ボールの層はなぜ増えた?ツアープロのニーズに応じ続ける、ゴルフボール開発に迫る!
ゴルフそもそも調査部 vol.11【今回の調査テーマ|2ピース、3ピース、4ピース…何が変わる?】
現代のゴルフギアは、先人の創意工夫が積み重ねられてきたもの。時に感じる疑問や「なぜ」「どうして」を、それらを形作ったきっかけやエピソードで振り返ってみよう。今回の調査テーマは「2ピース、3ピース、4ピース…何が変わる?」だ。
GOLF TODAY本誌 No.611/122〜123ページより
糸巻き3ピースの後に登場したソリッド2ピース
耐久性の良さからレンジボールに採用されている1ピースボール。1970年代には早川ゴムの『ストライナー』といったコースボールもあったが、2ピースの台頭で消えていった。
理想的なボールは、飛んで止まる、弾道が安定してコントロール性も高く、打感が良いものだろう。
その意味では、20世紀半ばに一度完成形が出来上がっている。19世紀末に登場した「ハスケルボール」から進化した、糸巻き3ピースボールだ。
20世紀の100年間で、素材や各層のバランスを極め尽くし、優れたコントロール性と飛距離性能を実現していたが、どうしても克服できない弱点は耐久性と、芯を外した時のパフォーマンスの落差だった。
この2点に関しては、糸巻き構造以前の1ピースだった「ガッタパーチャ」のほうが優れていた。だからこそ、現在でもレンジボールとして1ピース構造は生き残っている。
ただ、1ピースは適度な弾力を持たせるほど打撃による変形量が大きく、エネルギーロスが激しいために飛ぶものが作れず、逆に硬度を上げると打感の悪さやスピン量の不安定さにつながってしまう。
弱点を改善した構造とは?
ソリッド3ピースでも、キャスコ『DC432』のような「2層コア」タイプと、ブリヂストン『アルタスニューイング』などの「2重カバー」タイプといった構造の違うものがある。
この問題点を解消したのが、硬いカバー層で弾力のあるコアを覆った2ピース構造だ。1960年代にスポルディング社が開発し、特許を申請。
トップしてもカバーが切れず、耐久性が高く、スピン量が減るぶん曲がりも少ないということで、1970年代には初・中級者向けとして人気を獲得していった。
1980年代に入ると、高分子ポリマーなどコアの開発が進み、飛距離性能で糸巻き3ピースを上回るものが登場。ツアープロの使用者も増えていく中、1990年代には飛距離性能とコントロール性能のバランスを糸巻き3ピースもソリッド2ピースも高め合い、甲乙つけがたいレベルに仕上がっていった。
しかし、2000年にウレタンカバーのソリッド3ピースがナイキとタイトリストから登場した結果、プロツアーからは糸巻き3ピースはあっという間に衰退。2ピースもどんどん消えていくことに。
糸巻き構造のコントロール性能を踏襲しつつ、2ピースに負けない飛距離性能と、ミスヒットにも傷つきにくい抜群の耐久性。ウレタンカバー3ピースは非の打ちどころがなく、以降のライバルは4ピースなど多層構造に移っていった。
番手別性能に可能性を秘める多層構造
さて、2ピースはツアーからは消えたものの、市場では未だに根強く存在している。製造コストがかからないため、安価でありながら飛距離性能のニーズは満たしてくれる本間ゴルフの『D1』のようなヒット商品も生まれている。
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だが、アスリート仕様はウレタンカバー一択、つまり3ピース以上の多層構造しかないと言っていい。元々ソリッド3ピースの特許は日本最古のボールメーカーだったファーイーストが持っており、契約プロだった杉原輝雄が使用した『ドムハートスーパー』が世界初。
後にキャスコが買い取り、1980年代に発売した『DC432』がヒット。その特許期間が切れた途端、各メーカーから多層構造ボールが続々と発売された。
当時の多層の考え方は、ヘッドスピードやロフトが変わる番手ごとに各層の潰れ具合を対応させ、飛距離性能を発揮できるようにするもの。見方を変えると、ミスヒット時の弱いインパクトでもそこそこの結果につながる寛容性を高められる、といった発想だった。
これにウレタンカバーを組み合わせると、ツアー仕様の多様性が見えてくる。ドライバーでスピン量を減らして飛距離アップ、アプローチではスピン量を増やして止まりやすく、というのは現在の3ピースでも比較的簡単に作れるが、たとえばミドルアイアンやユーティリティの弾道でスピン量を増やしたり、打ち出し角を上げたりすることができるのが、多層構造の魅力だろう。
ニーズに応じ開発が進む
テーラーメイドの5ピース『TP5』は一見「4重カバー」タイプだが、「3層コア+2重カバー」という発想で、番手ごとに効率的なエネルギー伝達と適正スピン量を確保。
テーラーメイドの5ピース『TP5』などは、グリーンを狙う番手でもスピン量を抑えつつ、高さで止められる特徴を持つ。ツアープロのニーズに応じた弾道デザインを可能にしたわけだ。
もちろん、むやみに層を増やすのではなく、各層の厚み、硬度、比重を変えるだけでも可能性はまだまだ広がる。
たとえば外周の層の比重を重くすると、スピン量が持続して風に強く、落ち際でひと伸びするような弾道にできるかもしれない。
ルール規制で頭打ちと思われた飛距離アップや寛容性のアップも、クラブ開発以上に期待できるだろう。
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