待ち時間の苦痛を回避できる?〝ショットガン方式〟を採用するべきメリット
重箱の隅、つつかせていただきます|第25回
スイング、ゴルフギア、ルールなどなど…。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。
Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
GOLF TODAY本誌 No.603/106ページより
〝ショットガン方式〟はツアーにこそ有効か?
大人数が参加するコンペなどで採用さ方法に〝ショットガン方式〟というのがある。アウト1番、イン10番だけでなく、複数のホールから一斉にスタートするやり方だ。
組ごとのスタート時間の差が少なくなるため、コンペの終了時間を早めることができるメリットがある半面、スタートホールへの移動、最終ホールからの移動、昼食を取る場所や時間の調整などが必要になる。
参加者の反応もマチマチで、シンプルに時間短縮を喜ぶ人もいれば、ハーフ9ホールごとのスコアが付けられない、クラブハウスで昼食が取れないと文句を言う人もいる。
私は以前から、プロのトーナメントこそ、この〝ショットガン方式〟を大いに採用すべきだと思っていた。理由は単純、試合時間の短縮が可能になるからだ。
ここ数年、異常気象の悪天候でスタート時間の遅延、日程短縮となるトーナメントが増えている。なるべく予定のホール数、ラウンド数を消化できるよう、時短できるラウンド形式を通常運転で採用する時期に来ていると思う。
プロトーナメントの場合、昼食を挟まないスルー形式だし、カートで混雑することもない。事前の練習ラウンドで情報は集めてあるはずだから、スタートホールがどこになろうと関係ないはず。それでも、スタートホールの難易度の違いや出だしのプレーリズムに違いが生じるとして、不公平という意見が出るかもしれない。
だが、スタート時間が午前と午後など、大きく異なる通常のスタート方式で、天候や風の強さがガラリと変わってしまう場合のほうが問題ではないだろうか。
ただ、導入する場合にネックに感じていたのは、テレビ中継への対応。映しやすいよう、決勝ラウンドだけは今までどおり1本スタートにすべき、と思っていた。〝ショットガン〟では、優勝争いの選手を追い切れないという懸念があったからだ。だが、それもネット中継ならクリア。好きなホール、見たい組を視聴者が選ぶことができる。国内ツアーでも採用できる準備は整ってきた、と感じている。
ギャラリーにとってもウォッチャーにとっても、効率的!
莫大な資金、USツアーの出場資格停止騒動などで何かと話題の新興ツアー「LIVゴルフ」だが、実際に初戦から〝ショットガン方式〟を採用している。出場する全選手のラウンド所要時間は1日5時間程度。スムーズなプレー進行に成功しているように見える。
選手全員のラウンド時間を短縮できたことは、ギャラリーからも好評だった様子。実はトーナメント観戦時間が長いのは、トーナメント会場に直接訪れるギャラリーにとっても、テレビ観戦するウオッチャーにとっても、苦痛だったに違いない。〝ショットガン〟採用なら、約2時間のライブ中継で、全選手のサンデーバックナインを網羅することもできるはず。視聴者の楽しみ方も大きく変わるだろう。
唯一、気がかりなのは「ツアー公式記録」の継続性。9ホールごとのベストスコアなどの記録を、どう処理していくか。まあ、ツアーの記録方式さえ決まれば大した問題ではないのだが。
先程、ネット中継なら決勝ラウンドも〝ショットガン〟でいい、と述べたが、やはり勝負の決着、ウィニングパットは18番ホールで見たいということなら、全選手視聴は諦めて、最終日だけは1本スタートのままでいいかもしれない。
毎年「マスターズ」や「全英オープン」のテレビ観戦で寝不足になる身としては、中継時間が半分とは言わないが、せめて3分の2くらいに減ってほしい。〝ショットガン方式〟が採用されれば、それは現実になる。
戸川景(とがわ・ひかる)
1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。
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