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「ボールばっかり打っていないで、素振りをしないと。パワーをつけないと、どうにもなんないだろう」

ジャンボに聞け!ジュニアゴルファーの育て方 VOL.14

2023/08/08 ゴルフサプリ編集部

ジャンボ尾崎,練習風景

ジュニアによっては、今、練習の場が限られているのが悩みであったりもするかもしれない。だがジャンボ尾崎の愛弟子で「誰も書けなかったジャンボ尾崎」の著者である金子柱憲は「恵まれない状況でも上達できる」と断言する。それはジャンボの持論でもあり、尾崎3兄弟の末弟・直道は、その体現者でもある。練習環境が悪いと嘆いてはいけない。むしろそれが絶好の環境になるかもしれない、というのが今月のおはなし。

GOLF TODAY本誌 No.614/102〜103ページより
取材・構成/日本ゴルフジャーナリスト協会会長・小川 朗
撮影/相田克己

練習環境が悪いと嘆くよりも、逆境を味方につける工夫こそプレーヤーのエネルギーに!

ゴルフ,練習場

トレーニングでは素振りや、重いバットを振ることはスイングの基本としてかなり以前からジャンボ軍団は行なっていた。

「練習環境の良い悪いなんて、言い訳にならないんだよ」。

ジャンボがジュニアに対して、口にした言葉を、金子柱憲は千葉のジャンボ邸で聞いたという。

練習環境に恵まれていないことを嘆いたジュニアに対し、ジャンボが諭したわけだが、その真意はどこにあるのか。金子が解説してくれた。

金子の独白 「(練習する場所がない)そういう環境でも、しっかり力をつけていかなければいけないということです。それはジャンボ尾崎ゴルフアカデミーの子どもたちに限らず、ジュニアの子、すべてに対してという意味が込められている言葉だと思います」。

練習の環境に恵まれてないからといって、そのせいにしてはいけない、ということだ。

金子の独白 「例えば(尾崎)直道さんはね。高校生の時に練習する場所がなくて、道路で素振りをしていたそうです。なかなかコースに行ったり、練習場に行ったりということはできなかったと言っていました」

15歳でゴルフを始め、日本ツアー32勝、USPGAツアーでは8年間に渡りシード権を守り続け、最終的には、日本男子ゴルフ界に7人しかいない永久シード選手(ツアー25勝以上)まで上り詰めたジョーこと尾崎直道選手。

尾崎三兄弟の末弟である直道選手は、ジャンボをどう思い、ジャンボから何を学んだのか。

金子は著書「誰も書けなかったジャンボ尾崎」の中で、直道選手にインタビューを行い、高校時代の練習環境についても尋ねている。以下はその部分の抜粋。

返ってきたのは意外な言葉だった

尾崎直道

尾崎3兄弟のなかでも唯一、男子ツアーで賞金王になり、シニアになっても賞金王になった尾崎直道。

「高校に入ってからゴルフを始めたわけですが、最初からジャンボが手取り足取り教えてくれたのでしょうか。私の疑問に、直道さんからは意外な言葉が返ってきました。

ーー「手取り足取りなんていうことはほとんどなかったと思う。自分でこんな感じかな?とやるだけ。曲がってもいいから大きく振ろうとしていた記憶はあるね。ただ、スコアはまとまらなかった。

初めてクラブを握る人に対して、ほとんど何も教えなかったとは、私にとって驚きでした。

直道さんは高校2年生の時に初めてジュニア大会に出て、浮間ゴルフリンクスで予選を通って霞が関CCの日本ジュニアゴルフ選手権に出場していますが、成績は記憶にないそうです。

3年の時は浮間ゴルフリンクスでの予選も通れず、ジュニア時代の成績はほとんど覚えていないとのこと。ゴルフを始めて1年足らずで、日本ジュニアゴルフ選手権の決勝に行けただけでもすごいことだと思います。

では、当時の練習環境はどうだったのかというと、決して恵まれた形とは言えなかったようです。

ーー「千葉に来たときはジャンボの家の近くにアパートを借りて住んでいた。ジャンボ邸にはまだ練習施設がなかったので、いつもアパート前の道路での素振りをするか、校舎の空き地で打っていた記憶しかないね。今のジュニア選手達から見れば、想像もつかないかもね。練習場もあったのだけれど、距離的に歩いていくには遠すぎたので、ほとんど行けなかったね」。(中略)

ーー「技術に関しては、俺たちの時代は、ビデオでチェックすることもできないし、要するにいい球が出ればいいスイングだと勝手に思っていたからね。もう一つは、曲げる時に思うように球を曲げられれば、それは俺にとっていいスイングなんだよね」

私はこの答えを聞いて驚きました。普段からジャンボがジュニアの子供達に対して言っている言葉と同じだったからです。直道さんも実践してきたんですね。これは自然に身に付いた生き残るための尾崎3兄弟の考え方なのだと思いました」。

恵まれない環境に置かれているように見えても、それがむしろ有利に働くこともある。直道選手の例は、限られた環境に置かれたがために、素振りなど基礎的な練習に専念でき、それがのちの活躍を支えたという典型的な例と言える。

逆境を味方につける

ジャンボ

練習環境の良し悪しを言い訳にするなとジャンボ尾崎は言う。だからこそか、最高の環境をジュニアのために提供しているのもジャンボだ。

金子が言う。

金子の独白 「自分で一番大切なこと、一番クリアしなくてはいけないこと。例えばパワーなのかスイングの再現性なのか、練習場に行けなくても、例えば素振りをする場所はあるし、トレーニングもできる。何でも自分で考えなくてはダメっていうことです。

今はトレーニングしている動画も見られる時代。まず自分がクリアしなければいけないことをしっかりコツコツやる。それはどんな環境でもできることだし、どんな形でもできる」。

逆境を味方につけることができれば、それが武器になることも。

金子の独白 「逆に限られた環境の方が、なんでもある環境よりも自分で考える力もつくし、時間も有効に使うし、様々な意味で集中できるというか、研ぎ澄まされるというか、逆にその方が無駄がない練習ができる可能性はあるかもしれない。そういう環境を逆に味方につけるということ。無駄のない練習をする習慣も身につく」。

できる練習を探して、工夫する力。それは満たされた環境よりも、そうでない環境の方が、自然に身につく。それがプロになってから生き残るためのエネルギーにもなる。

金子プロからジュニアへのワンポイントアドバイス

尾崎直道

左リードがスイングの基本なので、その素振りでスイングを作ると説明する尾崎直道。

時々ジャンボが「ボールばっかり打っていないで、素振りをしないと。パワーがないんだから、パワーをつけないとどうにもなんないだろう」とアドバイスしています。

もっと素振りする時間作りなさい」というのは、ジャンボがよく言う言葉。「今の若い子には、素振りの文化がない」ともジャンボは指摘しています。

素振りは単調だから、おろそかになりがち。そういう時は左手一本の素振りにしたり、右手で柔らかさを出すための工夫を取り入れてみたりと、身体の各部分に練習のテーマを絞り込めれば、それをさらに掘り下げていくこともできます。


金子柱憲

金子柱憲(かねこ・よしのり)
1961年3月4日生まれ。東京都出身。日大卒。
14歳でゴルフを始め、アマチュア時代は日本オープンベストアマ、関東学生優勝。1982年の韓国オープンではプロを抑えて優勝。1983年プロ入り後、ジャンボ軍団入り。91年に関東オープンで初優勝。ツアー通算6勝。


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