「少なくとも3度はやめようと思った」トッププロへの階段を駆け上がった金子柱憲の上達の要因は?
ジャンボに聞け!ジュニアゴルファーの育て方 VOL.9
ジャンボ尾崎ゴルフアカデミーのセレクションは2月4、5、11、12日の4日間に渡って千葉の同アカデミーで行われる。今年の募集はすでに1月27日に締め切られ、今春高校に入学する新1年生から大学生(22歳)までの選手に門戸が開かれた。こうしたジュニアたちが目指すトッププロまで上り詰めていくために、必要なものは何なのか。
「誰も書かなかったジャンボ尾崎」の著者である金子柱憲は、自らの体験から「身近な目標」をクリアしていくことを挙げた。ジャンボにあこがれ、その後軍団入りして薫陶を受けた金子自身が、最終的に導き出した答えとは。
GOLF TODAY本誌 No.609/130〜131ページより
取材・構成/日本ゴルフジャーナリスト協会会長・小川 朗
撮影/相田克己
上達の秘訣。それは手の届く課題を、一つずつクリアしていくこと
セレクション後に報道陣のインタビューに答えるジャンボ。
今年も御大・ジャンボの目の前で自らのショットを披露することになるジュニアの面々。相当なプレッシャーの中での受験となるだろうが、セレクションに合格したからといって、誰もが順調に育って行くわけでもない。
多くの壁にぶち当たり、それを乗り越えていくことが求められる。金子とて、例外ではない。「少なくとも3度は、ゴルフをやめようと思ったことがある」という。
10歳の時に初めてクラブを握り、13歳の時に不整脈が出たことから野球部を退部しゴルフに転向した金子。その後は「一人部活」のような状態で練習場の「日吉グリーンクロス」に通うようになった。中学2年時のことだ。
ここで金子は、父・正夫さんと同じ大厚木CCのメンバーの大人たちに可愛がられた。「3〜4人いたクラチャンの人や3とか4のローハンデのメンバーさんたち」(金子)に見守られながら、ゴルフにのめりこんでいく。父から大厚木の会員権も買ってもらった。「そのうち、おじさんに、時々勝てるようになるんです」。
身近で、上手な大人たちに「勝つのが楽しくて」早朝にたった一人で電車に乗って最寄り駅まで行き、クラブバスでコースに向かうこともあった。月例競技にも出始め、腕を上げていく。
初めて同年代のゴルファーとプレーしたのは中学3年の時だった。日本ジュニアの関東予選(浮間ゴルフリンクス)に出場して「ゴルフをしている子供がこんなにいるんだ」と衝撃を受ける。それでも75で回り、霞が関CCで開催される日本ジュニアの出場権をゲット。
「当時は中学と高校の区別がなく、距離もとにかく長くてドライバー、スプーンでも届かない。本戦は2ラウンドで90―90で180くらい叩いた」が「悔しくもなくて、楽しかったから、来年も出たいと思って、もっともっと練習しようと」さらにゴルフにのめりこんだという。
ジャンボ尾崎のプレーに目は釘付け
今年も2月の初旬にジャンボ尾崎ゴルフアカデミーのセレクションが行われる。
日大高校に進み、関東アマや日本アマに出場できるようになると、担任の先生が「ゴルフ部を作れ」と提案してくれる。毎年、日本ジュニアに出場。
「成績は覚えていない」という程度だったが、高校2年で大きな転機が訪れる。父に連れられ、トーナメントを初観戦したのだ。
横浜CCで行われた第6回ペプシ・ウィルソントーナメントで、ジャンボ尾崎のプレーを初めて目にした。
「とにかく、すごい人、という印象。ジャンボが14番のパー3でバンカーからカップインしたのを、昨日のことのように覚えています。
ブルーのパンツと、白地にブルーと赤の横縞が入ったシャツで、頭には白いハット。その姿に、私の目は釘付けとなっていました。一緒に回っていた他の選手のことを、思い出すことはできません。それほどジャンボの存在感はすごかったのです」と金子は著書にも書き綴っている。
しかもそのわずか1年後。高校3年になった金子は日本アマで上位に入り、日本オープンの出場権を勝ち取った。会場は奇しくも前年、ジャンボに魅了された横浜CC。
初日で好発進を演じ、2日目もいいプレーをして「確か4位か5位」。3日目は最終組の1組前でジャンボと金井清一と同組でプレーすることになった。
当時日本オープンで高校生が上位でプレーすること自体がビッグニュース。連日スポーツ紙が大きく取り上げる中、見事ローアマを獲得した。
トッププロへの階段を駆け上がった金子氏の上達の要因は?
真剣な眼差しでジュニア達のスイングをチェックする尾崎。
この活躍が効いて、名門日大ゴルフ部への推薦入学も決まり、アマチュアながら韓国オープンでプロを抑えて優勝する快挙も達成。
プロ入り後は日大ゴルフ部で共に戦った東聡とともにジャンボ軍団入りして賞金ランク2位。翌年はジャンボとともにマスターズにも出場した。
トッププロへの階段を駆け上がった金子に上達の要因を聞くと、やはり中学時代に可愛がってくれた、シングルの大人たちの存在までさかのぼることになった。「身近な大人たちに挑んで、勝てるようになったことで上達していったのだと思うのです。
大学時代の選手たち、プロになり一流選手たちと、目標にする選手も、その時々で目の前にいた。手の届く目標を一つずつクリアしていく。それが上達の秘訣だと思いますね」(金子)。
ジャンボにあこがれを抱いた翌年には、高校生ながら日本オープンの大舞台で一緒に回ることができた金子。ビッグサクセスの裏には、目の前の課題を一つずつクリアしてきた、ジュニア時代の堅実な上達法があったことは見逃せない。
金子プロからジュニアへのワンポイントアドバイス
絶品と言われたジャンボ尾崎のアプローチショット。プロ入り後は参考にして、実戦に生かした。
ドライビングレンジでの練習に飽きてきたときに、自分でもよくやっていたのが、試合を想定してのショット練習。
「全英オープンの最終日、最終18番で、ジャック・ニクラスとトム・ワトソンを1打リードしての単独首位に立ってのティショット。右は大丈夫だけど、左は絶対にダメ」と決めて、ティショットを打つ。
そんなことを、よくやっていました。自らに課してみるのもいい。ジャンボも練習場で、試合を想定したショットをジュニアに打たせています。
「最終ホール。残り154ヤード。右に少しでも外したら池」とか。「球筋をイメージして、3発連続、同じ球を打ってみろ」と指示することもあります。そこでミスしてしまったら、スクワット10回とか(笑)。
ドライビングレンジでのイメージトレーニング。ぜひやってみてください。
金子柱憲(かねこ・よしのり)
1961年3月4日生まれ。東京都出身。日大卒。
14歳でゴルフを始め、アマチュア時代は日本オープンベストアマ、関東学生優勝。1982年の韓国オープンではプロを抑えて優勝。1983年プロ入り後、ジャンボ軍団入り。91年に関東オープンで初優勝。ツアー通算6勝。
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