評価が分かれる理由を分析!過去最大ヒットのテーラーメイド『STEALTH』
【ゴルフトレンドウォッチャー】コヤマカズヒロのYouTubeをチラ見せ!
各種ゴルフメディアはもちろんYouTuberとしても活躍中のゴルフトレンドウォッチャー、コヤマ・カズヒロ氏の人気YouTubeチャンネル「コヤマカズヒロのYouTube【ゴルフトレンドウォッチャー】」を記事化!
ゴルフ業界の旬なネタ、ゴルフ経験値が高まりそうな話、ギア関連のマニアックな話などなど。コヤマ・カズヒロ氏の一人語りをチラッとお見せします!
テーラーメイドの話題作「STEALTH」がついに発売!
2022年、最大の話題作になるであろう、テーラーメイドの「ステルス」がついに発売になりましたね。
「ステルス狂想曲」とでも形容したくなる大変な盛り上がりなので、今回はこの「ステルス」についてお伝えしたいと思います。
「試打るTV」でもわりと早めに試打動画を上げましたけど、すごく注目度が高いです。
すでに購入した方も多いでしょうし、試打動画を見て、試打結果や評価を比較してショップで相談する、という方がたくさんいらっしゃるんじゃないでしょうか。
そんな中、ステルスの評価をどのように考えたらいいのか。その前提として、ぼくは【3つのステルス】というものを考えました。
「3機種ありますよ」ということではなく、「3つのステルスの考え方」です。
テーラーメイド ステルス シリーズをプロが試打比較!
ゴルフサプリ編集部が気になるクラブを、プロに試打してもらって紹介する「ゴルフサプリさくっと試打インプレッション」。 ...
【3つのステルス】の考え方
- ①テーラーメイド発のステルス
- ②相対化されたステルス
- ③自分の中のステルス
①テーラーメイド発のステルス
ステルスは22年間極秘裏に研究して開発した、カーボンフェースを搭載した次世代のドライバーです。
パーシモンがメタルに、メタルがチタンになったように、「今後はカーボンだ、新しい時代のドライバーになる!」というストーリーがステルスにはあります。
メーカー発信だけじゃなくCMや広告、その他PR記事などで、そのメーカーのコンテクストに沿ったステルスを評価する、これが1つ目のステルスです。
②相対化されたステルス
いろんな人がいろんな評価をしていますが、その評価内容が全然違うということが多いです。
ぼくはステルスプラスに関しては、基本的にスピン量が少なくてつかまりにくく、むずかしいクラブだと思いますし、「試打るTV」の試打動画を見ていただいた方は分かると思いますが、だいたいそういった傾向になるクラブなんですね。
だけど、「スピンが増えました」とか、「つかまります」という人もいますし、「寛容性も高い」という人もいます。基本的にはそんなに寛容性はないクラブだとぼくは思いますけど、真逆なことをいう人もいるわけです。
まったく違うことを言っているような評価が混在しているというのが現状です。
その両極端の幅がけっこう広くなったなというのがひとつの特徴だと思います。
すべての人の意見が尊重されるということを前提とすると、評価というものは相対化されます。平たく言うと、カオスになるんですね。何がいいのか分からない世界になってしまう、そういう状態になるんです。
実際にいろんな試打動画や評価を見て、ステルスがどういうクラブなのか、評価をどうやって定めるかを考えると思うんですが、見れば見るほど価値や評価は相対化されて逆に混乱してしまうという状況があると思います。それが当たり前なんです。
相対化されたステルスが向かう必然的な帰結として、ぼくたちは聞いてて混乱してしまうわけです。
③自分の中のステルス
たとえば、
・買った
・打ってみた
・感じた
・メーカーの主張も見た
・いろんな人の評価や結果も見た
というような経験や体験の中から、自分の中に芽生えるステルスの印象というのがありますよね。それが3つ目の自分の中のステルスです。
この分類した3つのステルス、これらを混同しないほうがいいんじゃないか、というのがぼくの提案です。頭の中でごちゃごちゃになっているものを整理して区分したほうがいいんじゃないかと思っています。
「これはテーラーメイドのコンテクストにある情報だな」、「これはさまざまな評価の中のひとつだな」、「これは自分が思ってる感情、印象だな」というのを分けたほうがいいんじゃないかと思うんです。
ここをごっちゃにしてしまうと「結局誰が本当のことを言ってるんだ」、ということになってきてしまい、だんだん苛立ってくるんですね。「何か自分に隠してるんじゃないか、そんなのはいいから忖度しないでほんとのことを教えてくれ」というようなマインドになるんです。
自分が理解できる、納得できる結論にたどりついてないということが不快に感じてしまう、そんなマインドになりがちなんですね。
なので、メーカーから発信されるステルス像という1つ目のステルスと、さまざまな人がさまざまな評価をする2つ目の相対化されたステルスというものの膨大な情報の渦に巻き込まれてしまうと、3つ目の自分の中のステルスを見失ってしまうということも出てきてしまいます。
ちなみに、ステルス以外のクラブもそう。この「3つのステルス」というものを意識して、それを自分の中で整理して自分の中のステルス、ゴルフクラブ評価を大事にすることが必要だと思います。
商品としてのステルスの状況はどうなのか?
