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自分を信じて練習を重ねる過程が、理想のゴルフをつくる

伝説のアマチュアゴルファー中部銀次郎の「言の葉」 vol.6

2022/11/25 ゴルフサプリ編集部

パター,ゴルフボール

新連載、伝説のアマチュアゴルファー中部銀次郎の「言の葉」。
「プロより強いアマチュア」と呼ばれた中部銀次郎氏が遺した言葉は、未だに多くのゴルファーのバイブルとなっている。その言葉1つ1つを、皆さんにもお届けしていく。

GOLF TODAY本誌 No.606/68〜69ページより
本誌イラスト/北村公司

ゴルフは結果がすべてだが、結果の過程をも重視せよ

ゴルフ場,グリーン

中部銀次郎さんが初めて日本アマチュア選手権に挑戦したのは1960年、下関西高校を卒業した大学浪人中のことだった。受験勉強中の気分転換のつもりで出場したが、いきなり予選トップでメダリストとなり、本選も勝ち上がって決勝に進出。いずれも史上最年少の快挙だったが、決勝では惜しくも後半の18ホールで逆転され敗れてしまった。

とはいえ、大の大人相手に18歳であわや優勝だっただけに、すぐにでも日本アマを制して日本一の座につくと思われていた。ところが翌年、甲南大学に入っての2度目の日本アマはメダリストになったもののまたもや決勝で敗れる。

この1年生の時は他の試合でもメダリストになるが優勝はできなかった。それもマッチプレーでは必ず2回戦で敗れ、「2回戦ボーイ」の汚名までいただいてしまった。

意を決した2年生の時に遂に日本アマを制する。3度目の正直だったが、これは廣野ゴルフ倶楽部、石井哲雄プロからの助言が大きかった。「相手がグリーンに乗ったら、どこからでも一発で入れてくると思え」それまで中部さんは相手のパットを見つめることができなかった。入ったらどうしようという不安でいっぱいだったからだ。

しかし、そんなことでは勝つことは難しい。1対1のマッチプレーは精神力の勝負でもある。逃げたらお終いなのだ。石井プロはそうした中部さんの心の中を読んで、立ち向かう心構えを教えたのである。マッチプレーでの極意と言ってもいい。

スコアがすべて

イラスト,スコアカード

そして、この年はもう一つ、中部さんは霞ヶ関カンツリー倶楽部にいた藤井義将プロからもマッチプレーの極意を教わっていた。

藤井プロは福岡県出身のプロで、広いスタンスから魂を込めたショットを打つことから「玄界の荒法師」の異名をとっていた。

藤井プロは非常に強かったが、日本オープンは42歳になって初めて栄冠を手にした苦労人だった。東京にいた中部さんの兄たちが懇意だったため、教えを請うことができた。

藤井プロの言葉は衝撃的だった。「パー4のパーは2オン2パットだけではない。3オン1パットもパー。4オン0パットでも同じパーだ」ゴルフはスコアを競うゲームである。いくら飛ばしても、いくらパーオンが多くても勝てるというものではない。スコアがすべてなのだ。

当たり前と言えばその通りだが、中部さんはわかっていなかった。ショットが良くなければ勝てないと思っていたのだ。だからこそ猛練習を重ねてきた。しかし、いくらショットが良く、ピンの近くにオンしたとしてもカップに入らなければただのパーである。

ショットが乱れても1パットで入ればパーであり、チップインでもパーがとれる。「スコアカードにはただ4と記されるだけ。良いショットも悪いショットもスコアカードには書かれない。パット数だって普通は書かない。勝負はスコアだけなのだ」

つまりはそれこそがゴルフだというわけである。

ナイスショットを放ってパーオンして2パットならば綺麗なパーであり、ショットが乱れて1パットのパーは汚いゴルフに思える。しかし、ゴルフには綺麗も汚いもないのである。あるのは4という数字だけだ。

藤井プロのこの言葉は石井プロの言葉にも通じるものだった。中部さんははたとそのことに気付いた。

「相手がミスショットをしても一発で入れたらパーになる。自分がナイスショットを重ねてもパットが入らなければ同じパーである。だからこそ、相手が一発で入れてきたときにショックを受ける。自分のナイスショットは何だったのかと。でも、パットが良ければショットのミスは帳消しになる。それがゴルフだというわけです」

