アイアンのダウンブローをマスター!森守洋が上達の秘訣をレッスン
【本家本元によるスペシャルレッスン】
「アイアンはダウンブローに打つ」というが、本当のダウンブローを理解し、実践しているゴルファーは果たしてどれだけいるだろうか。そこで陳清波のダウンブローを継承する森守洋にアイアンショット上達の秘訣を教えてもらおう。ゴルフのレベルアップにも大きく役立つはずだ。
●やっぱりアイアンはダウンブローに限る!!【本家本元によるスペシャルレッスン】
Prologue:森守洋いわく…
Part1:本当のダウンブローの基本をマスター!
Part2:本当のダウンブローをマスターするコツ!
Part3:本当のダウンブローをこのドリルで完全マスター!
監修 森 守洋
もり・もりひろ/1977年生まれ、静岡県出身。95年に渡米し、サンディエゴにてミニツアーを転戦しながら腕を磨く。帰国後、陳清波に師事し、ダウンブロー打法を学ぶ。現在は東京都三鷹市で『東京ゴルフスタジオ』を主宰し、多くのアマチュアを指導。原江里菜らツアープロのコーチもつとめる。
Prologue|森守洋いわく…「ダウンブローのベースとなるのはグリップ支点の振り子運動です!」
スイング軌道の最下点の手前でボールをとらえる
「ダウンブロー」を一口でいうなら、ボールに対して正確にコンタクトするための現象です。早い話、手元を先に進めないと地面の上のボールをとらえるのは難しい。グリップが先でクラブヘッドが遅れてこないとダメです。スイング軌道の最下点の手前でボールをコンタクトすることが絶対条件。それがダウンブローなのです。
ところが多くのアマチュアゴルファーは最下点の後でインパクトを迎えてしまっています。ボールをとらえる前に手首が早くほどけて、すくい打ちとなる「フリップ」を起こしているのです。
ダウンブローをマスターしたいなら、振り子運動を正しく理解することからスタートしましょう。ゴルフのスイングには二つの振り子が存在します。一つはグリップを支点とした振り子運動で、もう一つは頚椎上部付近を支点と考える振り子運動。ゴルフのレッスン書の多くはボディターンや、最近よくいわれる反力など体の動きを主体に説明されています。
しかしこれは高度な話であって、グリップ支点の振り子の運動を無視してはスイングがどんどんおかしな方向に進んで、頭の中が混乱してしまうことになります。
グリップとクラブヘッドの時間差が必要
スイングのベースとなるのはグリップ支点の振り子運動であり、これを正しく理解しないことには永遠に正しいダウンブローは身につきません。プロやシングルレベルのゴルファーはグリップ支点の振り子運動が備わっていて、体の回転を主に考えても何も問題はない。でもグリップ支点の振り子ができていない人が体の回転ばかり考えるのは、初級のドリルを通り越して中・上級のドリルにいきなり取り組むようなものです。今では何とか打法とか色々な打ち方がありますが、アイアンのクラブの形状や構造は昔から不変。性能は上がったとはいえ、ダウンブローの大原則は昔も今も変わりません。体の動きを主に考えてばかりいる人はグリップ支点の振り子運動が崩れやすいですし、スクエアの勘違いを起こしてクラブを抑圧しようともしがちです。
クラブを主に考える人はダウンブローが早く身につきます。クラブを主に考えるということは、グリップ支点の振り子運動を主とすること。ここを正しく理解できたら、ダウンスイングにおけるグリップとクラブヘッドの「時間差」の必要性にも気づきます。ダウンブローの大原則はドライバーもアプローチ、ひいてはパットまで変わらないことも納得して頂けるはずです。
こんな偽ダウンブローもダメ
グリップ支点の「第一振り子」運動
脊柱上部支点の「第二振り子」運動
本当のダウンブローはグリップを支点と考えた第一振り子の運動が主役となる
PART1 本当のダウンブローの基本をマスター!!
