ピンゴルフ i525アイアンは中空構造アイアンの最終形態である!
コースに持ち込み、ロマン派ゴルフ作家が検証
ピンゴルフ i525アイアン
ピンゴルフの大ヒットアイアン『i500』発売から4年。後継アイアンになる『i525』は、どこがどのように進化したのか? コースで打ってみて、わかったことをレポートする。
撮影/篠原嗣典
「飛び系ちょいブレード」なんて、ぶっ飛ぶぐらいに新しいi525
ピンゴルフは、2022年2月18日に『i525 アイアン』を発売する。
かなり待たないと購入できなかった時期もあった『i500 アイアン』の大ヒットから4年が経ち、後継機種アイアンの登場である。
『i525 アイアン』のコピーは、“操れる、飛び系。ちょいブレード”である。
バックフェースがシンプルで、一見、ブレードアイアン(マッスバックとか、プレーンバックとか、と同義語)のように見えるところが、一つめのキラーポイントとなっているアイアンだ。
ブレードアイアンのように見えるのに、中身は中空構造で、フェースは高強度素材。ロフト設定は飛び系とぶっ飛び系の間、7番アイアンで29度というのは、前モデル『i500』と変わらない。
L字構造だったフェースはフェース面に埋め込み型になった。L字構造フェースというトレンドのハウツーから、以前のテクノロジーに逆戻りという印象だったが、ピンゴルフに限ってテクノロジーが後退する製品を市場投入するわけがない。それなりのメリットがあるのであろう。
ピンゴルフは、元々、ゲテモノと分類されても、機能性が優位であれば商品化して、ゴルフ用品業界をリードすることを良しとし、マニアックなファンを獲得してきた歴史がある。スタンダードでオーソドックスなモデルが出ると、熱心なピンゴルフファンからは、「ピンらしくない」と不満が出ることもあるほどだ。
オーソドックスなモデルの後継機種は、少しピンゴルフっぽいカラーを入れるモデルチェンジをすることがあった。個人的には、そういうパターンを先祖返りと呼んで、あまり良くない傾向だと考えていた。
『i525 アイアン』は、大ヒットアイアンの『i500』を越えられるのか?
見聞きする範囲では、全くわからない。
試打したスペックは、5番〜9番、W、Uの6本。シャフトはN.S.PRO 850GH neoのSフレックス。いつものように、自分のアイアンと交換して、コースでラウンドしてみることにした。
結論から書く。
こんなアイアンは、初めて打った。
中空アイアンの一つの最終形態だと考えるしかない仕上がりである。
とにかく、『i500』の後継アイアンとかは関係ない、といっても過言ではないクラブなのだ。
単なるアイアンではなく中空アイアンという別のカテゴリーに分類されるべきi525!
