1. TOP メニュー
  2. ゴルフ知恵袋
  3. ゴルフ好きがゴルフを〝見たくなる〟モチベーションは何ですか?

ゴルフ好きがゴルフを〝見たくなる〟モチベーションは何ですか?

重箱の隅、つつかせていただきます|第26回

2022/09/26 ゴルフサプリ編集部

ゴルフ,ボール

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど…。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。

Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
GOLF TODAY本誌 No.604/106ページより

なぜトーナメントを見たくなるのか?

なぜトーナメントを見たくなるのか?

今回のテーマは最初〝見たくなるトーナメントとは何か〟と考えていたが、どうにも腑に落ちる回答が見つからなかった。

トーナメント自体に軸足を置くと、やれ賞金総額だ、伝統と歴史だとか、トーナメントの格や商業的な規模、運営方法などを論じてしまうだろう。

だが、それは本当に我々ゴルフ好きが〝見たくなる〟モチベーションに直結するものだろうか。


私の場合、あくまでも個人的なものだが、スポーツ全般に対して…

〝思い入れの強い頂点を目指し、つかみ取るプレー〟
〝思い入れの強い頂点に全力で挑むも、敗れるプレー〟

が見たくて仕方がない。

だから、観戦には大事な点が2つある。1つは、プレーヤーの〝思い入れの強い頂点〟への共感。
オリンピックなら金メダル、ゴルフならメジャータイトル獲得などはわかりやすいと思うが、公式競技初優勝、スランプ脱出の復活優勝などのようにプレーヤーごとに生まれる〝頂点〟もある。そこに共感できると俄然興味が湧いて、そのプレーぶりを見たくなる、というわけだ。

もう1つは、共感するために必要な、プレーヤーが持つ〝ストーリー〟だ。
単にプロフィールを知るというより、頂点に対する〝思い入れの強さ〟を測るバロメーターになる。スポーツでは、技術的に優れたパフォーマンスを見たければ、エキシビションで十分。トーナメントで見たいのは、おそらく〝プレッシャーとの闘い〟であり、だからこそ〝敗れる〟光景にも共感できるのだと思う。

どの場面を見たいかで〝ストーリー〟が決まる

さて、この〝頂点〟と〝ストーリー〟基準で観戦するとなると、最終日のプレーの過程を見たいのか、スポーツニュースのダイジェストで勝敗だけを知りたいのかが決まってくる。最近は、スポーツニュースで済ますことが増えている気がする。

初日から通しで見たくなるのは〝ストーリー〟が集まることからやはりメジャータイトルになる。ここが今話題の「LIVゴルフ」とは異なるところか。

LIVゴルフの「LIV」の意味って知っていますか?

いま、世界の男子ゴルフツアーを揺るがしているのが、「LIVゴルフ・インビテーショナルシリーズ」です。改めて言うまでもなく...

あわせて読みたい

今年のメジャータイトルで最高に楽しめたのは、7月の「全英オープン」最終日のキャメロン・スミス、キャメロン・ヤング、ローリー・マキロイの三つ巴もさることながら、8月の「AIG全英女子オープン」だ。

優勝争いを演じた渋野日向子、アシュリー・ブハイとチョン・インジ、3人の持つ〝ストーリー〟が秀逸。プレーの展開も最高だったと思う。予選落ち続きから、スイング改造まで中傷されていた渋野が初日単独トップ。自信と不安をのぞかせながら最後まで踏ん張った。

今年「全米女子プロ」に勝つまで、スランプでうつ状態まで落ち込んだ天才、チョン・インジも笑顔を絶やさず安定したプレー。プレーオフでミスしても、笑みを浮かべる姿に復活を実感できた。

そしてなんといっても、14歳で南アツアー優勝の元天才少女、アシュリー・ブハイ。
プロ転向後は16年間で欧州ツアー3勝と物足りない実績。それが3日目を終え、5打リードの独走。最終日にスコアを落とすのはメジャーではよくあるが、ブハイは大詰め15番で痛恨のトリプルボギー。ここで眠気が覚めた。16番からブハイは粘って、粘って、粘って。プレーオフでも粘り続けて、4ホール目で優勝。ウィニングパットを終えて見上げた姿に、思わずもらい泣きしてしまった。

プレーヤーの〝思い入れの強さ〟を読み取り、共感するからスポーツ観戦は楽しい。年を取ってさらに涙もろくなってはいると思うが、泣けなくなったら、もうスポーツ観戦はしないだろう。




戸川景(とがわ・ひかる)

1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。


重箱の隅、つつかせていただきます

第25回(前回)へ 第27回(次回)へ

シリーズ一覧へ

「LIVゴルフ」と「PGAツアー」両欧米ツアーはどうなる?変化と課題

ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活...

あわせて読みたい

悔し泣きは自信の裏返し!? 全英女子惜敗の渋野日向子が手に入れたもの

渋野日向子に笑顔が戻った。 女性会員受け入れを決定し、受け入れ始めてからわずか3年のミュアフィールド(スコットランド...

あわせて読みたい