ゴルフクラブの選び方|超基本ギア用語講座Vol.6【フレックス編】
知らないと、クラブ選びで失敗しちゃうかも!
「慣性モーメント」、「重心アングル」などなど、いろんなギア用語を目にするけれど、そんなこと知らなくたってゴルフ場では困らない! どうせ新製品を売るためのセールストークでしょ、と思っていませんか? そんなことはありません、ゴルフクラブの基礎知識を持っていれば、クラブ選びの失敗がなくなるだけじゃなく、飛びも方向性もスコアだってよくなっちゃうんです。そんな、クラブ選びにもスコアアップにも役に立つ、超基本ギア用語をお届けします。
ゴルフクラブ基礎知識講座【フレックス編】
Q.フレックスを示す記号「A」「S」「L」「X」「R」、一番硬いのと、軟らかいのは?
A. 一番硬い記号は「○」、一番軟らかい記号は「○」。
今回は簡単でしたよね。一番硬いのは「X」。一番軟らかいのが「L」です。順番に並べると
「X」→「S」→「R」→「A」→「L」。さて、それでは、それの意味はわかりますか? 表にまとめましたので確認してください。
「L」は柔軟、 「A」は平均的 って知ってた!?
「S」=スティッフ(硬い)、「R」=レギュラー(通常)はほとんどの方が分かったと思いますが、「X」=エクストラ(番外)、「A」=アベレージ(平均的)がわかった方は、ギア好きに違いありませんね。
ここで面白いのが、「A」=アベレージというところです。「R」と「L」の中間の硬さなのですが、今では一部のレディスクラブにしか使われていません。ところが、もともとは“平均的な”という名前ですから、現在より遥かに一般的だったのだろうと考えられます。今では、「A」ではなく「R2」という表示が一般的になっています。
また、「L」=リンバーというのも意外だったのではないでしょうか? Limber(柔軟な)という意味ですので納得といえば納得ですが、現在はレディスの「L」で定着してしまったようです。
シャフトフレックスと言う概念が生まれたのは今から100年ほど前です。当時女性ゴルファーは現在より遥かに少なかったはずなので、リンバーが元の呼び方というのもうなずけます。
スチールシャフトが主流となったからフレックスが生まれた
さて、シャフトのフレックスが生まれたのは100年ほど前といいましたが、スチールシャフトが一般化して行く中でフレックスが生まれたということです。ヒッコリーシャフトの時代は、同じ種類の“木”を使っていても、木目の詰まり具合で個体差が大きく、一本一本職人が感覚で作っていたわけですから、セット内のシャフトのしなり具合を大体合わせるのがやっとで、フレックスを区分けするなどという次元ではなかったわけです。
1900年初頭にスチールシャフトが誕生して、シャフトは手工芸品から工業製品に生まれ変わりました。すると、製品の均質性が高くなるので、シャフトの曲げ剛性を区分けする=フレックスを分けることが可能となったわけです。
実はフレックスの測り方はバラバラ
現在では当たり前となったシャフトのフレックスですが、実はその測り方と基準は統一されていません。現在シャフトフレックスの測り方には大きく分けて3種類の計測方法が用いられています。3種類ともにシャフトの曲げ剛性を計測する手法ですが、それぞれにメリットデメリットがあって、どれが正しいというものではないために、シャフトメーカーによって計測方法が違っています。
3つの計測法は「ベンド法」「センターフレックス」「振動数」です。どのように計測するかをイラストで紹介します。
フレックスの基準も統一されていないからややこしい
計測の方法が違っても、それぞれの計測方法で出た数値がどれくらいだったら「S」。これくらいだったら「R」というよう統一されていれば、同じメーカーの同じフレックスならば、同じ硬さになるはずなのですが、実はこれも統一されていないのです。
分かりやすい例はアイアンのシャフトです。同じメーカーの同じモデルでもスチールとカーボンでは、フレックスが同じでもカーボンの方が軟らかく感じるという経験をお持ちの方が多いはず。これは“気のせい”ではなく、実際にカーボンの方が軟らかいことがほとんどなのです。
