数値はあくまで目安ヘッド重量と重心距離でネジれ具合は変わる

チップ側から30ミリの位置に、シャフト軸から1フィート(約30.5㎝)に1ポンド(約453.6g)の加重をかけたときのネジれの度数を測る。

「低トルク=上級者向け」はナンセンス

ルール上、パター以外のクラブは「ヘッドの重心が」シャフト軸線から離れていなければならない。そのため、スイング中には必ずシャフトにネジれが生じる。そのネジれ具合を数値化したのが「トルク」だ。

最新の計測基準としては、JGGA(日本ゴルフ用品協会)が2019年に発行したガイドラインが妥当だろう。これ以前は、メーカーごとに計測基準が異なっており、現在も統一はされていない。この点は、フレックス表記も同様だ。

測定方法は、バット側(手元寄り)を固定し、チップ側(先端寄り)に半径1フィートの円盤を取り付ける。その外端に1ポンドの錘を吊り下げ、円盤の回転した角度を計測する。

円盤の位置は先端から30ミリというのは各メーカーでも共通しているが、問題はバット側の固定位置。番手ごとのレングスの違いに対して、考え方がバラバラだったのだ。

JGGAでは、振動数スパンに合わせることを推奨しているが、各メーカーが準じるかどうかはまだわからない。旧モデルとの整合性が取りづらいからだ。ただ、現時点でも同一メーカー、同一モデルでは相対的にトルクの大小は選択できる。そこで、今回は数値云々ではなく、トルクの大きさの選び方について考えてみよう。

よく「低トルクは上級者、ハードヒッター向き」と言われるが、そうとは限らない。以前はフレックスとトルク、重量は正比例の関係で、硬くすると低トルクで重くなるのが必然だった。ハードヒッターにとっては軟らかいものはタイミングが取りづらかったこともあり、敬遠されたため「ハードヒッター仕様=重・硬・低トルク」のように扱われた。

だが、重量とトルクは別モノと考えるのが現代の主流だ。ジュニア世代は「軽・硬」シャフトで飛ばしている。トルクも同様で、飛ばしたいからといって絞り込む必要はない。特に、重心距離が長く、高MOIのヘッドほど低トルクとは相性が悪くなりやすい。スイングにあった適正なトルクは、ヘッドスピード以外の要素から判断すべきだろう。

ダウンスイングでは必ずヘッドターンが入り、グリップの動きとタイムラグが生じてシャフトがネジれる。トルクが大きいと、その差異を滑らかに吸収でき、スムーズに振りやすい。

トルクがあるとヘッドの挙動がマイルドに

シャフトのトルクとスイングの関係は、ヒッコリー時代から眺めるとわかりやすい。当時の名手、ボビー・ジョーンズは著書で「グリップとヘッドを持ってねじると、90度くらい回った」と述べている。ヒッコリーは木材ゆえに、硬すぎると折れてしまう。ハードヒッターでも、しなやかなものを選ばざるを得なかった。ゆえに、スイングメソッドはリズムとテンポを重視し、ミート率を高めるものが主流だった。

しかしスチールシャフトの登場で状況は一変。トルクが激減し、重量も60〜70gも軽くなったため、強打できるメソッドに移行した。ヒッコリー時代には、シャフトに負荷をかけない(ネジらない)動きが勧められたが、スチール時代はそのリミッターが外れていったのだ。だが、1970年代にカーボンシャフトが登場し、また状況が変わった。当初は軽いぶん、トルクも大きかったが、1980年代に入るとスチールよりもトルクを絞ったモデルも生まれたが、硬すぎるフィーリングと扱いにくさから消えていった。

現在では、カーボンシャフトは製法の進化もあり、フレックスとは切り離してトルクの大小を設計できるようになっている。結果、トルクはフェースコントロールをメインに選択できるようになったと言える。トルクが大きいと、手元の動きとヘッドの動きにズレが生じても反応が鈍くなる。操作性は少し落ちる半面、自動車のハンドルの〝遊び〟のように、スイングに馴染むようにヘッドの挙動(ターン)が滑らかになる。
 
また、トルクが大きいと、リリース時のしなり戻りに呼応して、ネジれ戻りも入り、球がつかまりやすくなる。フレックスがスイングに合っていれば、トルクが大きいほど弾道がドロー系になるわけだ。たとえば、右に打ち出せるハードヒッターなら、トルク大きめを選ぶことでプッシュアウトを防ぎ、安定したドローが打ちやすくなる。逆に、非力なフェードヒッターでも、逆球のミスを防ぐにはトルクは小さいほうがいい。ヘッドスピードに合わせるには、フレックスを軟らかめにするだけでいいのだ。

文/戸川 景 イラスト/庄司 猛


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