グリーンは手前から攻めろといわれるのはなぜ?グリーンの特徴をマスターしてスコアアップに繋げよう
そのセオリー、今は通用しないという人もいますが…
「グリーンは手前から攻めるのが鉄則」というアドバイスを受けたことがある人も多いのではないでしょうか?しかし、このアドバイス、今の時代は、“鉄則”ではないという人も。「手前から」という言葉が生まれた理由と、そのアドバイスを信じるべきかどうかを調べてみました。
写真提供/真鍋雅彦
受けグリーンが多かった日本のゴルフ場
なぜ、手前からなのか。それは、日本のゴルフ場の多くが、手前から奥に向かって上り勾配になっている「受けグリーン」が多いと信じているゴルファーが多いからです。
受けグリーンだと当然、手前からのパットは上りラインになります。一方、カップの奥につけると下りラインになる。皆さんもご存じのように、下りより上りのほうが易しいので、「手前から攻めろ」ということになったようです。
つまり、「手前から」というのは、グリーンが受けていることが大前提になっているということになります。では実際に、受けグリーンは多いのでしょうか?
結論からいうと、必ずしも全てのグリーンが受けているというわけではありません。
ほとんどが受けグリーンだったコーライグリーン
もともとなぜ、受けグリーンが多かったかというと、日本のゴルフ場は“水はけ”のことを考えて、ティーグラウンドとグリーンを高い位置に作り、各ホールの中央付近を少し低めにするという傾向があったからです。
それを証明するのが、セカンド地点でよく見かける排水溝。その地点がそのホールでは最も低く、グリーンは少し高いところに、その面が見えるように整備されることが多かったので、自然と受けグリーンが主流になったということです。
また、年配のゴルファーならご存じの方も多いと思いますが、歴史のあるゴルフ場では、かつてそのほとんどが、コーライグリーンをメインに、ベントグリーンをサブグリーンに使用するという2グリーン制を採用していました。そのメインとなったコーライグリーン、日本の気候・土壌に合っていて管理の手間もそれほどかからないことから日本のゴルフ場ではもてはやされたのですが、いかんせん葉が硬く、短く刈れないため、転がりが悪いという欠点がありました。
しかも、暑くなればなるほどスピードが落ちるという特性を持ち、トップシーズンになるとバーディが取りやすくなったので、挑戦意欲旺盛なゴルファーの間から、「コーライグリーンは面白くない」と不評でした。
その遅いグリーンを少しでも面白くするためには、勾配を強くしてグリーンのスピードを上げるしかない。それも、奥への傾斜が強くなるとボールが止まらなくなるので、手前からの上り傾斜を強くしようということで、見た目にもハッキリとわかる上り勾配の受けグリーンが多くなったのです。
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ニューベントの出現でグリーンにも変化が
そんな中で徐々に頭角を表してきたのが、寒地型のベント芝を進化させたニューベントといわれる品種です。
ニューベントの特徴は、葉が細くて硬く、蜜に生やすことができること。その分、芝目が立った状態で短く刈り込むことができるので、コーライのように無理矢理傾斜を付けなくても速いグリーンスピードが実現するようになりました。
しかもこのニューベントは、高温多湿な日本でも一年を通してグリーン管理が容易だったため、2000年以降、日本のゴルフ場で広まったのです。その結果、古いゴルフ場でも以前のような2グリーンではなく、ニューベント種の1グリーンに改造するところが増えていきました。
プレーをしていて、「現在芝の張り替え中」、「2グリーンが1グリーンになります」というような告知がよく見られるようになったのもこの頃です。
プレー前に芝の品種と形状をチェック
さらにこのニューベントは、管理が楽なので、グリーン面積を大きくできるというメリットもありました。グリーンを広くすれば、なだらかで大きなアンジュレーションもつけやすくなる。
それも、単なる円形ではなく、いびつな形にすることで距離感をつかみづらくするなど、ゴルファーにとってはやりがいのある(一部の人にとってはやっかいかもしれませんが)グリーンが増え始めました。“ポテトチップス”と呼ばれる、表面が波打ったグリーンが誕生したのもニューベント種が出現したからです。
また、アンジュレーションをつけることで、カップに対して攻めやすい入り口を、手前以外のところに設定できるのもニューベントの特徴の一つ。ニューベントの普及で、「グリーンは手前から攻める」というセオリーが通用しないホールが徐々に増え始めたというわけです。
とはいえ、先述したコースの構造上の理由で、受けているグリーンがまだまだ多いのは事実です。
プレーをする際は、そのコースのグリーンでどんな種類の芝が使われているのか、また、形状的にどんな特徴があるのかをチェックすることが大事。そしてその上でプレーをすれば、スコアは確実にアップするはずです。
真鍋雅彦(まなべ・まさひこ)
1957年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。1986年に退社し、フリーライターとしてナンバー、週刊ベースボール、ラグビーマガジン、近代柔道などで執筆。
ゴルフは、1986年からALBAのライターとして制作に関わり、その後、週刊パーゴルフ、週刊ゴルフダイジェストなどでも執筆。現在はゴルフ雑誌、新聞などで記事を執筆するほか、ゴルフ書籍の制作にも携わっている。
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