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予約方法から見えてくる令和ゴルフ時代

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第6回

2022/02/20 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

ゴルフ場

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

撮影/篠原嗣典

キャンセル待ちの満員御礼のコースにて

ゴルフのハイシーズンは、春と秋。
多くのゴルファーが、暑くもなく、寒くもないプレーしやすい季節に楽しくゴルフをしようと、コースに殺到します。
人気のあるコースは、休日だけでなく、平日も満員御礼になったりします。

コロナ禍の2年間、来場者が減ったと嘆いているコースもありますが、若いゴルファーに門戸を開いているコースでは、過去最高の売り上げを記録しているところもあるそうです。

僕が試打ゴルフ撮影でお世話になっているコースも、昨年の夏過ぎから年末年始までは、異常なほど混み合っていました。

試打撮影は、普通にラウンドしながら撮影するので、前後の組に気付かれないのが普通なのですが、満員でコース内で渋滞が発生するぐらいになると、ちょっと困ったことがあります。
打音をきれいに録るために高性能のマイクを使用している関係で、近くで小さな声で話している音声が録音されてしまうことがあるのです。それが、打音にかぶってしまったりすると、撮り直しになってしまうことがあります。
だから、混雑していると、普段よりも、少しだけ緊張して、周囲にも気をつけるので、試打ラウンドは疲れるのです。

習慣で、週末のスタート時間などを確認するために、水曜日にコースに連絡をします。
そのときに、予約状況を聞くのも、挨拶みたいな習慣になっています。

「今週は、空いています。予約は半分ぐらいしか埋まっていません」
というように聞いて、当日、コースに行ってみると、とんでもなく混んでいて、満員御礼だということが数ヶ月続きました。

「空いているじゃなかったの?」
と馴染みのスタッフに聞くと、
「週末の天気予報が良かったので、木曜日の午後から金曜日の朝に、一気に予約が入って、キャンセル待ちも出ているんです」
というような会話を、昨年は20回ぐらいはしたような気がします。

僕のスケジュール表は、基本的には2ヶ月前にゴルフの予定が確定していきます。コンペや特別なものだと3ヶ月前とか、半年前に入るものもあります。
急なゴルフだねぇ、という感覚は、予定日まで1月を切っているぐらいで使うわけです。

「明後日、ゴルフ、行こうか」「明日、ゴルフに行ける?」
ゴルフ歴40数年で、そんな誘い合いをしたことは、ほとんどありません。

若いゴルファーたちに話を聞くと、この週の土曜はゴルフに行きたい、とかは、緩くは決めているけれど、お天気などの状況で確定して、予約をするのは前々日か、前日、というのは彼らの中では当たり前らしいのです。
スマホがあれば、いつでも、どこでも予約が出来る時代の常識なのかもしれません。

1組4万円でスタート枠を買いますか?

世代の差なのかもしれませんが、色々と話を聞いても、便利な世の中なのだから、自分も次からは直前のスタート予約にしようとは思えません。
そもそも、休みの日の1月前に予定が入っていない日のほうが稀で、仮の予定のままで、直前まで天気予報に頼るなんて、ちょっと無理です。
予定を決める感度というか、感覚が、そもそもかなり違うのだと思います。

とはいえ、オールドゴルファーは、早めにスタート予約をして、空いているところをヤングゴルファーが直前に埋めていくという棲み分けは、令和ゴルフ時代の予約方法としてマッチしているのかもしれません。

先日、ゴルフコースの経営者が、バブル期のようなゴルフブームが来るかもしれないと、期待を込めて話している現場に立ち会いました。
個人的には、嬉しいような哀しいような複雑な気持ちで、その話を聞いていました。

バブル期に、ゴルフコースが日本中で爆発的に増えた背景には、会員権が投機の対象になったからだけではなく、ゴルフをしたくともスタートが取れないコース不足という現実もあったからです。

