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USツアープロから学ぶとばしのテクニック『ジャック・ニクラス編』

30年前とばしのテクニック取材を振り返る Part1【ゴルフトゥデイ創刊600号記念】

2022/04/12 ゴルフサプリ編集部

ゴルフトゥデイ創刊号

ゴルフトゥデイ創刊号をゴルフサプリでご紹介する企画。30年前に掲載されたUSツアープロのジャック・ニクラスへのレッスンを取材して記事にしました。創刊号当時の編集長のコメントとともにお届けします。

GOLF TODAY本誌 創刊号/35~37ページより

ゴルフトゥデイ編集長が当時を振り返る

日本のプロツアーでは練習日にプロに依頼してレッスンカットを撮影したり、取材もするのが通常だが、PGAツアーでは、試合中にプレーヤーに何かをやってもらうことは基本的にはない。それが常識となっていて、レッスンページを作成するときは、別の日に別のコースを取っての撮影となります。したがって掲載したスイングの連続写真はかなりグレーな撮影だった。

それでも最新のドライバーショットの連続写真を創刊号に掲載して読者にとどけたいという思いでのトライでした。

ニューヨーク在住のカメラマンのカズ高橋と太陽光線の向きとしてベストのティーイングエリアに陣取って、練習ラウンドする選手に次々と声をかけていった。多くの選手は「OK!」とか「シュア!」「ノープロブレム」と言ってくれてホッとした。しかし一人だけはっきりと「NO!」と言ったのがボビー・ワドキンス。日本ツアーの太平洋クラブマスターズにも出場し優勝したこともある選手。気難しくて、変わり者ということは知ってはいたが、まさかの対応でギクリとさせられた。

しかしそばにいたボランティアのおじさんが、ボビーが去っていった瞬間に「スチューピッド!」といって親指を下に向けて我々にウインクをくれた。それで我々も笑顔にもどることができた。

また、ジャック・ニクラスは本当に威厳と貫禄があり、遠くにいてもわかるくらいだった。そのジャックにもおそるおそる声をかけたのだが、彼は何も反応しなかった。そこで咄嗟に「サンキュー!」と勝手に言って、ことなきを得た次第。ジャックは一言も発せずに我々を振り向きもせずにフェアウエイに向かって歩き出した姿は、これまた格好良くて、他の多くのプレーヤーとはまったく違う空気をまとっていた。

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ゴルフトゥデイ創刊号

創刊号の記事内容を覗いてみよう

30年前のゴルフトゥデイ創刊号の実際の記事内容です。あくまでも過去のもので、現在は販売終了しているものも多数あります。30年前の文章、写真をご覧いただいてコンテンツとして楽しんでいただければと思います。

ジャックニクラス Jack Nicklaus

ダウンスイングで左カカトを外側に踏みだすことによって力強いドローボールが打てる。

ゴルフトゥデイ創刊号

全盛期のA・パーマーとJ・ニクラスは、なにかと比較された。たとえば使用クラブだ。パーマーはロフト12度のドライバーで、ニクラスは9度。パーマーは地をはうような低いショットを放ち、ニクラスは高い弾道のキャリーボールを持ちダマにしていた。なぜ、ロフトの少ないドライバーで高く、遠くにとばせるのか。

「ニクラスのパワーゆえだろう」という答えは間違っている。それをいうなら、パーマーのほうが、よほどパワフルではなかったか。しかも、ロフトのあるドライバーを使ってもいた。

正解は、スイングプレーンにある。

これがアップライトなほど高い弾道になりやすく、フラットなほど低くなりやすい。
当時のニクラスは極端とも思えるほど、アップライトにクラブを振っていた。現在は、体力の衰えをカバーするために全盛期よりはフラットに改造しているが、それでもまだ十分にタテ振りを守っている。

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全盛期よりフラットに改造しているがアップライトなスイングがニクラウスの特徴だ。
ゴルフトゥデイ創刊号
トップ・オブ・スイングで右脇を開ける“フライングエルボー”とテークバックの始動でアゴを右にねじる“チックバック”がタテ振りを容易にする。

ニクラスといえば、トップ・オブ・スイングで右脇を開ける“フライングエルボー”とテークバックの始動でアゴを右にねじる“チンバック”で知られている。どちらもタテ振りスイングにつながる動きだ。

