エージシュート達成のためには、ゴルフの腕前よりも自己管理が大切
100切りなんて簡単だ!エージシューターの極意 第9回
エージシュート達成にはゴルフの腕前よりも大切な5つの「K」があるという。今回もエージシューターの高橋氏が、ゴルフの達人になるだけでなく、人生の達人になる方法を伝授します。
写真提供/高橋健二
レギュラーティからエージシュート1000回達成した方もいる
先日、エージシュート1000回のシニアゴルファーとラウンドしました。神奈川県川崎市在住の田中菊雄さん(87歳)です。エージシュート1000回はもちろんすごいですが、田中さんがすごいのは、その1000回をすべて6100ヤード以上のレギュラーティから達成していることです。
いま日本にはエージシュート1000回越えのエイジシューターが10人近くいて、私はそのうち8人に取材していますが、田中さん以外は全員地方住まいです。地方ではゴルフ場が平日の集客を目的に「シニアレディースコンペ」を開催しています。その場合、シニアは全員シニアティからのラウンドになり、そこに参加する以上「私だけ、レギュラーティからやります」とはいかないので、地方のエイジシューターはほぼ全員がシニアティからのラウンドで達成しています。
ただし、だからといって、シニアティからのエージシュートには価値がないなどとは、まったく思いません。80歳をすぎても18ホールをしっかりラウンドする。そのことに何よりも価値があると思っているのです。あなたの周りの80歳過ぎの老人を見てください。ゴルフどころか、散歩すらできなくなっている人が少なくありません。
ゴルフでエージシュートを目指すことは、健康で生き生きと日常を送る、いわゆるQOL(クオリティー・オブ・ライフ、生活の質を高める)に繋がり、国の医療費削減にめっちゃ効果があると考えているのです。
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エージシュート達成に必要な5つの「K」
そこで今回は、どうすればエージシュートを出せるのかを紹介しましょう。
私はこれまで全国のエージシューター約100人に取材していますが、それらの取材を通じて、エイジシュートを出すには5つの「K」が必要だと考えました。
それをこれから紹介します。
●1つめのK:健康
エージシュートを目指すのに一番大事なのは健康です。
熊本のエージシューター植杉乾蔵さん(95歳・エージシュート1473回)は、60歳から85歳まで35年間、「年間150ラウンドを切ったことがない」と言います。年間150ラウンド以上を35年間続けてきたのです。不運なことに85歳の年に腰骨を骨折、記録はそこで止まりましたが、骨折が治ってからは95歳のいまも週2のラウンドを続けています。
また冒頭に紹介した田中菊雄さんは、87歳の誕生日までにエージシュート1000回を達成する目標を立て、そのために85歳の年に年間317ラウンド、86歳の年には年間334ラウンドしています。年間334ラウンドといえば、12カ月で割ると28。つまり1カ月に28ラウンド。ゴルフを休んだ日は月に2~3日だったのです。では台風や雪が降った日はどうしたか? 「事前に予約を取り直してラウンドしました」(田中さん)
どうですか。この2人は極端としても、エージシュートを狙うにはまず健康が第一。どんなにゴルフが上手くても、80歳で18ホール回る体力がないとエージシュートは難しいと申し上げておきます。
●2つめのK:金
2番目に必要なのがお金です。
地方のゴルフ場では最近、5千円以下のプレーフィーでラウンドでき、かつ70歳以上は利用税が減免になるため、エイジシュート世代は4千円前後の料金でラウンドできるところが少なくありません。それでも、ゴルフはプレー代に数千円はかかるわけで、ほかにゴルフ場までのクルマのガソリン代や高速代を加えると、決して安い遊びではありません。ましてやエイジシュートを狙って週に2~3回ラウンドしようと思えば、それなりに自由に使えるお金が必要です。
●3つめのK:カカア、ないしは家族の協力