最初にダウンブローの基本の動きを解説。一番のポイントはクラブヘッドが加速中にインパクトを迎えること。まずはグリップ支点の第一振り子の動きを正しく理解しよう。
ブルックス・ケプカ
(アメリカ)1990年5月3日生まれ。2012年プロ転向。17年と18年の全米オープン2連覇、18年と19年の全米プロ2連覇を果たし、「メジャー男」の異名を持つ。米ツアー通算7勝。
Point 1|ハンドファースト&左足体重が絶対条件
「インパクトはアドレスの再現」。よく耳にする言葉ですが、これを鵜呑みにしてはいけません。アドレスは言ってみれば「静」の状態。インパクトはスイングにおける「動」の中の一瞬の形です。
インパクトでアドレスの形を再現しようと思うと、クラブフェースをスクエアに戻してボールに合わせるような動きとなります。ほとんどのケースで体重が右足に残り、手首をこねてしまいます。この時点でもうダウンブローに打てないのです。
ダウンブローの大原則はハンドファーストと左足体重です。その結果としてフェースターンが行われて長いインパクトゾーンがつくられます。
インパクトはボールをしっかり打ち抜く感覚です。そのためにもボールを強く叩ける体勢を知ることが大切。アドレスの姿勢から腰をぐっと左に回して体重を左足に乗せてハンドファーストの形をつくりましょう。これが球をダウンブローにとらえるインパクトの基本形です。
インパクトはアドレスの再現ではない
こんなインパクトはダメ
Point 2|前傾角度をキープしてヘッドを下降させる
アドレスで体重が左右均等に乗っていたのがインパクトでは体重の6~7割が左足に乗り、腰も左に回転してグリップの位置はアドレスよりもやや目標よりも左に移動します。アドレスよりもフェースを立ててロフト角を減らすイメージでインパクトを迎える。こうした意識を持つことでダウンブローにヒットしやすくなります。
ではインパクトはアドレスの再現というのは間違いかというと、それもノーです。再現しなくてはならないのはアドレスの前傾角度です。ハンドファーストインパクトの申し子ともいわれるトミー・フリートウッドらも前傾角度をしっかりキープしています。結果としてダウンスイングでクラブヘッドが正しい軌道に乗り、下降中にインパクトを迎えられるのです。
ダウンスイングで腰が前に出ると、上体が起きて前傾角度が崩れてしまいます。球に合わせようとする人に多く見られるパターンですから注意しましょう。
腰を回してインパクト
アドレスの前傾角度=インパクトの前傾角度
トミー・フリートウッド
(イングランド)1991年1月19日生まれ。2010年プロ転向。17年に欧州ツアー賞金王となり、18年のライダーカップに初選出。長髪がトレードマーク。
グリップが先にゴールするからダウンブローに打てる
今平周吾
(フリー)いまひら・しゅうご/1992年10月2日生まれ、埼玉県出身。2011年プロ転向。165センチと小柄ながら勝負強いプレーで18~19年2年連続賞金王を獲得した。ツアー通算4勝。
Point 3|ダウンスイングでグリップ支点が左に移動
グリップ支点の振り子運動の説明をしましょう。クラブを片手に持ち、グリップを固定して振り子のようにブランブランと動かします。
クラブヘッドが円軌道を描くように一定に動き、円弧の最下点に向かうときは加速し、最下点を通過した後は減速します。遊園地のアトラクションのバイキングのスピードをイメージするとわかりやすいでしょう。
ところが実際のスイングではグリップ支点は止まったままではありません。ダウンブローに打つということはクラブヘッドがスイング軌道の最下点に向かい、加速中に球をとらえること。そのためにはダウンスイングでグリップ支点が左側に移動しないといけません。ハンドファーストと左足体重が絶対条件という理由がそこにあるのです。
ダウンブローはクラブヘッドよりもグリップを先にゴールさせるイメージが大切。ボールにきちんと当てようという意識の強い人は、グリップよりもクラブヘッドを先にゴールさせるようなインパクトになりがちです。結果としてグリップ支点が右側にずれてクラブヘッドが上昇し、減速中に球をとらえてしまうのです。
