キャロウェイ『E・R・C ボール ボールド レッド』は早い者勝ちだが打つ価値あり!!
キャロウェイの『E・R・C ボール ボールド レッド』をコースに持ち込み、ロマン派ゴルフ作家が検証する!
キャロウェイの『E・R・C ボール ボールド レッド』
『E・R・C ボール ボールド レッド』は、コスパ最高で、高機能、使って楽しい!
撮影/篠原嗣典
『E・R・C』は飛距離性能が高いボールという意味だ!
キャロウェイは、2019年秋に『E・R・C ボール ボールド レッド』を発売した。
3年振りのモデルチェンジで、大幅に高機能になったのにお値段は据え置き。キャロウェイ初のマットカラーボールということでも、話題性は十分だったが……
翌年に始まったコロナ禍で、当初、日本のゴルフ業界は自粛ムードで静かになってしまって、『E・R・C ボール ボールド レッド』は、ドーンと売れるタイミングを逃した。結果として、知っているゴルファーだけが評価して、使い続けてきたというボールになっていたのである。
インプレ=新製品ということで、『E・R・C ボール ボールド レッド』は試打しないまま時間は過ぎた。
しかし、先日、ゴルフショップの取材をしていて、雑談中に『E・R・C ボール ボールド レッド』が話題になったのだ。
「近年でいうと、E・R・C ボール ボールド レッドが、機能だけではなく、コスパとか面白さまで含めた総合的な成績表ならぶっちぎりの一番ですよ。供給がイマイチだったのが足を引っ張りましたが、もし、コロナがなかったら、記録的な大ヒットボールになったと思います」
こんなふうに聞かされて、注目しないわけはない。別の関係者に聞いてみると、異口同音に、“隠れた悲劇の名器ボール”と言う。
新製品ではないけれど、急遽、試打をすることにしたというが、経緯なのである。
『E・R・C ボール ボールド レッド』は、“飛びの力、バージョンアップ 初展開のボールドカラーも楽しい!”というコピーだ。
構造は3ピースで、大型のコアでぶっ飛ばすというテクノロジーである。
一昔の前の高性能3ピースを彷彿させる。
熟成された技術を詰め込んだオールマイティーな大型コアで勝負するというのは、一見、工夫がないと思われがちであるが、過去のボールの歴史を振り返ると、確実に成果を出すハウツーとして王道だったりもするのだ。
見た目が、ゴルファーを楽しませるという機能になっている。
マットな赤の発色はきれいだし、パッケージはゴールドなのだ。ショップで箱に入っているのを見ても、思いっ切り目立つし、コースでも遠目からでも主張が強いことは想像できる。
さらに、ボールナンバーは3桁の111、333、555、777だし、大きなアライメントラインもプリントされている。
この手のボールで、きめ細かく、ちょっとずつ、特別感を選出しているという意味で『E・R・C ボール ボールド レッド』に賞賛の拍手を贈りたい。
ゴルフボールは、大まかに価格帯に二つに分類される。高価格と低価格だ。
近年はそれが4つに分かれる傾向があるという。
超高価格は、販売価格で1個600円以上。高価格は、1個500円程度。中価格は、1個300円程度。低価格は1個200円以下。
『E・R・C ボール ボールド レッド』は、中価格のボールだという。
中価格ボールは、ロストボールや低価格のボールからは卒業したいが、各メーカーのメインブランドのボールを使うまでのレベルではない、と考えるゴルファーが中心に使うという。
僕は面白がって、低価格のボールのインプレを機会があればやるように意識しているのだが、実は、中価格のボールとの区別があるとは考えていなかった。
とはいえ、ショップの現場からすると、低価格ボールと中価格ボールは全く違うものらしい。
低価格ボールは、「安かろう悪かろう」が許される雰囲気があるが、中価格ボールは「機能で選ぶので、結果が出ることを求められる」というのだ。
改めて、『E・R・C ボール ボールド レッド』を見てみる。
キャロウェイにとって、『E・R・C』は飛距離にこだわったブランドであり、ボールのシェアを伸ばしているキャロウェイにとって、負けられないゾーンを担当しているのが『E・R・C ボール ボールド レッド』だということがわかってくる。
早速、コースに持ち込んで、『E・R・C ボール ボールド レッド』をじっくりと試打をしてみた。
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中価格ボール『E・R・C ボール』が使えるゴルファーはラッキーだ!