「あんた、今日もゴルフなの。もう歳なんだからいい加減にしたら」という奥さまや、「お父さん、もう80過ぎたんだから免許証を返上したら」という娘がいるようだと、エージシュートを狙うことは厳しいです。エージシュートを目指すためには、カカアや家族に気持ちよく送り出してもらえる環境を整えておくことも大事です。
●4つめのK:交友。ゴルフ友達です。
身近なゴルフ友達にエージシューターがいると、多くの人は「あいつにできるのならオレも」と考えるようです。だからメンバーにエージシューターがいるゴルフ場では、ほかに必ず数人のエージシューターがいます。言い換えると、エージシュートを狙うなら、エイジシューターをゴルフ友達に選んで自ら交流を求めたり、同じエージシュートを目ざす友人を作って互いに切磋琢磨する環境を作るほうが達成は早まります。
●5つめのK:気持ち。絶対にエージシュートを出してやるという気持ちが大事です。
この気持ちがあると、前4つのKはすべてクリアできます。まず健康は、ふだんの食事からお酒の量や血圧、血糖値なども含めて、しっかり自己管理するようになります。冒頭の田中さんは50歳の年に大腸がんを、80歳の年には前立腺がんを手術していますし、仙台の大久保勝男さん(88歳・エージシュート350回)は60歳の年に心臓弁膜症の手術をし、医者に「心臓病のリハビリは歩くのが一番」と言われ、そこから河川敷コースに通いはじめてエイジシュートを達成しています。見方を変えると、エージシュート年代で無病息災な人はいないとさえ言え、皆さんそれを克服してエージシュートを出しているのです。
気持ちがあれば、ゴルフ代に使える小遣いは少なくても安いコースを選んでラウンドするようになり、カカアや家族にもやさしく接するよう心がけ、ゴルフ友達もお互いに研鑽し合える人を選んで付き合うようになります。
エイジシュートを目指すと「人生の達人」になれる
これまでの説明でわかる通り、エージシュートは「ゴルフの達人」であれば誰でもできるというものではありません。むしろ、エージシュートにゴルフの腕前はそれほど必要ないとさえ言えます。だって考えてみてください。85歳の人はボギーペースで回って、前半のハーフに3つ、後半に2つパーを取れればエイジシュートを達成できるのです。ボギーペースで回る「ゴルフの達人」なんて聞いたことないでしょう(笑)。
それよりも、85歳になっても18ホールを回って85でホールアウトできる体力や体調を維持し、食生活も含めてしっかりと自己管理のできる「健康の達人」であるほうが何倍も大事なのです。
また、ゴルフをやるにはお金が必要で、そのために若い頃は仕事を一生懸命やった「仕事の達人」でなければいけません。
あるいは家族に笑顔でゴルフに送り出してもらえるよう、ふだんから家族とのコミュニケーションが取れている「家庭生活の達人」であるとか、ゴルフに限らず友人知己との交流を大事にしている「友だち作りの達人」であることも大事でしょう。
言い換えると、エージシューターはそれらすべてを兼ね備えた「人生の達人」なのです。そしてエージシュートを目指してゴルフに取り組むと、誰でも人生の達人になれる。これこそがエージシュートをお勧めする最大の意義といえるのです。
エージシュートはボギーペースで回っても達成できる。そう聞くと、とたんにエージシュートが身近に感じられてきたのではありませんか? 次回は、そういうあなたのために、エイジシューターがやっている体力維持のフィジカルトレーニングについて紹介します。
高橋健二/ノンフィクションライター。1948年生まれ。企業ものノンフィクション「スーパーファミコン任天堂の陰謀」などを多数執筆。趣味はゴルフ。エイジシュート達成者(エージシューター)を100人以上取材し、自身も68歳のとき1度達成している。
なお、エージシューターとは1ラウンド(18ホール)のゴルフで 自分の年齢以下のスコアを出したゴルファーのこと。生涯で達成できるゴルファーは非常に少なく、ゴルファーにとっての究極の目標でもある。
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