ボール界のスターになる!松山英樹らが使用するスリクソン「Z-STAR」は現場重視のスタンスでプロの声に応え続ける
【第30回】商品開発はドラマ!2009年の誕生から約15年。ウレタンボールを牽引し続けるボール界の〝スター〟
ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話を、メーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はスリクソンZ–STAR(住友ゴム工業)が主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.613/70〜71ページより
写真/ゴルフトゥデイ編集部 取材・文/嶋崎平人
糸巻きにこだわりウレタンボール開発に出遅れた住友ゴム
プロ・上級者用のボール市場で、競争が激化しているウレタンカバーのソリッドボール。なかでも、松山英樹やブルックス・ケプカらが使用し高い人気を誇る「スリクソンZ-STAR」の初代。
各社の〝プロ・上級者用ウレタンカバー〟のソリッドボール開発が激化している。
その先頭集団を激走しているのが、松山英樹やブルックス・ケプカらが使用する「Z-STAR」だ。
2009年2月に初代モデルが発売された「Z-STAR」だが、開発におけるエピソードについて住友ゴム工業株式会社・スポーツ事業本部ゴルフビジネス部・ゴルフボールビジネスグループ課長大濱啓司(オオハマ ケイジ)氏にお話を伺った。
2009年2月に初代モデルが発売された「Z–STAR」。その開発にも関わった住友ゴム工業株式会社・スポーツ事業本部ゴ ルフビジネス部・ゴルフボールビジネスグループ課長大濱啓司氏。
大濱氏は1996年に入社し、ボールの開発に配属されZ-STARの開発の中にいた人物である。
ウレタンソリッドボールが市場に華々しく登場したのは2000年。ブリヂストン、ナイキ、タイトリストが先陣を切った。
タイガー・ウッズがそれまでの糸巻きボールからウレタンソリッドに切り替えたことで歴史が動き、〝糸巻ボールからウレタンソリッドボールへ〝の大きな流れができた。
当時、住友ゴムには「ロイヤルマックスフライ」という絶対的人気を誇る糸巻ボールの名品があり、その品質と性能の高さから糸巻ボールへのこだわりが強く、ウレタンボール開発競争には一歩出遅れた。住友ゴムが最初のウレタンソリッドボールを発売したのは、2002年の「PRO UR」(URはウレタンの意)。
発売後も苦戦が続いたが、この挫折こそがヒット商品の足がかりに!
糸巻ボールへのこだわりが強くウレタンボール開発に一歩出遅れた住友ゴムは、2002年に最初のウレタンソリードボールを発売。ウレタンの意を持つURが名称に入った「PRO UR」
そして、各社が開発にしのぎを削る中、満を持して投入されたのが2005年発売の「Z–UR」である。
Zは〝究極の上級者〟を表しており、このボールは極薄の0.5mmのウレタンカバーを採用して技術的には最先端を走っていたが、市場ではなかなか評価されない。
マシンでの飛び評価では高い得点をあげていたが、なぜか評価が上がらなかったのだ。
そこで次世代のボール開発について、開発スタンスを見直し、上級者・トッププロの声を徹底的に聞き、ボールに何を求めているかを探求していった。当時日本のトップアマであり社員でもあった阪田哲男氏にも開発への協力を仰いだ。
阪田氏からは「実際にマシンで評価すれば飛んでるし、マシンで評価すればスピンがかかっているかもしれないが、プレーヤー目線でみると本当にそうなのかと思うような飛び方や止まり方をする。もう少し、ゴルファー目線に立ち、感性を意識した評価や開発をすべきではないか」。とのアドバイスを受けた。
男女の日本ツアーだけでなく日本アマなどトップアマの試合にも開発部隊とともに阪田氏が同行し、ボールの実際の飛び姿を確認。「頂点で球がスーと伸びる」「ボールがクッと2バウンド目で止まる」など、より現場を意識した開発にスタンスを変更。
その考え方は、現在の開発者にも受け継がれている。
2017年発売の5代目から松山英樹の声を本格反映
新しいボールのモノ創りでは、〝飛び姿〟を良いものにするために、ボールのディンプル開発にも苦労した。「最後にスーと伸びる飛び姿」を実現するために開発・評価を繰り返していたが、当時は現在のトラックマンのような計測技術がなく、ディンプルを変えながら理想の飛び姿になるように細かく調整を重ねテストを繰り返していった。追い求めるモノになるまでに2年近くの時間を要した。
またボールの止まりについても、さらに向上させる方策はないかと、もっとも外側のコーティング、塗装に注目。スピン性能を向上させるために従来と異なるコーティング設計を取り入れた。初代「Z-STAR」のリリースには「新ウレタンコーティング」と書かれているが、この技術は進化して最新の「Z-STAR」にも繋がっている。さらに、この手法は現在多くのメーカーが取り入れており、時代の先陣を切る形となった。
これら新技術を投入して、2009年発売の初代「Z-STAR」を作り上げた。「Z-STAR」の名称は当時のボール販売企画が考え出し、「ボールのスターになる」、「使用するプロがスターになる」、「使用アマがスターになる」との思いが込められている。
2008年11月のダンロップフェニックスの会場において盛大な記者発表が行われ、スリクソン契約プロの中嶋常幸、ヘンリック・ステンソン、星野英正ほかプロ18名が登壇。プロの評価も「弾道が吹ける感じが全然しない」(星野英正)、「明らかにスピンがかかる」(ジム・フューリック)と上々だった。
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基本的性能はもちろん、もっともこだわったのはパッティング打音!
スピン性能を向上させるため外側のコーティング塗装に注目し開発 。初代「Z-STAR」リリースには「新ウレタンコーティング」と書かれているが、この技術は進化して最新モデルにも受け継がれている。
2008年11月のカシオワールドで契約プロの小田孔明が「Z-STAR」を使用して初優勝したことも発売に弾みをつけた。
発売から徐々に評価が高まりシェアを上げることに成功。さらに当時、石川遼とボール契約をしたことも弾みとなった。
シェアを伸ばす中、松山英樹の意見を本格的に取り込んだのは2017年発売の5代目からである。
「基本的性能はもちろんだが、松山プロのパッティング打音のこだわりは開発としても改めて勉強になった」と大濱氏は語る。
飛びとコントロール性能を両立させることが、常に開発目標。最新の8代目の「Z-STAR」はすでに、新進気鋭の蝉川泰果が使用しプロ初勝利をあげ、話題性も抜群だ。
プロ・上級者の要望に応えるためのボール開発に限りはない―。
世界のツアープロが認める「スピン性能&やわらかさ」
スーパーソフトウレタンカバーの開発により、あらゆるショットで優れたスピン性能を発揮。
さらに、新コーティングによりラフからのスピン性能も飛躍的に向上したため、ピンを正確に狙えます。また、アプローチでのフィーリングが非常にやわらかく、コントロール性能にも優れています。
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