かねてから中空アイアンは、将来、アイアンの主流になると考えていて、積極的に中空構造のアイアンを試打し続けてきた。
市場には、優れた中空構造のアイアンがいくつもある。
しかし、どれも、完璧ではなく、どこかが未完成なイメージを抱かせるものだった。
自らが2年前にアイアンを替えるときに『i500』は候補であったが、選択しなかったのは、中空アイアンにはもっと先があると考えていたからだ。
『i525 アイアン』は、一発目で、度肝を抜かれた。
ロフト22.5度の5番アイアンは、高弾道の軽いドローで、190ヤード飛んだ。きれいで強い弾道の良いボールだった。
打音は少し控えめの音量で、濡れた鞭のような渋い音質だった。打ち応えは、軽めだったが、しっかり芯に当たった感じは伝わった。
「嘘だろ?」
と声が出てしまった。カートに戻りつつ、フェースをタオルで拭こうとした瞬間だった。ボールの跡は、フェースの芯よりも100円玉分ぐらいトゥ側にズレて付いていた……
このぐらい芯を外せば、まずは、手応えに違和感がある。
そして、ボールも飛距離が落ちたり、弾道が低くなったり、曲がったりするものである。だが『i525 アイアン』で打たれたボールは、ナイスショットそのものだった。
次のホールでは、7番アイアンを使った。
強いて、少しトゥ側に当てて、差を確認しようとした。
同じだった。
手応えはほぼ真芯に当たった手応えで、ボールは素晴らしい軌跡を描いて、狙い通りの距離(145ヤード)を飛んで、スピンで止まった。
真芯に当たったら、逆に何が起きるか気になって、次のホールは芯に当たることを意識して打った。手応えも、出るボールも同じで、スピンだけが少し増えて、よりボールが止まった。
『i525 アイアン』は、今まで打ったことがない、別次元のアイアンだった。
最も近い例えだと、チタンヘッドのドライバーを初めて打った感覚と似ている。どこに当たっても、そこそこ飛ぶ代わりに打ち応えは鈍感で、真芯ではない場所が一番飛んだりもして、それまでの常識が全否定された気持ちになったものだ。20世紀末のことだった。
ラウンドしながら、未経験のアイアンショットを打ちながら、わかったことがある。
中空構造のアイアンが、未完成だと感じていた理由は、今までのアイアンに似せようとした部分の違和感だったのだ。
中空アイアンは完成させると、全く別の分野のクラブになってしまうのだ。
『i525 アイアン』は、中空構造のアイアンの最終形態の一つだ。
ミスヒットの許容性は、ドライバー並である。
アイアンとしての基本性能は、全てクリアしている。
クラシックなロフトのアイアンに比べて、1.5番手アップの飛距離。ボールは曲げようとすれば曲がるが、原則としてストレートに飛ぼうとする。高弾道で、スピンは芯に当たればツアーアイアン並み。
ミスヒットしても飛ぶという意味でやさしいアイアンを使いたいゴルファーに『i525 アイアン』はオススメだ。
また、フェースのトウ寄りにボールが当たる癖があるゴルファーにもオススメである。
注意して欲しいのは一つだけ。長尺のドライバーが苦手だとか、長いクラブでミート率が落ちるゴルファーは、ぶっ飛び系とか、飛び系のアイアンは、上手く打てないケースがよくあるということだ。
ボールの高さを出すために、シャフトを長くしているアイアンの宿命は、『i525 アイアン』でも継承されている(7番アイアンのスチールシャフト装着で37インチ)。
芯が広いということと、どこに当たっても芯に当たったように感じるのは、今まではイコールではなかった。芯が広いことは良いことだが、手応えでミスがわからないことのマイナスがあると考えられていたからだ。
『i525 アイアン』は、そういう常識をぶち壊して、独自の新しい基準を作るスタートになるアイアンになると思う。
『i525 アイアン』は、新しい系譜の元祖となるアイアンだ。
カッコイイ外観で、一目惚れするゴルファーもたくさんいるだろう。
打ってみても、一発でたくさんの情報を感じ取れるアイアンに仕上がっている。
この新しい流れが、アイアン全てに影響するかというと、そんな未来は来ないと考える。中空構造のアイアンの最大の利点はミスヒットに強くなることで、ロフトを立たせて飛ばしても、他の要素で高さを出したり、スピンを掛けたりするのが可能になることを『i525 アイアン』は教えてくれている。
アイアンは、番手ごとに距離を打ち分けるクラブである。
詳細に打ち分けたいのであれば、打ち手の感性と反応し合う敏感さが求められる。
『i525 アイアン』は、そういう部分にも高いレベルで対応してくれそうであるが、この部分を極めようとすると、せっかくのメリットを消してしまうという矛盾がある。
飛距離不足のゴルファーは、番手の間隔が狭くなる。つまり、敏感さを省ける要素になるのだ。思い当たるゴルファーは、迷わず『i525 アイアン』を試打してみるべきである。未体験なゴルフをさせてもらえる予感にシビれることだけは……保証しよう。
篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてでビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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