前には多くのプロにプロトタイプを配り試してもらっていた。

材料はニッケルクロムモリブデン鋼を選択した。耐摩耗性を重視しての材料選択であった。溝については、販売用として機械彫刻で溝をつけたものとしては、先鞭をつけたモデルであった。ウェッジというと軟鉄鍛造のイメージがあるが、当時フォーティーンは会社の規模が小さく、高額な鍛造型を作って、軟鉄鍛造を作るには資金的には厳しかった。逆にこのことが幸いして、低価なロストワックス鋳造型でニッケルクロムモリブデン鋼を使うことになったのが、ウェッジの性能に寄与した。

耐摩耗性に優れた素材で、溝を機械彫刻したスピン性能の高いウェッジはジワジワと人気を集めていた。生産は台湾メーカーで行なったが、本社で品質検査をし、満足がいかなかったものは、社内で削り直した。特に、初期品はバラツキもあり、安定するまで苦労した。竹林氏は特に形状へのこだわりがあり、普通では出荷してしまうレベルでも、ダメなものはダメとして廃棄していた。形状へのこだわりが、商品価値をあげた。

2001年12月に発売、市場からも「とにかくボールが止まる。溝にボールが削れてカスが付くが、止まるので面白い」と高評価であった。「MT-28」はプロにも評価され、2002年の男子ツアーで14週連続使用率No.1を記録、2002年から3年連続でツアー使用率No.1のウェッジとなった。

最初は、ゴルフ専門店の二木ゴルフ、スポーツロードなど取引先が少なかったが、評価が上がるにつれ多くのショップで取り扱ってもらえるようになった。ウェッジを単体で買うことは、今では当たり前で、ウェッジコーナーも大きなスペースが割かれているが、当時はワンスパンもなかった。竹林氏の「時代の先を読み、潮流を作った」結果である。「MT-28」は12万本販売され、後継機種も次々発売され、最新のRM4は12代目である。

多くの画期的なクラブを設計したことで知られる竹林隆光氏。
発売当時はまだウェッジを単品で買ったり、揃えたりするということは一般的ではなかった。しかしその先鞭をつけたのが「MT-28」といえる。


取材・文/嶋崎平人


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