『E・R・C ボール ボールド レッド』をコースで打ってみた。1ホールで、「このボールは、もっと売れるべきだ」と言ったショップ関係者たちの気持ちが理解できた。
実に良く出来ていて、完成度が高いボールだったからだ。
まず、マットレッドのカラーは落ち着いていて好感を持った。
そして、手触りが面白い。しっかりと、ざらつきがあるのだ。マットカラーのボールでつるつるした表面というのは逆に珍しいが、ポケットの中で触ってもわかるぐらいの特別感があった。もちろん、ショートゲームでのスピンがかかりそうなイメージが湧く。
『E・R・C ボール ボールド レッド』の特徴である3桁の番号も、アライメントラインも、手が込んでいて、安いボールには見えない。超高価格ボールの気遣いみたいなものを感じる。
打った打音は小さめ、音質はパシッとした濡れた音。打ち応えは、ウッドからアイアンまでやわらかい。ただ、ショートゲームは固めになる。
昔のボールみたいで、少し懐かしさを感じた。
弾道は中弾道。そして、直進性が高い。
驚いたのは、アイアンのスピン性能の高さだ。ツアーボールと変わらないぐらいのスピンがかかる。
直進性能も、ウッド系では強いが、曲げようとすれば、やや鈍いけれど、しっかりと曲がる。
飛距離性能は、強烈で、高価格ボールと互角に戦える。
トップレベルに飛ぶボールと、ほぼ同等の飛距離が出る。
コストパフォーマンスで、飛距離性能を比較してグラフ化したら、『E・R・C ボール ボールド レッド』は、中価格ボールの中で、最も飛距離性能のコスパが良いボールになると思った。
これは、一概に弱点とは言えないが、ショートゲームになると、カチッとした硬さを感じるようになるのは、ちょっと気になった。ショットについては、繊細にチューニングした分、ショートゲームについては、少し雑になって犠牲になっている可能性を感じさせる。
まあ、ショートゲームはカチッとして硬めのほうが、上手くいくというゴルファーもいるので、注意事項だと考えれば良い。
『E・R・C ボール ボールド レッド』は、ゴルファー心理を知っているキャロウェイが作った総合力で勝負できるボールである。
当然だが、コストパファーマンスは素晴らしい。
ある程度のスコアまでであれば、高価格ボールと『E・R・C ボール ボールド レッド』で、ほとんど差がないスコアでプレーできるはずだ。
『E・R・C ボール ボールド レッド』が、まあまあ安い値段(ダースで4000円を切る市場価格)で手に入る国でゴルフをしていることは、本当にラッキーかもしれない。
ただし、運命のイタズラがありそうなので、一つだけ注意して欲しい。
高価格ボールは、約2年ごとにモデルチェンジするが、中価格ボールや低価格ボールのモデルチェンジのサイクルは、それよりも長い。
『E・R・C ボール ボールド レッド』は、前モデルから3年でモデルチェンジしている。
2019年秋の発売から、今年の秋で3年になるので、モデルチェンジする可能性があるのだ。
つまり、『E・R・C ボール ボールド レッド』を購入したくとも、手に入らない可能性があるのだ。
今回、試打前に、少し調査をしたが、市場では欠品しているショップが多かった。
ボールなんて、どうでも良い、という人がいる。中価格ボールの『E・R・C ボール ボールド レッド』の性能を証拠として、自分の主張が正しかった、と胸を張るかもしれない。
しかし、それは間違った主張だ。
例えば、僕は『E・R・C ボール ボールド レッド』を絶賛するが、このボールをエースボールにしてゴルフをすることはあり得ない。理由はラウンドで少なくとも2打ぐらいは、平均スコアが悪くなることが予想できるからだ。
ショートゲームで、ボールが果たす役割は平均スコアが良くなれば良くなるほど増える。
その部分で、好みに合わなかったり、自分を助けてくれなかったりすれば、毎ホール1打悪くなる地獄だってあり得る。
ツアーボールは、この部分について、特色を出し、機能性を追求している。だから、ツアープレーヤー用のボールなのである。
『E・R・C ボール ボールド レッド』は、ツアーボールではないが、実に面白いボールで、もっと早く知って、試打して、インプレすべきだったと猛省した。
安いだけではなく、価格よりも明らかに優れている性能を持っているボールだ。そして、何よりも、使用することで楽しい気分になれるところが素晴らしい。
見つけたら、チャンスが来たと思って、試してみることを強く、強くオススメする。
篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてでビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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