ビッグタイトルで初優勝の快挙を成し遂げた笹生優花の強さは「前向きな考え方と行動」にあった

父の勧めでジャンボ尾崎アカデミーの門を叩いた笹生優花。

昨シーズンも米女子ツアーのトッププロとして世界を股にかけて転戦した笹生は、米本土最終戦のメディヒール選手権で単独2位の好フィニッシュ。

最終日は、1イーグル、6バーディー、2ボギーの66という快進撃で6位からの猛追劇を見せたが、わずかに1打及ばなかった。

笹生はその足で帰国し終盤戦のアジアシリーズを前に、かつて通い詰めたジャンボ邸を訪問。練習しつつクラブの調整も行っている。

節目、節目でジャンボのもとを訪れている笹生。今や大きく成長した愛弟子を、ジャンボはどう見ているのか。

「（伸びる選手は）しいて言えば、何事も前向きに考える人間だな。運や縁は、待っていても来ない。自分からきっかけをつかまなければいけないんだ。

例えば、笹生が全米女子オープンの前に、久しぶりにあいさつに来たあと優勝した。（原）英莉花も昨年秋、ヒザを故障して棄権したあと、俺のところに練習に来た。何気なく、見てやったら次の週にいきなり優勝。アカデミーの生徒も、一人だけ練習に来たあと初優勝。

全米女子オープンというビッグタイトルでLPGAツアー初優勝という快挙を成し遂げた笹生。

「私が感じたことは、両者には考え方に大きな差があること。伸びない選手は、『ジャンボに指導してもらえれば上手くなれる』という考えでトレーニングに臨んでいました。

一方の伸びる選手は『自分が上手くなるためにジャンボ（環境）を利用する』という考え方です。この二つに分かれると思います。

一見同じような意味に思えますが、これには大きな差があります。『ジャンボに指導してもらえれば上手くなれる』という考えでは、探求心が薄れる可能性があります。

（中略）ジャンボからの指導を受ける中で、常に『なぜ？』という疑問がなければなりません。そして『なぜ？』という疑問に対して、その根拠を必ず理解しなければよい指導を受けても意味がないと考えます。ジャンボの言う『感性』『知性』『理性』が養われないのです。

一方、『自分が上手くなるためにジャンボ（環境）を利用する』という考え方は、表現があまり適切ではないかと思いますが、要するに『上手くなるために何でも聞くし何でもする』という考え方です。

私や東（聡＝金子と同期でジャンボ軍団に入門）もこのような考え方でいました。おかげさまで二人とも、トーナメントでも戦えるプロゴルファーとしての基礎を作ることができました」。

類まれな身体能力を生かした飛ばしは、世界の舞台でもトップクラスといえる。

さらに金子は、伸びない選手の特徴をこう指摘しています。

「ジャンボのアドバイスをそのまま受け入れ、自分の感性を殺して、言われるがままに練習を繰り返しても上達は望めないでしょう。

ジャンボは、直すべき点の答えは出してくれますが、計算式は教えてくれません。それは自分自身で見つけることなのです。

答えが、「2」であっても、計算式は無数にあります。そこを見つけるために努力を惜しまない選手は、きっと自分自身の方程式を見つけて、次のステップに進む可能性があると思います」。

金子は今回の取材の中で、さらにこう付け加えた。「やはり伸びる選手は、何事も人より前向き。自分からうまくなるために、なんでもする。それによって、運をつかむ回数も増える。100球打つよりも、1000球打つ方が、それだけ気づきがあるように」。

伸びる選手になりたければ、うまくなりたいという前向きな考え方に基づき、前向きな行動を続けるべき。これも、ジュニアたちに聞かせたい、ジャンボの教えだ。

金子柱憲（かねこ・よしのり）
1961年3月4日生まれ。東京都出身。日大卒。
14歳でゴルフを始め、アマチュア時代は日本オープンベストアマ、関東学生優勝。1982年の韓国オープンではプロを抑えて優勝。1983年プロ入り後、ジャンボ軍団入り。91年に関東オープンで初優勝。ツアー通算6勝。