先輩プロからの助言の結果

中部さんのようなショットメーカーはついつい素晴らしいショットを追い求める。パットは二の次になってしまうが、それが弱点にもなるのである。

一方、パターの名手はショットはそこそこで良いと思っている。パットが入れば同じだと考えているからだ。そして、そこが大いなる強みなのである。やがて中部さんにとってかけがえのない友人となる青木功プロはまさにそうしたパット名手だった。

藤井プロと同じことをゴルフ界の偉人、ウォルター・ヘーゲンが言っている。「3打で乗せて1パットでもパーはパー」ヘーゲンは常に強めのパットを打った。ボールをカップに入れるのが好きだったからだ。ショットはミスしても良く、最後のパットを決めればミスが帳消しになることを知っていた。

ヘーゲンは全米オープン2勝、全英オープン4勝、全米プロ5勝を挙げたが、これはすべて彼のパット力がもたらしたといえる。中部さんは藤井プロから結果を重視した考え方を学び、たとえミスショットをしても最後まで諦めずに全力でスコアを作っていった。さらにはパットの重要性に気づきグリーン上でチャンスについたときはしっかりとボールをカップに沈めていった。

こうして中部さんは念願の日本アマに優勝し、以後この初優勝を含み、6度の優勝を成し遂げたのだ。

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ゴルフに対する想い

中部銀次郎スイング

しかし、競技を退いてから、中部さんは語ったことがある。

「試合で勝つにはもちろんスコアが最も重要です。そのためには1パットでパーを拾っていくことが大切になる。そうすれば良い流れを切らさずに済む。

しかし、私は終生、ショットにこだわった。理想のショットが打てるように練習を重ねた。それは素晴らしい打球が打てたときの気持ちよさが何とも言えなかったからです。良いショットを放って良いスコアを作る。やはりその理想に私は近づきたかった」

中部さんにとって、もちろんパットはどうでも良かったということはない。しかし、ショットの魅力からすれば、パットに大きな魅力を感じることはなかったのかも知れない。ショートパットは外したくないから練習するが、ロングパットは2つで良しとしていたと思う。

「ゴルフはショットで始まりパットで終わる。その1打1打を大切にしたかった。となれば、まずはショットだったのです。綺麗なボールを飛ばしたかった。そこから私のゴルフは始まる。ティーイングエリアからグリーンまでの道のりを大切にしたかったのです」

トラブルは苦手だし避けたかった。安全運転が好きだった。危なげなく綺麗に進むゴルフ。それが生涯、中部さんの理想のゴルフだった。それはアマチュアゴルフの真髄と言ってもよかった。勝てば何でも良いわけではなかったのだ。

このことはもちろん仕事でも人生でも同様だろう。ただ勝てば良い、儲かれば良いわけではない。その過程に矜持があれば、仲間が増え、良い人生が長く続き、幸せに暮らせるのだ。


中部銀次郎

中部銀次郎(なかべ・ぎんじろう)

1942年1月16日、山口県下関生まれ。2001年12月14日逝去。大洋漁業(現・マルハニチロ)の副社長兼林兼産業社長を務めた中部利三郎の三男(四人兄弟の末っ子)として生まれる。10歳のときに父の手ほどきでゴルフを始め、下関西高校2年生時に関西学生選手権を大学生に混じって出場、優勝を遂げて一躍有名となる。

甲南大学2年時の1962年に日本アマチュア選手権に初優勝を果たす。以来、64、66、67、74、78年と計6度の優勝を成し遂げた。未だに破られていない前人未踏の大記録である。67年には当時のプロトーナメントであった西日本オープンで並み居るプロを退けて優勝、「プロより強いアマチュア」と呼ばれた。59歳で亡くなるまで東京ゴルフ倶楽部ハンデ+1。遺した言葉は未だに多くのゴルファーのバイブルとなっている。

著者・本條 強(ほんじょう・つよし)

1956年7月12日、東京生まれ。武蔵丘短期大学客員教授。
『書斎のゴルフ』元編集長。著書に『中部銀次郎 ゴルフ珠玉の言霊』『中部銀次郎 ゴルフの要諦』『中部銀次郎 ゴルフ 心のゲームを制する思考』(いずれも日本経済新聞出版編集部)他、多数。


伝説のアマチュアゴルファー中部銀次郎の「言の葉」

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