チンバックは、こうすることで左腕と左肩の通り道を広げる。より遠くにより深い回転でクラブヘッドに最大円弧を描かせようという狙いだ。さらにもうひとつ、これが、タテ振りと大きく関係しているのだが、アゴを右にひねることで、肩のタテ回転を誘導しているのだ。ちなみに、頭を右に傾けると、左肩は高い位置のまま回転し、インサイドすぎるバックスイングになりやすい。逆に頭を左に寝かせると、今度は左肩が落ちてアウトサイドにクラブヘッドが上がっていく。ニクラウスのチンバックは、顔全を右に向けるから、頭が傾くことはない。

肩をタテ回転させることで、アドレスでの左手甲の向きを変えることなく、テークバックしていくことができる。この動きが、シャフトを立てる。ニクラスは、右ヒジのことは意識していない。

「できることなら、右腕をなくしてしまいたいと何度思ったことか」
とさえ、いっている。

シャフトを立てたクラブを、右手は持っているだけ。すると、右ヒジは自然に右脇から離れる。無理に右ヒジを絞ろうとすれば、せっかく立てたシャフトが寝てしまう。そう、フライングエルボーは、意識した動作ではなく、シャフトをたててバックスイングした結果なのである。ここで、面白い角度から、もうひとつのフライングエルボー分析を試みたい。

ゴルフトゥデイ創刊号
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後方からのトップ・オブ・スイングに注目してもらおう。けっして、ガバッと開いているわけではない。ジャンボ尾崎が、復活への糸口として発見したのが、この角度からのニクラスのトップ・オブ・スイングであった。

右ヒジからグリップまでの角度と、上半身の角度が、ピタリと一致している。これこそが、右手を意識しなくても自然に、しかも、ボールに対して最もパワーをロスすることなく働かせるコツ。これよりも、右ヒジが上がればスライス。

グリップ位置は同じで右ヒジが下がった形になればフックになる。あるいは、ストレートに打っていくには、ダウンスイングで修正しなければならない。
「この角度こそ、ボディターンによるレベルスイングのカギだね。体をひねり、戻してフルターン。余分な動きは、すべて排除できる」とジャンボはいう。
実際、ジャンボのトップ・オブ・スイングを後方から見ると、ニクラスの角度とピタリ一致する。

シャフトを立てて使っていることをダウンスイングでも忘れてはならない。ここで右ヒジを絞り込もうとすれば、たちまちシャフトは寝てしまいインサイドからボールをとらえることになる。ニクラスは、グリップを最短距離でインパクトの位置まで振り下ろす。右ヒジは、内側に絞り込むのではなく、真下に下ろす感じ。タテ振りゆえのダウンスイングではある。この連続写真だけではわからないニクラスの高等テクニックがある。

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全盛時代のニクラスは、ドライバーで100ヤードの距離差を打ち分ける技術を持った男ともいわれた。スイングの大きさを変えることなく、230ヤードから330ヤードを打ち分けることができた。

最大の飛距離を叩き出そうとするとき、いったいどんな方法をとっていたのか。ニクラス自身は、ひと言で片づけていた。

「ほんの少しフェースをかぶせるだけ」
あとは、普段と同じスイングでドローボールとなり、最大限の飛距離を得られるというのだ。ジャンボは、この説明に首をかしげていた。

「もっと何かがあるはずだ」と。そして、またもや発見したのだ。本当に飛ばそうとするとき、なるほどフェースをわずかにシャットにするだけで他の部分は、アドレスでは変わらない。テークバックも、トップ・オブ・スイングも変わらない。

ただ一点、変わるのが、ダウンスイングに移行する瞬間の左足カカトの着地点であった。アドレスでの位置よりもわずか外側にカカトを踏み出していく。これで、ダウンスイングからのスイングプレーンは、アドレス時よりも少し右を向くようになる。

本人は、いつもどおりにクラブを振っているつもりでも、実際は、アドレスで設定した飛球線よりもやや右に向かってのスイングになる。あらかじめかぶせておいたフェースは、この動作によって本来のターゲットに正対する。

つまり、ダウンスイングからのスイングプレーンどおり、本来のターゲットよりも右に飛び出していったボールは、アドレスでの目標地点に戻ってくるドローボールになるというわけだ。

ジャンボは、軍団メンバーに、この秘訣を教え、徹底的に練習させた。もちろん、自らもニクラスの飛ばしワザを取り入れた。ジャンボ復活の陰に、ニクラスの連続写真と、本物のスイングがあったのである。

ゴルフトゥデイ創刊600号企画とは

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