どんな斜面からも打てる右グリップを考える

右グリップはアジャストのしやすさで判断

森プロ「よくスイングは〝左手リード〟とか〝下半身先行〟とか言われますが、まず〝右手有りき〟だと思います。たとえば極端なツマ先上がりやツマ先下がりの斜面で、いかにボールにアジャストするか。テニスや卓球のように、打面を操作しながら効率よくパワーを伝えて、狙った所に打球を運ぶ。その観点から、身体の他の部位の動きに制限されない、右手だけでも打てる右グリップを考えるべきです」と森プロ。

飛距離も正確性も両立していたホーガンは、右手の緩みを排除することでしなやかなスナップ動作を実現していた。

森プロ「手首をしなやかに使うイメージだと、軽く、緩めたグリップになりがちですが、それでは打面のコントロールが効かずにヘッドが走ってしまい、フックのミスが出やすくなります。それに気づいたホーガンは、きっちり締めた右グリップを作り上げていました」

ホーガン流“面合わせ”=ロフトを立てる

森プロ「“面合わせ”とは、スイング中のフェースコントロールのことで、特にインパクト時の打面のアジャスト感覚です。ホーガンの場合、風の強いテキサス育ちでもあり、ロフトを立てるイメージが有効だったようです」

ホーガン流“棒振り”=サイドスロー

森プロ「私が“棒振り”と呼ぶのは、棒の先端、つまりクラブヘッドを力強く加速させる動きのこと。ホーガンの場合、サイドスローのイメージによる右手のしなやかなスナップ動作が、それを実現していました」

“ホーガン流”右グリップ3つのこだわり

疑問(1)なぜ2本指とシャフトは直交にセットするのか?

森プロ「左手は人差し指から手のヒラにかけて斜めに握るのに、右手は指と直交。おそらくホーガンは打面と右手指の腹をシンクロさせるイメージが強かったのでしょう。また、指だけで握ることでスナップ動作もスムーズになったはずです」

疑問(2)人差し指を親指の側面に押し付けてV字を締めたのは?

森プロ「左親指をショートサムに改造後、強調したのがV字部分の締まり。『モダン・ゴルフ』で人差し指の付け根を左(目標方向)に押し付けるイメージと述べていますが、ハンドファーストとスナップ動作で“ロフトが立つ”打面を感じ取りやすくなります」

疑問(3)なぜ右小指を左人差し指と左中指の間に引っかけた?

森プロ「ホーガンは右小指を左人差し指に乗せるだけでは滑って外れてしまう、と危惧していました。これは左手をグリップエンド方向にたぐり、右手は目標方向へスナップするという動きの違いから、両手が外れるイメージがあったからでしょう」

左グリップと異なる右グリップの役割とは?

左右の役割を分ける。両手は同じ位置で別の動きを担う

右手は緩めない、詰めない

右手がホーガンのように締まっていれば、野球のピッチャーが変化球を操るような切り返しでの操作感を期待できる。弾道の高低の打ち分けなど、スナップ動作のアレンジにも有効。

両手の一体感を高めようと詰めて握ると、右手が緩みやすくなり、切り返しで手元の操作性を失う。ハンマー投げのように遠心力任せのリリースになってしまい、フェースターンを管理できない。

「一体化」よりも「共同作業」

森プロ「ホーガンは両手の甲の向きも、指の揃え方も平行ではありませんでした。つまり、一体化して同じ動きをさせる意識はなかったということです」

森プロ「テークバックで右親指下の膨らみと左親指の間に隙間ができ、ダウンで右手首の背屈とともにその隙間が埋まるようにすると、両手で“共同作業”するイメージを感じることができます」

左サイドの“かわし”が右のスナップ動作を促す

左の“引き”と右の“押し”で身体の動きをヘッドが追い越す

森プロ「左手のたぐり動作でリリースを促すことはできますが、これに頼りすぎるとフェースコントロールが難しい。

ワッグルアプローチのドリルなどでスナップ動作による“押し”を磨き、その出力アップのためにたぐり動作、左サイドの“かわし”をプラスする流れのほうがやさしいと思います」

「右手で打つ」を始めてみると迷いが消える

右手は繊細に使いたい。だからリキませたくない。だが、それで緩ませたり、力感をまったく失うのはナンセンス、と森プロ。

森プロ「打面をコントロールする道具は、基本的に利き腕(右手)だけで打つほうがやさしいです。ですが、ゴルフクラブは長く、シャフトからヘッド重心が外れており、片手でスナップを利かせてまともに打てるのは、振り幅が小さいチップショットくらいでしょう。

でも、本質的に昔からゴルフスイングは右手主体。だから逆に、左手リードで安定性やコントロール性が高まることが、レッスンとして脚光を浴びたのです。今では右手を使うな、とミスの元凶扱いですが、本当に覚えるべきは〝右手の正しい生かし方〟のはずです。
〝ホーガン流〟は右手で打とうと意識して眺めると、その本質が見えてきます。効率の良い身体全体の使い方も理解できます」

Ben Hogan
ベン・ホーガン(1912~1997)

アメリカ・テキサス州出身。身長173cm、体重68kg。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。

ホーガンアナリスト 森 守洋

ベン・ホーガン(1912~1997)を手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。


【アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方】
←飛ばしたい時ほど左グリップはリキませちゃダメ!右手は緩めず左手の緩急で加速をサポートする
スイング軸を安定させるには頭の位置を固定するのではなく、右脚を“左腰の回転軸”とイメージする→

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