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オールターゲット11を覚えていますか? 今だから言える驚きのストーリー

【第22回】商品開発はドラマ!ウッドとアイアンのギャップを無くした最先端の設計に世界が注目!

2022/11/11 ゴルフサプリ編集部

オールターゲット11(ブリヂストンスポーツ)

ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話をメーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はオールターゲット11(ブリヂストンスポーツ)が主役のストーリー。

GOLF TODAY本誌 No.605/70〜71ページより 写真/ゴルフトゥデイ編集部 取材・文/嶋崎平人

理想のクラブセットを追求して行く中で5番ウッドと3番アイアンの間に飛距離の空白を発見!

オールターゲット11 (ブリヂストンスポーツ)

商品のデビューは1985年1月の米国PGAショーだった。

1985年に発売された「オールターゲット11」はウッドとアイアンの区別をなくし連続して形状が変化するコンティニアンスクラブとして、そのユニークなコンセプトから世界から注目された。

対外発表は米国PGAショーで1985年1月に行われ、現地で大きな話題となった。

その発想はブリヂストンのゴルフクラブの基礎研究から生まれた。この開発に当初から携わってきたブリヂストンスポーツ株式会社デジタル事業企画ユニットの江﨑裕志氏にお話を伺った。

ブリヂストンスポーツ株式会社デジタル事業企画ユニットの江﨑裕志氏

開発の秘話を語っていただいたブリヂストンスポーツ株式会社デジタル事業企画ユニットの江﨑裕志氏

1972年にブリヂストンとスポルディング社が合併会社ブリヂストン・スポルディング社を設立し、ゴルフクラブの製造・輸入・販売他の事業を本格的に開始。

だが1977年にスポルディング社との合併を解消し、ブリヂストンスポーツを設立した。

解消を機に、ブリヂストンの研究開発本部にゴルフクラブ技術部が発足し、クラブの研究・モノづくりを進めることになった。7名の陣容であった。

オールターゲット11 (ブリヂストンスポーツ)
米国での商品名はアルタス「ARX」だったが、日本発売に際して公募して「オールターゲット11(イレブン)」に。

基礎的な研究で、ウッドはなぜこのような形状をしているか、なぜウッドとアイアンにわかれているのか、ウッドの機能は、アイアンの機能はといったそもそもの原点からも調査・研究・開発が行われていった。

研究開発の中で理想的クラブセットとは何かを追求し、「WOS(WellOrderedSet)」理論を構築した。クラブ性能を決定する要素を解析しクラブ設計を行う考え方で、ライ角、ロフト、長さ、スイングウェイト、重心位置、慣性モーメント等を分析した結果を基にクラブを作り上げていった。

この理論をベースに1982年ブリヂストンブランドのウッド、アイアンを開発・発売した。ただ通常のウッド、アイアンのクラブセットでは、一般ゴルファーがクラブ番手に見合う等間隔の飛びが得られないという課題があった。

特に、5番ウッドとそれにつながる3番アイアンの間に飛距離のギャップがあり、その問題解決の為に1983年頃から試行錯誤が繰り返し行なわれていた。

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パターとSWは別として1本は好きなクラブを入れられる余地を残し11本によるセットに決定した!

オールターゲット11 (ブリヂストンスポーツ)

広告の文章の中にも5番ウッドと3番アイアンの間に飛距離の穴があると指摘している。

ウッドとアイアンの飛距離の溝を埋めるべく、1番からPWまで、ロフト、ヘッド形状、長さなどの要素を一定の流れにするアイデアが生まれた。クラブの長さは2センチ刻み、ロフト角は4度刻みなどである。

1984年に「オールターゲット11」の原型となる4番、5番、6番の試作品が作られ、評価を重ねていった。これらの番手は今のユーティリティに近い形状で、中空ステンレスで最先端のものを取り入れていた。

何本のセットにするか議論され、14本セットで、パター、SWは別とすれば、あと1本は好きなクラブを入れられることを考慮して、11本とした。残りの1番から3番、7番〜11番まで設計され、11本の中空ステンレス構造のセットが完成した。

従来のセット感覚にこだわる販売部門から、1番〜3番まではパーシモンで造ってはとの議論もあったが、最終的にはセット全番手が中空メタルとなった。試打してみると、今まで打ちにくかった180ヤード前後も含めて、「打ちやすい、球が上がりやすい」と高評価で開発陣も自信を深めた。

台湾でヘッドの製造の見込みもついたが、シャフトをどうするかまだ明確に固まっていなかった。当時、ブリヂストンでもメタルウッドを発売しており、そのメタル用のシャフトを全番手に使うことで目途がついた。

  • オールターゲット11 (ブリヂストンスポーツ)

    カーボンヘッド仕様も1986年に発売。

  • 1989年6月20日付のアメリカ市場のためのパテント。

    1989年6月20日付のアメリカ市場のためのパテント。

ただ、今までにないユニークなクラブセットで、従来のウッド、アイアンにこだわる販売部門からは、「売れない、売りにくい」などの声もあがった。「話題をつくるなら米国から」ということで、米国PGAショーに出展して、新しいコンティニアンスクラブは米国で高評価で、日本の販売の強力な後押しとなった。

PGAショーに出展するに当たり商品名は「オールターゲット11」ではなかった。当初「ARX(AllRoundX)」と「CDX(ContinuousDistanceX)」の二つが最終候補となり、商標上から、アルタス「ARX」に決定した。

しかし、日本で発売するにあたり、わかりにくいことと、話題づくりを兼ねて、その年の3月から4月末まで商品名を公募し約1000の応募の中から「オールターゲット11」に決定した。商品のヘッドは刻印を変更する余裕がなく「ARX」の刻印が残ったままであった。

1985年6月発売、価格は19万8000円であった。1986年にはカーボンヘッド仕様も発売され、グッドデザイン、日経年間優秀製品賞を受賞し、7000セット以上を売るベストセラーになった。ヒット商品になったにも関わらず「オールターゲット11」の商品寿命は5年ほどで終わった。

「単品売りのユーティリティクラブが一般化し、ロングアイアンの打てないアマチュアに受け入れられ、セットで買わなくても良くなったことが原因では」と江﨑氏は分析する。新しいことに挑戦するブリヂストンのDNAは今も引き継がれており、これからもどんな新しいコンセプトのクラブで我々を楽しませてくれるか期待したい。


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