「300ヤードスプーン」はまだまだ現役? ゴルフクラブの賞味期限をゴルフギアライターが考えてみた
ゴルフライターT島が切り込む!フィッティングショップだから分かるゴルフギア最新事情/第196回

ゴルフクラブの新製品の発売サイクルがどんどん短くなってきたと感じる今日この頃。ところで、ゴルフクラブに賞味期限はあるのか? ゴルフギアライターのT島氏と、古いクラブのことを勉強し始めた大蔵ゴルフスタジオの若手フィッター・野倉氏(ダイナマン)が語り合います。
ゴルフクラブの性能に賞味期限はあるの?
T島 フィッターの野倉くん(動画内ではフィッター・ダイナマン)が登場する大蔵ゴルフスタジオの新しい動画始まりました。クラブの歴史について、ゴルフライター&YouTuberの鶴原弘高(つるはら・ひろたか)さんに学んでいます。ダイナマン、ゴルフは上手いしフィッティングもしっかりできるのですが、いかんせん若いので、昔のクラブだけはちょっとわからないのです。
野倉フィッティングに必要なクラブの知識やスイングのことは充分理解しているのですが、お客様と話す時に20年前のクラブの話とか出ると、ちょっとついていけなくて。
T島 そうだね。しっかり学んで下さい。今日はクラブの性能の賞味期限についてです。
野倉大学を卒業してから本格的にゴルフを始めたので、ゴルフ歴10年ぐらいです。もうゴルフ一筋なんで過去10年ぐらいの商品知識は自信あります。
T島 まあ、10年ぐらい前のクラブを使っているお客様もいらっしゃるしね。
野倉そうですね。賞味期限ですが、やっぱり1Wが一番短いと思います。進化を一番感じるので。
T島 間違いない。ゴルフクラブは、フェースの反発規制や慣性モーメント制限などゴルフのルールによって縛られているので、ドライバーの飛距離の上限はほぼ決まっていると言って良いと思います。ただミスヒットしても上限近くまで飛ぶという、寛容性の面では進化が進んでいる。
野倉フェースの反発規制って2003年でしたっけ?
T島 勉強効果が出ているね! まあコレはUSGAとR&Aの対応が分かれていたので、世界統一基準が決まったのが2003年。当初はCOR値(フェースとボールの衝突時のエネルギー効率を表す値)での制限だったんだけど、2004年からCT値(反発係数)によって制限されるようになりました。

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野倉ルール規制って1Wの賞味期限に大きく影響しますよね。慣性モーメントも規制されていますね。2008年からでしたっけ?
T島 そうです。実は2004年にはヘッド体積が460cc以内というルールが決まっているんですが、2008年には慣性モーメントの規制がかかります。ゴルフクラブってメーカーさんが、ルールを司るUSGA(全米ゴルフ協会)とR&A(英国ゴルフ協会)に「こんなクラブ作ったんですけど、公認取れるかなぁ」ってお伺いを立てるんですね。まあ試作品の段階で、その際に、ルールが検討されるんですよ。
野倉そのルールの中で、メーカーさんが試行錯誤しているわけですよね?
T島 そうですね。2008年前後に、ドライバーの現在のフォーマットが決まったと言っていいでしょう。T島的には2008年以降から劇的な進化はしていない、といって良いかと思っています。それにルール上限のクラブは、突然作れるわけではないから。ドライバーの賞味期限として考えると、15年…いや10年前のクラブもまだ使えますかね。自分が使う考えて、どこまで遡る? という視点でいくと10年かなって思うわけですよ。
野倉なるほど、自分で使うと考える…その視点イイですね。フェアウェイウッドはどうでしょう? ツアープロがけっこう古いモデルを使っているという話を聞くことがありますけども。
T島 あるある。飛距離を求めなければ、古くても良いと思いますね。これはツアープロをじっくりと観察するとわかります。なかなか新しいのに変えられないフェアウェイウッドを分析するんです。有名だったのは谷口徹プロのキャロウェイ初代スチールヘッドとか、深堀圭一郎のテーラーメイド ファイヤーソールですね。
野倉えっ? もうお二人ともシニアツアーに出ていますよね?
T島 そうそう。今見るとスチールヘッドとかユーティリティより小さいぞ。さすがにお二人とも、もう使っていません。だから、25年前とかのモデルになると、さすがにもう飛距離性能に無理があるのかと。どちらのモデルも低重心で飛距離性能は高かった。でも、ある時期を境に、古さを感じるのでしょうね。

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フェアウェイウッドの賞味期限は12年くらい?

