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ゴルフボールのカバーが凸凹している理由、知ってますか?

ゴルフそもそも調査部 vol.3【今回の調査テーマ|どうしてゴルフボールにはディンプルが付いている?】

2022/08/12 ゴルフサプリ編集部

ゴルフボール

現代のゴルフギアは、先人の創意工夫が積み重ねられてきたもの。時に感じる疑問や「なぜ」「どうして」を、それらを形作ったきっかけやエピソードで振り返ってみよう。今回の調査テーマは「ゴルフボールのディンプル」だ。

GOLF TODAY本誌 No.602/138〜139ページより

表面が傷つくと飛ぶようになるガッタパーチャ

1846年に史上初のゴム製ボール「ガッタパーチャ」が英国のペーターソン兄弟により発売された。最初は表面がすべすべで、塗装もしない褐色のまま売り出されたが、新しいうちはあまり飛ばず、急角度でドロップすることが多かったという。ところがアイアンで打ち損じて、表面に傷が増えるとよく飛ぶようになった。

ガッタパーチャは熱湯に浸すと軟らかくなり、平らな板の上で練りまわすと簡単に傷を修復することができたが、それを行うとまた飛ばなくなったらしい。それに気づいたセントアンドリュース在住の馬の鞍を作る職人が、先が細い刃となった鉄槌で叩き、ボールの表面全体に網の目を刻み付けることを始めたところ、評判を呼んで依頼が殺到したという。

これが、現代の「ディンプル(えくぼ)」につながる「メッシュ(網の目)」の「ニックス(刻み目)」のスタート地点だ。ガッタパーチャ以前の羽毛球「フェザリー」や木製の球には〝表面加工〟という発想はなかった。

「ディンプル」の始まり

突起状のブランブル(ピンプル)

ガッタパーチャ時代には「ディンプル」はなく、逆に突起状の「ブランブル」(ピンプル)が表面を覆っていた。網目状の「メッシュ」が進化したものだった。※イラスト:INTERNATIONAL ENCYCLOPEDIA OF GOLF より

現代では「ディンプル」が空力特性に大きく影響し、キャリーを伸ばすことは常識となっているが、高速撮影など検証技術が未熟な20世紀半ばまでは手探り状態。そのため、ガッタパーチャ時代に凹んだ「ディンプル」は登場せず、逆の突起状の「ピンプル(にきび)」が採用されていた。
用語としては「ディンプル」登場後に、対称的に「ピンプル」と呼ばれるようになったが、ガッタパーチャ時代はもっぱら「ブランブル(野イチゴ)」と呼ばれていた。

「ニックス」は金型で付けられるようになり、量産化が進んだが、その際「メッシュ」と「ブランブル」の金型は作りやすく、「ディンプル」は技術的に難しいということもあった。

20世紀初頭に糸巻き構造の「ハスケルボール」が発明されると、飛距離性能が大幅にアップ。これも当初は「ブランブル」で覆われていたが、1905年に英国レイセスターのウィリアム・テイラーが空力を考慮した「ディンプル」の発明特許を取得後、数年の間に「ブランブル」を駆逐してしまった。「多層構造+ディンプル」という現代ボールの原点は、ここにあると言えるだろう。

ディンプルが弾道設計を大きく変える

20世紀後半には、糸巻き3ピース構造とソリッド2ピース構造のボールが普及し、ゴム系のバラタカバーと樹脂系のサーリンカバーが主流となった。
製造方法による性能の誤差は激減し、ボール初速やスピン性能も安定する中、空力特性を左右するディンプル設計は、より重要視されるようになっていった。

ポララボール

『ポララ』ボールは、構造や素材を変えて現在でも発売されている(非公認球)が、「ディンプル設計で曲がり幅を抑える」というコンセプトは変わっていない。

1970年代に、ディンプル設計で曲がり幅を抑えるという謳い文句で大ヒットした『ポララ』ボールが登場する。

ディンプルの深さやサイズを細分化し、特殊な配列を採用したものだったが、その特許とルール公認などをUSGA(全米ゴルフ協会)と裁判で争い、一躍注目を浴びた。
結果、ルールでは非公認となったが、特許権等でUSGAが敗訴。約140万ドルの賠償金を支払った。

この訴訟騒ぎが、各メーカーにディンプルの大小と配列で、浮力や揚力、空気抵抗を変化させるという考え方を進化・発展させるきっかけになったようだ。

1980年代に入ると、弾道検証技術の進化とともにディンプル開発が加速する。日本ダンロップは正12面体をモチーフとした「DDH(ドデカヘドロン)」ディンプルパターンを発表。ブリヂストンスポーツは『アルタス』に「二重ディンプル」を採用。他にも六角形ディンプルなども登場した。

ただ、当時は塗装技術などの問題で、設計通りの効果は期待できない面もあったようだ。

進化を続けるゴルフボール

  • キャロウェイゴルフから2002年に発売されたHX

    キャロウェイゴルフから2002年に発売された『HX』は六角形ディンプル。この元祖を辿ると、1971年製のユニロイヤル『プラス6』に至る。ジョン・ニコライデイズ博士が開発。

  • スリクソンZスターシリーズ

    塗装技術、クリアコーティングの進化で、ディンプルのエッジまで設計通り仕上げることが可能に。スリクソン『Zスター』シリーズはコーティングの厚みまで整えている。

21世紀の現在は多層ソリッド構造+ウレタンカバーが主流。塗装技術も格段の進歩を遂げ、コンマ数ミリの精度を実現できるようになっているという。
ディンプル設計はスーパーコンピュータによる弾道シミュレーションとともに、更なる開発が進んでいる。

ただ、ディンプルの精度が上がるほど、ミスヒットなどによるカバーの傷でパフォーマンスがガクッと下がるという危惧もありそうだ。
その点では、ウレタンカバーはバラタやサーリンよりかなり優秀で、その粘性で衝撃を吸収し、復元しやすい特性を持っている。

耐久性にも優れたウレタンカバーと更なるディンプル設計の進化に、期待したい。

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