スライスとシャンクが出たら『左腕の動き』に注目!左手3本指の締めすぎは百害あって一利なし
ベン・ホーガンを先生に!森プロが解説する『アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方』【第18回】
「左腕は真っすぐ」、「左腕はスイングの半径」、「肩と両腕の三角形をキープ」とよく言われる。だが、それが左腕を力ませている原因、と森プロ。「左腕は、いかに右腕の動きを邪魔しないかが大切。“脱力”と“たぐり動作”は表裏一体です」
GOLF TODAY本誌 No.619 97〜101ページより
イラスト/久我修一 取材協力/東京ゴルフスタジオ
取材・構成・文/戸川 景 撮影/圓岡紀夫
“脱力“した「たぐり込み」で右手の「サイドスロー」を促す
左手3本指の締め過ぎを解除してみる
森プロ 「バックスイングで右ヒジがたたまれるように、フォローでは左ヒジがたたまれることで、ヘッドはスムーズに力強く走り抜けます。ですが、ことさらに大きなフォローを取ろうと意識したり、フェースターンを抑えようと左手の小指側3本指を強く締めたりすると、ヘッドが走らず振り遅れ、スライスやシャンクといったミスが出やすくなります」と森プロ。
それを解消するのがホーガン流の“たぐり動作“だが、左腕を真っすぐ伸ばそうとか、左ワキを締める、左手3本指を強く握る、といった意識が強いと、失敗しやすい。
森プロ 「左腕の動きは、あくまでも右腕のサイドスローとスナップ動作のサポート役。ダウンで身体のターンに引っぱられて伸びても、インパクトエリアから先は緩むくらいの“脱力“イメージを強めるほうがベターです」
それにはまず、左手3本指を“締めない“ことが肝心だという。
左腕が“つっかえ棒“ではダメ
スイング中、左腕を伸ばす意識が強いと、上体が力みやすくなる。インパクトで詰まりがちになり、ヒッカケやダフリといったミスも生じやすい。
左腕が硬直すると、スナップ動作が入らず、ヘッドが走らない。手元が先行し、スライスやシャンクになる。
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ホーガン流“脱力“の切り返し3ポイント
POINT(1)左手3本指は締めなくていい
森プロ 「切り返しでは、左手小指側3本指は全部緩んでいても大丈夫。実際、ホーガンは若い頃、切り返しで握り直すクセがあったくらいです。インパクトエリアでリリースが始まっても、ホーガン流なら人差し指が引っかかっているだけでクラブはすっぽ抜けません」
POINT(2)「プレーンの乗り換え」は左腕のイメージを表現
森プロ 「ホーガンは著書『モダン・ゴルフ』で、ダウンのプレーンは右を向く=インサイドアウトに乗り換える、と述べていますが、実際のホーガンの軌道はインサイドイン。ダウンで身体のターンが先行するぶん、左腕をプレーンの上側にはみ出させないためのイメージで、それには左腕の“脱力”が必須です」
POINT(3)左腰始動に“遅れを取る“右ヒジと一緒に下がる
森プロ 「ホーガンは、ダウンを左腰のターンで始動すると、手元は自然と下がると述べていますが、左腕が力んでいると逆に手元は上がり、カット軌道になります。切り返しで右ヒジと手元がスッと下がるのは、左腕の“脱力“が前提条件です」
右サイドの動きを邪魔しない左腕の使い方は?
【左腕の上手な抜き方】左腕は下げてかわし、右腕の通り道を作る
【「ボール投げドリル」から左腕の動きをイメージ】
ホーガンが提唱した、バスケットボールを左に投げるドリルに左腕の使い方のヒントがある。
左方向に押し込むには左手はしっかり下げる
森プロ 「右ヒジをたたんで右に振り上げたボールを、左の標的に向けて投げつける場合、右ヒジは曲げたまま身体をターンし、左腕を下にかわしながら押し出す。両腕の動きは左右対称ではなく、左腕のほうがタテに大きく動くのがポイントです」
「ハンドルを切る」左右対称の動きはNG
森プロ 「手元をタテにV字軌道で動かし、身体のターンで円軌道にするというメソッドでは、腕やヒジの動きを車のハンドルを切るような左右対称の動きと捉えますが、ホーガン流のサイドスロー動作ではNGとなります」
クラブのリリースを促す「両腕シンクロドリル」
左腕はタテ、右腕はヨコクロスさせるイメージで
左腕を前に上げ、右腕はサイドスローのトップ位置に。左腕をダランと落とす流れに、右腕のサイドスロー動作を合わせていく。
森プロ 「タテとヨコのチグハグな動きをシンクロさせることで、ダウンでの両腕の動きのイメージがつかめます。左腰のターンを加えるなど、徐々に動きを大きくしていくのがベターです」
森プロ 「“脱力“と“たぐり動作“のイメージをプラスするには、左手の向きを意識するのが有効です。左手のヒラを外側に向けて上げ、左腕をローリングしながら左手甲を下に向けて引き込む。右手のスナップの感覚と合わせてみてください」
左腕は“弱く“小さく収まるイメージで正解
左手3本指を“締めない“とクラブのコントロールが効かなくなる、というのは単なる思い込みで、スナップ動作には百害あって一利なし、と森プロ。
森プロ 「左手は、人差し指と手のヒラの膨らみ部分だけでクラブを支えられる、と強調したのがホーガンです。つまり、左手グリップはかなり“脱力“していい、というよりしなければ、右手のスナップ動作が生かせないことをホーガンは知っていたのだと思います。
若い頃のオーバースイング、ヘンリー・ピカードに指摘された切り返しでの“握り直し“のエピソードも、左手をとことん緩めていたから。修正後も切り返しでシャフトが右肩に当たりそうなくらいのタメは、左手3本指を“締めない“感覚を残したからでしょう。ホーガン流をマスターするなら、左腕をどこまで“弱く“できるか、フォローでどれだけ存在感を消せるかを考えてみてください」
Ben Hogan
ベン・ホーガン(1912~1997)
アメリカ・テキサス州出身。身長173cm、体重68kg。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。
ホーガンアナリスト 森 守洋
ベン・ホーガン(1912~1997)を手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
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