米国のゴルフ界で話題!マスターズ覇者・シェフラーが重視するロースピンと高弾道
レックス倉本のGOLFアメリカンな話”ちょっと聞いて〜や‼︎”/第21回
2022年マスターズ、じっくりテレビ観戦しました。ディフェンディングチャンピオンの松山選手のプレーを注目したのはもちろんのことですが、タイガー・ウッズ選手があの事故以来の試合の出場を決断したことには驚きとワクワク感が湧き起こったこと、そして今年ノリノリのシェフラーとスミスの優勝争いと話題がたくさんのマスターズでかなり楽しみました。今回はマスターズでメジャー初優勝した絶好調のスコティ・シェフラー選手の強さの分析を改めてしてみようと思います。
「神様の導くままにいくしかない」という開き直りの境地で最終日を迎えたシェフラー
シェフラーのスイングについて。まずいえることはシェフラーはなんといっても特徴的なのが感覚派プレーヤーであること。その感覚を大事にして築き上げてきたのが今のスイングなのですが、では彼はクラブを振る上で何を重点的に重視しているかというと、ロースピンとハイランチ(高弾道)なんです。
これは今のゴルフ界では皆が注目する点なのですが、シェフラーはどうやってそれらを実現しているかというと、左手首を掌屈(掌側に曲げる)させてバックスイングをし、インパクトでもそういう使い方をしてロースピンを作り出します。そして、ハイランチを生み出すために、見てわかるようにアップライトにクラブを振っています。そのためにはボールの近くに立ちアップライトに振る準備をして、肩の回転を究極に縦回転にしています。バックスイングでは手を肩の内側に入れて手もアップライトに上がるようにし、インパクトでは肩がすごくなで肩になって、首が長くなって、手の位置が低くなり、クラブはロフトが立って入ってそこから高いアングルの弾道を生み出しています。ロースピンでヘッドスピードも速いので高い弾道でボールも飛んでいます。
シェフラーはジュニアの頃から自分の感覚でこれらの要素を追求し続けた結果今のようなスイングをしているのだと思います。すごくアップライトなスイングで脚の動きがエルビス・プレスリーのような独特のスイングをしていて、一見理想的なスイングには見えませんが、私的には今の時代が求める最先端なスイングをしていると思います。
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そして、その独特のスイングに磨きをかける助けをしているのがシェフラーのスイングコーチのランディー・スミス。テキサスのレジェンド。彼の教えるポリシーとしているのが、何より根本的に選手のオリジナル性を大事にするということ。選手が打ちやすいスイング、そこから全てを始めてアドバイスをしています。シェフラーがこれまで感覚で築き上げてきたものを最大限に大切にしながら磨きをかけていっているのがスミスのやり方。それがシェフラーにとっては実にうまく機能しています。
次にシェフラーのコースマネージメントとショートゲームについて。今回マスターズでも彼のショートゲームの巧さがあちこちで見られました。最終日の3番のチップインはロフトのあるウェッジのフェースを立てて使って、それをぶつけるような感じでスピンのかかった強くて低いボールで攻めています。これが彼の基本となるショートゲームのウェッジの使い方で、このランニングアプローチが今回のオーガスタでも随分目立ちました。グリーンをミスした時でもその得意のランニングアプローチが使える(グリーン面をたくさん使える)場所が多かったことも、彼のしっかり熟慮されたコースマネージメントがあったからだと言えると思います。
そのコースマネージメントについて多大なるヘルプをしていたのが今年から彼のキャディーをしているテッド・スコット。以前はバッバ・ワトソンと長年ともにしていたのですが、バッバといえばこれまた超がつく感覚派の選手。そのババをマスターズでも優勝に導くなどの経験値の高いキャディ。そのテッドにとっては感覚派のシェフラーには適切なアドバイスができるし、シェフラーにとってもそんなバッバとのバックグランドがあるテッドは彼の痒い所に手が届くようなアドバイスがもらえる完璧なキャディとして、そんなベストマッチングが今年のシェフラーの快進撃の要因になっているのは間違いないでしょう。
最後に、今回のマスターズの優勝へ導いたと思われるキーワードは、シェフラーの優勝インタビューで彼の口から語られた「神様」の存在。選手の優勝コメントで「神様」という言葉は久しぶりに出てきました。
最終日の朝、試合会場に向かう前に初優勝に向けてのプレッシャーや怖さで奥さんと2人で泣いていたそうなんですが、その時奥さんの「神様の導くままにいくしかないんじゃないの」という言葉をシェフラーも受け入れて、やるだけやってあとは神様のお導きに委ねる、というある意味開き直りの境地で最終日を戦えた、ということもこういう大きな舞台で勝利を手にするには必要だったことなんだなと、久しぶりに聞いた「神様」という言葉に驚きと彼の人間性を垣間見ました。
まだまだここに書ききれなかったシャフレーの分析、松山選手のこと、タイガーのことなどさらに詳しい話の続きは、下記「レックス倉本のBYTC GOLF」のYouTube音声動画で引き続きお楽しみ下さい。Podcast、Anchorでも配信中。「レックス倉本」で検索してください。
▼レックス倉本 プロフィール
本名は倉本泰信(くらもとやすのぶ)。1991年プロゴルファーに転向/コメンテーター歴14年広島出身。広島カープの大ファン。毎朝、目覚めとともにカープの試合状況をチェックするのが日課。大学時代をアメリカで過ごしたとき、唯一日本のブリヂストンのボール”Rexter”を使っていたのでゴルフ部のチームメイトから”REX”(レックス)と呼ばれるようになる。アマチュアゴルファー時代は、広島県の瀬戸内高校ゴルフ部からアメリカのオクラホマ州立大学を経てイーストテネシー州立大学ゴルフ部で腕を磨く。在学中には2度オールアメリカンに選出され、1990年に日本アマチュア選手権優勝、全英オープン出場を果たす。大学卒業後、1991年に日本のプロテストを合格しプロデビュー。その後、ヨーロピアンツアー、カナダツアー、アジアツアー、日本国内ツアー(1995年2部ツアーの賞金王に輝く)に参戦。2007年より米国ゴルフチャンネルでUS PGA Tour 、European Tour、US LPGA Tourなどのコメンテーターとして活躍。現在はフリーランスとしてGOLF TVでの解説のほか、 NHK、WOWOWでUS PGA Tour、US LPGA TOURの現地レポーターとしても活躍中。
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