野倉古さを感じさせる瞬間、例えばテーラーメイドのロケットボールズとかキャロウェイのX-HOTの登場ですね? 私もゴルフを始めた頃に中古ショップで見たことあります。
T島 正解! 2013年に両モデルが登場する。どちらもドライバー並みに飛ぶ! という触れ込みでした。X-HOTなんて「300ヤードスプーン」なんてコンセプトだったからね。カップフェース構造やソールの溝などでフェアウェイウッドのフェースの反発を高めることができたので、ここで飛距離性能のレベルというか基準が上がったわけです。
野倉X-HOTは、昨シーズン限りで引退した上田桃子プロが使い続けてましたね。ということは、12年ぐらいは賞味期限があるということですね。
T島 そうだね。12年とは言わないけど、テーラーメイドのM2(2017年)やM4、そうそうタイガーが使い続けたM3などは、まだまだイケます。
野倉大蔵ゴルフスタジオで大人気のロッディオのフェアウェイウッド。昨年8年ぶりのモデルチェンジしたんですけど、前のモデルはモデルチェンジ直前まで売れ続けていましたよね。
T島 あれは名器だったね。まだまだ使えます。ということで、気に入ったフェアウェイウッドは長く使ったほうがいいですよ。
野倉ユーティリティはどうです?
T島 うーん。ユーティリティは1990年代後半に生まれた割と新しいジャンルなんです。ヒット作が続けざまに出たことで、ユーティリティの普及されたのが2010年以降なんで、その辺りに出たユーティリティからは賞味期限内、という考え方もできますかね。
野倉新しいジャンルと言っても、25年前なんですね。
T島 まあ歴史的に見てということですから。それからアイアンは、2010年の溝規制でって、コレ話が長くなっちゃうね(笑)。また機会があればアイアンやウェッジ、パターの賞味期限についても話したいですね。というわけで、自分にピッタリなクラブをフィッティングで見つけると、長く使えます。
野倉ゴルフクラブが、ちょっとずつでも進化しているというのは間違いないですよね?
T島 そうだね、エポックメイキングな技術革新があれば、一気に賞味期限が短くなるけど、ジワジワと変わるんだよね。常に自分にとってベストなクラブを使うのなら、数年おきに変えることかな。ベターでいいなら、賞味期限は長くなります。
野倉はい。ベストを目指す方、ベターを目指す方どちらも大蔵ゴルフスタジオへどうぞ!
T島 そもそも自分に合っていないと、自分のポテンシャルを発揮できないので、フィッティングして長く使って下さい。

T島氏のプロフィール
ゴルフ関連のライター、動画撮影編集、ブロガー、フォトグラファー、YouTuber的な(笑)、いろいろやってます。ゴルフ、クルマ、カメラ、音楽、映画、ガジェット、が好きです。以前は、店舗の運営、出店、立て直しを25年やってましたが、何故かこんな仕事をしています。
大蔵ゴルフスタジオ
上記動画はT島氏が特派員ブログを勤めている東京都世田谷にあります大蔵ゴルフスタジオの説明。大蔵ゴルフスタジオ世田谷のクラブフィッティングの流れを説明しています。
取材協力/大蔵ゴルフスタジオ世田谷
住所:〒156-0053 東京都世田谷区桜3-24-1 オークラランドゴルフ練習場内
営業時間:11:00〜19:00
定休日:毎週月曜日
TEL:03-6413-9272
https://www.ogs-p.jp/

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