なぜかというと、スチールシャフトはヘッドスピードが速い人が使うはず、軽いカーボンシャフトはシニアや女性といったヘッドスピードが遅い人が使うはず。だから、前者はハードヒッター向けの「R」、後者はシニア女性向けの「R」というふうに、「R」の基準を変えてしまっているからです。
これと似たようなことが、リシャフト用のシャフトにもあります。リシャフト用のシャフトはフレックスとは別に「40g」、「50g」、「60g」、「70g」というように重量帯のバリエーションがあります。そして、それぞれの重量帯でフレックスもあり、「40-S」、「50-S」、「60-S」、「70-S」といった具合に同じフレックスの重量違いがあります。
この場合、同じ計測法でこの4種類のシャフトを計測すると、ほとんどのシャフトメーカーで、「40-S」が最も軟らかく「70-S」が最も硬い数値となります。ここでも、ヘッドスピードが遅い人向きの「S」、速い人向きの「S」という基準が設けられているのです。
メーカーごとに、フレックスの計測方法が違うのは仕方ないとして、シャフト重量やターゲットとするゴルファーが違ってもフレックスの基準は絶対値であれば、わかりやすくなるのですが、数十年もこのようなフレックス分けを行って来ているので「新しいものを買ったら今までと違う!」という現象が起こるので、残念ながら、ある日を境に絶対値に変えるということはなかなか難しいようです。
シャフトがしならないとヘッドスピードは上がらない!
フレックスというものがメーカーやモデルによってまちまちということは分かったけれど、そもそも、フレックスってそんなに大事なの? という思いもあります。しかし、やはり大事です。シャフトが軟らかすぎてグニャグニャだったら、打ちにくくなるということは容易に想像できると思いますが、硬すぎてもヘッドスピードが上がりにくくなるという弊害が出ます。
イラストで示すように、スイングの前半には手元を加速させる動きを行い後半では手元を減速させることでヘッドは加速します。このときにスイング前半の加速が大きいほどヘッドスピードが上がりますが、シャフトのしなりとスイング前半の手元の加速には関係があります。
イラストではダウンスイング前半でシャフトがしなったときと、しならないときの違いを示しています。ダウンスイング前半でシャフトがしなると、ヘッドがスイングの中心に近づくので、ゴルファー自身が手元を加速させなければならないときに、加速させやすくなります。だから、しなるシャフトはヘッドスピードが上がるのです。
ただし、しなり過ぎてタイミングが取れなくなっては、ミート率や方向が悪化してしまうので“適度なしなり”が必要なのです。
しなりを感じられてタイミングが取りやすいものがいい!
これまでのことを踏まえて、フレックスを選ぶ際にはどうしたらよいかをまとめると、フレックスの表示は気にせず、実際に試打してみて、しなりを感じることができて、しかもタイミングが取りやすいフレックスを選ぶといいということになります。
ゴルフクラブ基礎知識講座 Vol.6 まとめ
フレックスは
・メーカーによって計測方法が違う
・モデルによって硬さの基準が違う
・同一モデルでも重量帯で硬さの基準が違う
・タイミングが取りやすく、しかもしなりを感じられるものがいい
文
大塚賢二(ゴルフトゥデイ編集部)
1961年生まれ。大手ゴルフクラブメーカーに20年間勤務。商品企画、宣伝販促、広報、プロ担当を歴任。独立後はギアライターとして数多くのギアに関する記事を執筆。現在はギア担当としてゴルフトゥデイ編集部に籍を置く傍ら、有名シャフトメーカーのフィッターとして、シャフトフィッティングも行っている。パーシモンヘッド時代からギアを見続け、クラブの開発から設計、製造に関する知識をも有するギアのスペシャリスト。
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●Vol.2:超基本ギア用語講座【スピン】
●Vol.3:超基本ギア用語講座【バルジとロールとギア効果】
●Vol.4:超基本ギア用語講座【慣性モーメント】
●Vol.5:超基本ギア用語講座【重心とスイートスポット】
●Vol.6:超基本ギア用語講座【フレックス編】
●Vol.7:超基本ギア用語講座【バランス(スイングウェイト)編】
●Vol.8:超基本ギア用語講座【高反発と飛びの3要素編】
●Vol.9:超基本ギア用語講座【ゴルフクラブに使われる素材】