世界一のボールストライカー【モー・ノーマンに学ぶ】 “芯に当たる” ハンマー打法(1/2)
''芯に当たる''スイング大改革|あなたに合ったスイング理論を見つけて飛距離アップ!PART1
あのタイガー・ウッズをして「彼ほどスイングをコントロールして真っすぐ飛ばせたゴルファーはいない」と言わしめた男、モー・ノーマン。
ハンマー打法やシングルプレーンと後世に呼ばれたメソッドは、彼が世を去った今でも多くのプロが絶賛する。カリスマコーチの森守洋もその一人。
そればかりか「年齢を感じ始めたアマチュアゴルファーには最適です」と太鼓判を押す。温故知新。伝説の名手のスイング遺伝子から芯喰いのエッセンスをいただこう!
●世界一のボールストライカー【モー・ノーマンに学ぶ】 “芯に当たる” ハンマー打法
(1/2):セットアップ/バックスイング&切り返し
(2/2):ダウンスイング&インパクト/フィニッシュ
解説 森 守洋
もり・もりひろ
1977年生まれ。1995年に渡米、サンディエゴでミニツアーを転戦するなどして腕を磨く。帰国後は陳清波に師事、その後「東京ゴルフスタジオ」を立ち上げコーチ活動を始める。現在は原江里菜、福田真未、香妻陣一郎らを指導。本誌連載「教えてホーガン先生!」でお馴染みのスイングアナリストでもある。
モー・ノーマンってこんな人
通算55勝、17回のホールインワン、33のコースレコードを記録
1929年生まれ。カナダ・キッチナー出身。アマチュア時代に2度マスターズに出場。57年にプロになり2年後にアメリカPGAツアーに参戦したが、シャイで身なりや言動を気にしないノーマンにPGAが苦言を呈したことがストレスとなり、わずか27試合で撤退。ちなみにノーマンの言動は、子どもの頃に遭遇した事故の影響で自閉症の症状があったせいだったと言われている。
以降、主戦場をカナダツアーに移すとツアー通算55勝。17回のホールインワンを記録し、33のコースでコースレコードを塗り替えた。
彼のショットを見たリー・トレビノは「最高のボールストライカー。生きる伝説」と称賛。ケン・ベンチュリーはパイプラインのようにボールを正確に飛ばすことから“パイプライン・モー”と呼んだ。2004年、故郷キッチナーにて75歳で他界。
セットアップ|右手を下から握りヘソを右に向けて構える
下から握る右手、超ワイドスタンスに伸びた腕、ボールのはるか右においたヘッド……。変則に見えるアドレスには真っすぐ飛ばす極意の塊だ。
アドレスでバックスイングの4分の1を先に終わらせる
ノーマンはフィンガーで握る。ポイントは右手で、ハンマーを持ってヨコから釘を打つように下から握っています。ギュッと握らないばかりかグリップ内でクラブが回っている可能性もある。ピッチャーが投げる時にボールを離すように、ゆるめにセットアップして右手の中に支点を作っている雰囲気があります。
アドレスではまず両足を揃えて立ち、左腕とクラブを一本にしてソール。次にボールが両足の真ん中にある体勢から右足を大きく広げてスタンスをとります。さらに上体を右に傾けつつ、おヘソを右に向けてヘッドをボールから離します。
これによりテークバックからバックスイングの4分の1を先に終わらせる。極端に言うと、バックスイングはコッキングだけくらいの形をアドレスで作っています。
ヘソを右に向けてヘッドをボールから離す
腕を伸ばし、右足を広げて立ったら上体を右傾させつつヘソを左に向ける。スタンスはややクローズド。ボール位置は左カカト延長線上。
フックグリップの左手に対し下から右手を握る
ややフックの左手に対し思いきり下から右手をフィンガーで握る。グリッププレッシャーは比較的ゆるい。
右手で持った ハンマーを 動かすイメージ
左側の壁にヨコからハンマーで釘を打つ時のようなイメージで、右手でクラブを持つ。コックしやすいようきつくは握らない。
勝利を確信したところで自己完結
あまりにもシャイだったノーマン。後続に大差をつけてリードしていたあるトーナメントで、最終18番のグリーンをプレーせずに帰ってしまった。なんでもインタビューされるのが嫌だったということ。勝利を確信したところで自己完結してしまった。試合はもちろん失格となった。
アドレスで4分の1バックスイングする
①左右センターから右足を広げて立つので、ボールの位置はどの番手でも左胸の前(左カカト線上)になる。
②両腕を伸ばしワキも空けてOK。インパクトのイメージで構える。
③そうしたら、上体を右に傾けつつ、おヘソを右に向ける。
④アドレスで4分の1バックスイングする。
バックスイング&切り返し|右手でクラブを引き上げ小さなトップを作る
浅いトップがノーマンの特徴。そのせいもあってスイングプレーンは限りなく一枚板に近い。これが安定したスイング軌道とインパクトを演出。
バックスイングのメインは右手のコッキング
ノーマンはシンプルに「バックスイングではお腹を回してコッキングする」と言う。動きをみるとその通りですが、言うほど体は回っていません。その証拠にトップがすごくコンパクト。
ただしハンマーで釘を打つ準備動作をするのと同様、右手首でクラブを引き上げる感じでコックを入れます。そう見えないのは右手を下から握っているから。上から握らない分アドレスの時点である程度コックされているのです。左ヒジが伸びっぱなしなのもコックしている証。手首を使わない人はヒジを曲げないとクラブが上がりません。
この結果、プレーンは限りなく一枚板に近く。いわゆるシングルプレーンです。ノーマンは「バックスイングは浅いほうが腰との回転差を簡単に大きくできる」と言っていますが、これはプレーンを歪めない効果も生んでいると思います。
「浅いバックスイングからの方が腰を大きく動かせる」とノーマン。バックスイングでは体の回転を意識しなくていい。
右手のコックでプレーン上にクラブが上がる
4分の1バックスイングしたところから右手でクラブを引き上げる。体の回転は意識せず右手のコックだけする感じ。腕を使わないのでプレーンが一枚の板になる。
右手のコックでクラブを引き上げる
右手で振る意識。下から握った右手でクラブを引き上げるだけでコックが入る。左手の甲とフェース面の向きは同じ。
浅いこれ橋を渡ったドライバーショット
サム・スニードと回ったエキジビションマッチでのこと。240ヤード先にハザードが横切るホールでスニードは迷わず刻み。ところがノーマンはドライバーを一閃!真っすぐ飛び出したボールは真ん中にかかる橋を渡って見事フェアウェイをとらえた。
右手のコックを使うと左ヒジが緩まない
右手のコックを使うと左腕は伸ばしたままバックスイングできる。コックを控えた場合、左ヒジを曲げないとクラブが上がらない。
コンパクトなトップからクラブを下ろすのでプレーンが歪まない。シングルプレーンと呼ばれる所以だ。
取材協力/東京ゴルフスタジオ
GOLF TODAY本誌 No.571 40〜45ページより
【シリーズ一覧】
PART1:世界一のボールストライカー【モー・ノーマンに学ぶ】 “芯に当たる” ハンマー打法(1/2)
PART1:世界一のボールストライカー【モー・ノーマンに学ぶ】 “芯に当たる” ハンマー打法(2/2)
PART2:海外ツアーで話題!ゴルフ『3大スイング理論』を吉田洋一郎が解説
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