「3つのステルス」とは違う側面、客観的な売り上げ情報に基づく商品としてのステルスという、そういう側面からもちょっとお伝えしたいと思います。
昨年のSIM2もテーラーメイド史上最高レベルぐらいに売れたドライバーの一つなんですが、ステルスは発売前の予約の段階で、すでにめちゃくちゃ売れてるSIM2の予約の数倍の予約が入っていたそうです。とんでもない熱量ですよね。
発売前からかなり人気が過熱気味だったということが分かります。
矢野経済研究所のデータやゴルフショップへのヒアリング結果によると、過去10年に発売されたドライバーの中で、発売初週でこれだけ売れたドライバーはないということなんですよ。しかもダントツの売れ行きです。
発売初週に限って言えば、ステルスは日本のゴルフ史上に残るドライバーになっていると言っていいと思います。
ステルス自体はぼくの評価で言うと、低スピン性能は高くて、ヘッド体積は460ccありますけど、見た目はシャープです。決してやさしいモデルではないと思います。
3ヶ月や半年経ったときに、使いこなせないゴルファーがたくさんいるんじゃないかと言う人が一定数いるんですけど、その可能性もある気がしますね。
あまりにも発売前から注目度合いが過熱気味で、クラブの性能、機能を度外視で買ってる人が多いというのが今のところの傾向です。
ぼくも打たずに注文しちゃったから一緒なんですけどね(笑)
なぜこんなに発売初週から空前の成功をおさめたかというと、チタンに代わる新しい素材としてカーボンフェースを採用し、そのカーボンウッドが新しい時代を開くんだ、というテーラーメイドのストーリーがゴルファーにとって魅力的に映ったからなんです。
グローバルモデルで初めてカーボンフェースを採用したというそのリスクは決して小さくなかったはずです。昔から「カーボンは音が・・・」、「カーボンは売れない」というジンクスもありましたし、その中であえてリスクを負って新テクノロジーを搭載したテーラーメイドの戦略書きみたいなところが強いんじゃないでしょうか。
ものすごいワクワク感を醸成したと思います。
現在では試打室や計測器、フィッティングという充実した環境が広まっているにも関わらず、ゴルファーは必ずしも自分に合うクラブを選ぶという観点では選んでいない。自分の合うものを選びたいと思っている人は実はそんなには多くない。(この連載を読んでいる方はそうではないかもしれませんけどね(笑))
じゃあ、ゴルファーは何に興味を示すのでしょうか。
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【ゴルファーが興味を示す3つの要素】とは
- ①斬新なテクノロジーがある
- ②カリスマ性のあるプロが驚くような結果を出す
- ③クチコミ
①斬新なテクノロジーがある
過去10年でぼくが最もエポックメイキングだったなと思うドライバーは、キャロウェイの「GBB EPICドライバー」です。大ヒットしましたよね。過去10年の発売初週の売り上げは3位でした。
圧倒的に斬新なテクノロジーがあって、「なんかやってくれそうだな」と思うとゴルファーは興味を示して購買にいたるわけです。
②カリスマ性のあるプロが驚くような結果を出す
ステルスが発売されるまで、発売初週の売り上げが過去10年でもっとも売れたドライバーは何か、みなさんわかりますか?