当時の予約のスタイルは、基本は電話でした。3ヶ月前の同日の午前10時から受付というようなコースが多かったと記憶していますが、休日が予約対象の日になれば、人気がないコースでも、その時間になると電話がパンクしてしまうのです。
プー、プーという話し中の音ではなく、NTTのガイダンスが流れるのは、現在だと、大人気のアーティストのコンサートの電話予約をするときと同じです。

大まかに計算すると、当時のゴルフコースの数が2000コースで、1コースが目一杯詰め込んで200人だとすれば、その数は40万人分です。休日が年100日だとすれば、年間で4000万人分。
1000万人のゴルファーがいたと言われていますので、年間で4回しか休日にゴルフができないという計算になります。

昭和の頃は、月一ゴルファーでも十分だった、と懐かしむ話を時々聞きますが、休日しかゴルフをできない人は、月一をキープするのも大変だったのです。

ホラ話だと信じてくれないこともあって、困るのですが、その頃、スタート枠を売るビジネスがあったのです。
僕がお付き合いがあった業者は、最低料金で、1組4万円でした。
1組4人揃って、というのが原則だった時代ですから、一人1万円ずつです。
業者を通してスタート枠を確保すると、希望日にゴルフが出来るのだと、大喜びで、感謝されるのが当たり前でした。

予約電話の期日前に、コネを使ってスタートを抑えてしまう裏技もあったりして、これらのエピソードだけで一晩中ゴルフ談義が出来ます。バブル期は、不思議な狂喜乱舞の世界だったのです。

ちなみに、休日のゴルフ代は食事まで入れて平均で4万円を越えていました。(関東の場合)
今なら、その1回分のゴルフ代で、工夫すれば、毎週、ゴルフができます。

さあ、春のゴルフシーズン2022です!

2022年の2月の最初の三連休の初日。関東の多くのコースが積雪でクローズになりました。
僕は、天気予報を何十回も確認し、同伴者とも相談した上で、初日にしてあった予約を2日目に変更しました。
真冬のゴルフコースは、1月の2週目から久しぶりに空いていて、静寂を楽しむゴルフが可能になっていました。予約の変更は楽々できました。

あちらこちらのコースは2日目も雪が溶けずにクローズになりましたが、試打撮影をしているコースの雪は、初日の午後で、ほぼなくなったそうです。
朝、コースに着いてビックリしました。凄い人数の人がいたからです。雪から逃げてきたゴルファーたちでした。
「久しぶりに、本日は、満員御礼です」
スタッフは嬉しそうでした。

人で一杯のコースを見ながら、『さてさて、今年の春は、どうなるんだろう?』と想像しました。
昨年の秋のように、休みの日は、毎週のように満員御礼が続く、というのが模範解答です。

先程、具体的な数字で、バブル期のゴルフコースの混雑を表現しようとしました。ゴルフ人口を1000万人で計算しましたが、実際には、それより多かったというのが通説です。
現在、この国のゴルフ人口は500万人から600万人ぐらいだと想定されています。

コロナ禍でも安全に楽しめる屋外レジャーとして、若いゴルファーが激増したといわれていますが、その数は17万人から40万人と色々なデータがあり、その数には大きな開きがあります。
個人的な体感としては、増加した若いゴルファーの数は40万人でも足りないと思います。

若いゴルファーが誘い合わせて、コースに押し寄せてくる春は来ます。
コースを見渡して、自分が一番の高齢者だと自覚するのは、あと十年以上は先だと考えていましたが、もうすでに、昨年、何回か経験しました。

若いゴルファーに、負けてはいけないと気合いを入れつつ、2月の段階で、僕のゴルフの予定表は5月のゴールデンウィークぐらいまで、ほぼ埋まっています。オールドゴルファーのスタート予約スタイルは健在です。

気象の長期予報では、3月に入ると急に例年より暖かい日が続くとのこと……
ヤングゴルファーの予約スタイルも、秋以降、徐々に変わっていく傾向があるという現場のコースからの最新情報もありますが、ワンシーズンやツーシーズンでやめられないのがゴルフですから、春を告げる動植物のように、急に大挙し、コースを満員にして、僕らを惑わすのだと思うと、楽しみでならないのです。

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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