ゴルフクラブの「フレックス」について考える
深読み! ギアカタログ|今回のテーマ【フレックス】
ゴルフはプレーヤーの技術だけでなく、使っている道具の良し悪し、そして選び方が結果を大きく左右するスポーツだ。この連載では、そのゴルフギアについて深く深〜く「深読み」した話を紹介していく。今回は「フレックス」について深読みする。
GOLF TODAY本誌 No.598/146〜147ページより
「S」「R」表記でもモデルによって計測値は異なる
カタログのフレックス表記は現在も「L」「A」「R」「S」「X」が主流。だが、各メーカー、さらにはモデルごとでも振動数などの計測値は異なる。
適正フレックスは試打しないと選べない理由
クラブシャフトのフレックスの選び方が難しくなったのは、カーボン素材が登場してからだろう。ヒッコリーからスチールの時代は、硬い=重い=パワーヒッター用、軟らかい=軽い=非力用という選び方で通用していた。
だが、カーボンの場合は軽いのに硬いものが作れる。重量と切り離してフレックスを選べるようになったため、体力やヘッドスピードだけでなく、スイングタイプで選べるようになったのだ。
そこで、改めてフレックスを選ぶ理由を見直してみよう。なぜ、シャフトの硬さを選ぶ必要があるのか。
もしシャフトがゴムホースだったら? 昔、曲打ちのプロだったポール・ハーン・ジュニアは、パーシモンヘッドにゴムホースを着けたドライバーで、250ヤードも飛ばしてみせた。つまり、軟らかいだけでは飛距離性能は落ちない。ただし、一般ゴルファーがミート率を上げるのは至難の業だろう。逆に、石の棒のようにまったくしならなかったら? 飛距離性能はともかく、打球時の衝撃でシャフトが折れるか、手首やヒジを故障してしまうだろう。
こう考えると、体に余計な負荷がかからず、折れずに飛ばすためにはしなやかさが必要だとわかる。だが、軟らかすぎるとフェースコントロールが難しい。通常、インパクトエリアでしなり戻りが入ると、ヘッドは重心アングルなりに被りやすくなり、フックが出やすくなる。
しっかり振ってもフェースコントロールできるシャフトが理想的なので、まず振りやすい重量帯を選び、その中でフレックスを選ぶのが順序として正解だろう。
ところが、フェースコントロールはヘッドのスペックにも左右される。つまり、クラブとして組み上がったものを試打してみなければ、適正なフレックス(他のスペックも)はわからない、というのが結論だ。
現在では、各メーカーはヘッドに合ったシャフトをマシンと人間の試打を繰り返して開発し、オリジナルで用意していることが多い。特注やリシャフトするよりも、打ちやすいものが多くなっているようだ。
上級者向けのリシャフト用シャフトは、同じフレックス表記でも振動数値は高めのものが多い。これはヘッドスピードアップよりも安定性重視のためだろう。
チェックするなら「固有振動数」と「たわみやすさ」
とはいえ、片っ端から試打で選ぶ、というのは、一般ユーザーにとっては負担が大きく、現実的ではないだろう。大まかな目安を得るためにも、フレックスに関して押さえておきたい計測値は2つある。
1つは「固有振動数」。シャフトのバット(手元側)を固定し、チップ(先端側)を弾いた時に1分間に振動する回数を計測する。ただし、シャフト単体で行う場合はレングスによっても変わるし、グリップを装着しても変わる。ヘッドを装着した場合は、ヘッド重量でも数値は変わる。
押さえるべきは、クラブとして組んだ状態での数値だろう。振動数の値は、しなり戻りのスピード感であり、原則的にヘッドが重いほど遅くなるからだ。ユーザー目線で考えると、シャフト単体の数値ではあまり意味がない。
もう1つ調べておきたいのは「たわみやすさ」だ。1980年代に振動数計測が認知される以前は、シャフトの端を固定し、もう一方の端に錘を吊るした時のたわみの量の違いでフレックスを判断していたが、実は今でもこの静的な「たわみやすさ」の計測を行っているメーカーやチューンショップは多い。
というのも、振動数値が同じでもたわみ量が異なるシャフトというのは非常に多いからだ。同じ振動数値なら、たわみ量が大きいほどしなり戻りによるヘッドスピードのアップが期待できる。半面、スイングとの相性が悪ければ、ミスが多発することにもつながるだろう。
というわけで「固有振動数」の値の大小と「たわみ量」の兼ね合いで、自分に合う組み合わせを知っておくことは有意義だと思う。
ちなみに、たわみ量を計測する機器としては、現在は「センターフレックス計」が主流。シャフトの両端を押さえ、中間部に圧をかけてたわませる方式で、その圧の数値を測る。数値が高いほどたわみにくく、硬く感じるというわけだ。
実際、シャフトのフィーリングはトルクやキックポイントの違いも影響が大きい。メーカーの表記は同一モデル内の相対的なものと捉え、フェースコントロールしやすいフレックスを探すことが正解だろう。
カーボンシャフトの場合、フジクラ『スピーダー』のように高い振動数値の割にたわみ量大きめのモデルを作ることができる。「固有振動数」と「たわみやすさ」は分けて考えたい。
通常、切り返しでシャフトは大きくしなり、インパクトエリアでしなり戻る。ハーフウェイダウンの前後でしなり具合やフィーリングをチェックするのがベターだ。
文/戸川 景 イラスト/庄司 猛
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