グリップが支点の役割を果たす
グリップ支点を左に移動してインパクト
グリップ支点が逆に動くとヘッド減速する
Point 4 |ヘッドを遅らせるためにコッキングを使う
グリップがクラブヘッドに追い抜かれるのはインパクト以降であって、クラブヘッドがグリップよりも先にゴールすることはない。それがダウンブローの原則です。
ダウンスイングを始動させるときのクラブヘッドとグリップのスタート地点は違います。どうしてかというとグリップよりもクラブヘッドのほうがスピードが断然速いから。でもクラブヘッドがいくら速いからといって途中でグリップを追い越して先にインパクト地点にゴールしてはダウンブローに打てず、手首をこねてしまうフリップ現象が起こります。
そこで必要となるのがコッキングです。バックスイングで手首の屈曲を使うのは、クラブヘッドのスタート地点をグリップよりもずっと後方まで下げるため。
つまり、クラブヘッドに大きなハンディを与えるのが目的なのです。バックスイングでノーコック気味に上げるプロでも、切り返しでは必ずコッキングを入れます。そうしないとダウンブローに打てないからです。
ブライソン・デシャンボー
(アメリカ)1993年9月16日生まれ。2016年プロ転向。ツアー界きっての理論派で知られ、「ゴルフの科学者」の異名を持つ。米ツアー通算5勝、欧州ツアー1勝。
「右肩を止める=胸を開かない」意識を持とう!
石川 遼
(CASIO)いしかわ・りょう/1991年9月17日生まれ、埼玉県出身。2007年に15歳でツアー初優勝して一躍時の人となり、翌年08年にプロ転向すると09年には18歳で早くも賞金王。ツアー通算17勝の人気プレーヤー。
Point 5|右肩を前に出さないでフォローへと向かう
ハンドファーストのインパクトをつくり、球をダウンブローにとらえるのはスイングの流れによるものです。形ばかりを意識しても上から急角度に打ち込むだけの偽ダウンブローになりやすいですし、手先だけの動きで球に合わせにいっても正しいハンドファーストのインパクトはつくれません。
ポイントはダウンスイングからインパクトにかけて右肩を止めておくイメージを持つこと。そこでぜひ試して頂きたいのが右手でクラブを持ち、左手で右肩を押さえて素振りする練習です。ダウンスイングで右肩が前に出なければ体を開かずにクラブを振り下ろすことができ、フォロースルーで右腕が自然に伸びることがわかります。
クラブを振り下ろすときにグリップを先行させて、インパクト地点を通過してからクラブヘッドがグリップを一気に追い越すイメージ。これでスイングの流れの中で球をダウンブローにとらえる動きを体感できます。
ダウンスイングで右肩を回そうとする
右肩が前に出なければスイングが安定
Point 6|フェースターンを使えばインパクトが「線」になる
ダウンブローにヒットし、フォロースルーで右腕をすっと伸ばしていくと右腕が自分から見て左側に回旋します。この動きに同調してフェースターンが自然に行われます。結果として長いインパクトゾーンをつくることができ、ショットの安定性がぐっとアップします。
この動きは右手でクラブのヘッド側を持ち、左手を真正面に伸ばして左腕の下でクラブを振る素振り練習でも体感できます。グリップよりもクラブヘッドがインパクトの地点に先にゴールしては手首をこねてしまい、フェースターンができません。グリップ支点の振り子運動が崩れるため、インパクトが「一点」にしかならないのです。
クラブが進みたがる方向にまかせて振る
両腕の回旋とフェースターンはクラブの動きにまかせた結果
撮影協力/東京ゴルフスタジオ、高根カントリー倶楽部
GOLF TODAY本誌 No.577 12〜21ページより
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