正解は、2018年のM4です。
これはなぜかというと、ツイストフェースが搭載されたというのももちろんありますけど、何よりも年明けのセントリートーナメントオブチャンピオンズでのダスティン・ジョンソンのミラクルショットが大きく影響しています。
最終日に434ヤードもあるパー4をドライバーで打って、ホールインワンするんじゃないかっていうくらいピタッとつけるという、とんでもないショットがすごく話題になりましたよね。
ものすごくインパクトがあったので、覚えてる方もけっこう多いんじゃないでしょうか。
物が売れるプロってほんとに一部で、限られたプロが限られた活躍をすると物が売れる、物を動かせるんです。
「タイガーがツアー選手権で復活優勝した、マスターズで優勝した」というとボールが売れたり、「松山英樹選手が契約外のドライバーを使って優勝した」となると物が売れる。
そういうことが起きるんですね。
③クチコミ
ラウンド中ゴルファーは4人いるので、1人が話すと残り3人に広まる、なんてよく言いますよね。
クチコミで広まると人気になるというものが毎年何かしらあります。
PINGのG410、G425なんかはもちろん初動もよく、注目度も高く人気もありましたけど、「PINGがいいらしいよ、やさしいらしい、曲がんないらしい」というクチコミが多かったように思います。
どちらかというとコア層じゃなくてライト層といった、ゴルフの情報を普段からそんなにとっていない人にも届いたというところがあったんです。
クチコミで売れるケースの特徴はロングセラーが多いですね。2、3年ぐらいずっと売れ続けている、ということがあります。
話をまとめると、最初にお伝えした「3つのステルス」、覚えてますか?
そのうちのひとつに、「テーラーメイド発のステルス」というのがありましたよね。
「新時代のドライバーが生まれるぞ」というストーリー、そしてなんかやってくれそうだなというテクノロジーがあったから、そこにコア層が一気に飛びついた、というのがこのステルスフィーバーの本質じゃないかと思います。
ゴルファーは必ずしも自分に合ったクラブという観点では選んでいなくて、ワクワク感、期待感を持って道具を購入しているということなんです。
良し悪しは別として、そういう側面が非常に強いと思います。
「俺はこれを買う、この選手が好きだからこれを買う」というようなクラブ選びに個性があった時代があるんですけど、今はいいものや人気なもの、失敗しないものというところに意識、関心が向かいがちなのかなと感じますね。
だいぶ状況が変わってきたな、というのがぼくの率直な印象です。
評価が分かれがちな問題に対するぼくの考え
ステルスの評価が意外と分かれ気味になっていることについて、僕の考えをお話したいと思います。
1つ目は、ステルスプラスについて「つかまらない」、「つかまる」という評価が分かれる問題。
基本のヘッド特性はつかまらないフェードバイアスで、いきなり球が右にポーンと出るような傾向がある気がします。
ただ、コンパクトで振りやすく、フェースの向きをコントロールしやすいところがあるんです。だから、自分でつかまえにいける人だったり、普段から大型ドライバーを使ってる人だと重心距離が長くて重心が遠いヘッドと比べると、ヘッドが回りやすいという側面があります。
ヘッドが回りやすい人はつかまるだろうし、なんとなくヘッド特性で振ってしまうと右に行きやすいです。
もう一点は、「スピンが多い」、「少ない」という評価が分かれる問題。
チタンのときよりもフェース面積が拡大していて、低重心にしてあることによって基本的には低スピン性能のあるヘッドだろうと思います。
ただ、面積が広いので、下めに当たったり開いて当たったりヒールで当たったりしたときにスピンが増えてしまうような感じがひょっとしたらあるかもしれないですね。今までにないフェース面の重心位置なので、今までにはないことが起きるのかもしれません。
打ったときに開いて当たるとスピンが増える、閉じて当たるとスピンが減る、というその幅が既存のドライバーと比べるとちょっと広いようです。
これは、カーボンフェースだからというのもあると思いますけど、基本的にはフェース面積と重心の問題が大きいと思います。
打点とクラブ軌道、入射角で結果が変わりやすいクラブなのかな、という感じがしますね。
ステルスビッグウェーブに乗りつつも、いろんなドライバーをキャッチアップして楽しもうじゃないか、というのが今回のお話でした。
ぼくの現時点でのステルス評価の話や、各種メーカーからの期待のNEWドライバーについても話しています。
詳しくは動画をチェック!
コヤマカズヒロ
児山和弘。1974年生まれ。学生時代には富士桜カントリークラブなどでアルバイトを経験。中古ゴルフFCチェーン「ゴルフパートナー」の立ち上げに参加、以後、ゴルフ業界に。2005年に「39ゴルフ」(アーリーバードゴルフ)設立。用品販売を行いつつ、オリジナルブランド製品を開発。2012年、フリーに転身し、ゴルフ用品からツアー情報まで、幅広く執筆するゴルフライターとしてゴルフトゥデイやゴルフサプリといった各種ゴルフメディアなどを通じて活動を開始。2013年、オウンドメディアの運営代行業を主業務とするメディアライトを設立。2018年にはYoutubeチャンネル「試打ラボ しだるTV」を開設。
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