打面保護のため、昔は牛の皮をフェースにはめ込んでいた!?ボールの進化に対応し続ける"インサート"の歴史を振り返えろう
ゴルフそもそも調査部 vol.10【今回の調査テーマ|どうしてパターだけにインサートがあるのか?】
現代のゴルフギアは、先人の創意工夫が積み重ねられてきたもの。時に感じる疑問や「なぜ」「どうして」を、それらを形作ったきっかけやエピソードで振り返ってみよう。今回の調査テーマは「どうしてパターだけにインサートがあるのか?」だ。
GOLF TODAY本誌 No.610/156〜157ページより
打面の保護から装飾化を経て高機能パーツへ
パーシモンヘッドには当たり前のように装着されていたフェースインサート。傷んだらインサートだけ取り替える、というチューンもリペアショップで行われていた。
フェースインサートの歴史は、19世紀のロングノーズ型の木製クラブ時代から存在していた。19世紀半ばに硬いゴム球のガッタパーチャが普及すると、フェースが摩滅、破損するクラブが続出。
その対策として、牛の皮などをフェースにはめ込んだものが始まりだった。初期のものはトゥ寄りに設置されているが、打撃による打点の損傷や打感の改善を意図していたようだ。
19世紀末、強度を増すためにウッド類は丸みを帯びたヘッドに移行。インサートも小さくなり、フェース中央に設置され、装飾化が進んだ。1930年代に入ると紙の繊維を圧縮したペーパーファイバーが採用され、象牙をはめ込むなど、クラブの高級化にもつながっていった。
だが、パーシモンヘッド時代を通して、素材や形状は機能面の向上を求めるようになる。ABS樹脂やアルミ、ステンレス、カーボンなどが採用され、重量や反発性能の違い、打感や打音の違いがクラブの機能として計算・設計されるようになっていった。
形状はソール側が広い台形が定番化し、ビスの配置や一部のカラーを変えることで、視覚的に構えやすくなる工夫などが施されるようになったが、フェースインサートがないメタルウッドに移行してからは、このデザイン要素だけが残っていった。
フェースインサートは、オデッセイが火付け役
「ストロノミック」という樹脂インサートで1990年代に台頭したオデッセイ社。1997年にキャロウェイに買収され、2000年『ホワイトホット』がベストセラーに。
メタルウッドが普及した1990年代以降は、フェースインサートの高機能化はパターが中心となる。
1980年代台頭してきたツーピースボールの打感とコロがりに対応すべく、金属ヘッドに樹脂インサートという組み合わせが脚光を浴びた。
それまでパターの打感やコロがりはヘッド素材や形状、ヘッド重量で語られることが多かった。インサートもあったが、翡翠をはめ込むなど装飾的なものばかりだった。
1990年代にオデッセイ社の樹脂インサートパターがヒットし、1997年にキャロウェイゴルフに買収されると、一気にパターのインサートは定番化。ヘッド本体と異なる金属をインサートするモデルも登場し、プロツアーでの使用率も急上昇。市場では削り出しタイプと人気を二分するまでになっている。
はめ込み型のフェース構造も〝インサート〞?
ダンロップ『ゼクシオ』アイアンは、ステンレスボディにチタンフェースをインサート。初代モデルから寛容性と飛距離性能で評判となり、人気ブランドとして確立している。
さて、ヘッド本体を土台にして、異素材をあてがうようにはめ込むのが「インサート」だが、くり抜いたフェース枠に異素材のフェースプレートをはめ込むのも「インサート」と捉えると、パター以外の進化も見えてくる。
以前はヘッドの基本構造素材が金属の場合は、フェースに異素材のものをはめ込んだり付着させたりすることは用具規則で禁止されていた。
それが1992年、ヨネックスが開発したカーボンアイアンがきっかけで改訂され、認められるようになったのだ。
カーボンアイアン自体は機能や耐久性、価格の面などで廃れていったが、このルール改訂のおかげで後のダンロップ『ゼクシオ』など、チタンフェースはめ込み型アイアンのヒット作が生まれた。
活路を見出すのは"ユーティリティ"
テーラーメイド『ステルス』シリーズのドライバーは、チタンフレームにカーボンフェースをインサート。こういった組み合わせは、各メーカーで今後も増える可能性大だ。
近年のコンポジット型ドライバー、たとえばテーラーメイド『ステルス』シリーズなども、チタンフレームにカーボンフェースをインサートしたものと言える。
ちなみに、フェースをヘッド本体と切り離して機能を変更する発想自体は、1893年に誕生した世界初の中空アイアンが最初だろう。
市販されたのは1897年、スポルディングが『スチールフェース・ドライビング・クラン・クリーク』と名付けて販売。ヘッドは機械鍛造で中空に作られ、フェース板を6本のビスで留めている。
「スポルディング・スチール・スプリング・フェース」と呼ばれ、ガッタパーチャの衝撃を緩和するスプリング感を打ち出したモデルで、1920年ごろまで販売されたロングセラーアイアンだった。
改めて歴史を振り返ってみると、フェースやインサートに求めたものは打球衝撃への対策に尽きる。衝撃を緩和しつつ、エネルギー伝達効率を高め、意図した弾道実現に近づける。そのために、ボールの進化・変化に対応し続けるわけだ。
現在、最も期待できる分野はユーティリティだろう。アイアンの本数が減り、ユーティリティの比重が増えれば求められる機能も増える。その対応策として異素材インサートに活路が見いだされるかもしれない。
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