タイガー・ウッズがPGAツアー改革に乗り出した原動力!?1997年にアーノルド・パーマーと交わした約束
LIVゴルフ対抗のためのPGAツアー選手会会合にも出席
写真/R&Aオフィシャル
ゴルフファンであれば、この春に勃発したPGAツアーとグレッグ・ノーマンが興した新ツアー「LIVゴルフ」の対立はご存じでしょう。
PGAツアー側の姿勢は強硬で、LIVゴルフでプレーした選手のメンバー資格停止を執行。すると、当該選手の一部が裁判所に訴訟を起こす事態にまで発展しました。
その一方でPGAツアーは、高額の契約金と高額賞金競技の開催で有力・有名選手の獲得を進めるLIVゴルフに抗して、トーナメントの賞金総額やボーナスの給付額を大幅に拡大。両者の対立はエスカレーションするばかりです。
選手会の中でも圧倒的な存在感を見せたタイガー・ウッズ
解決の糸口が見えぬまま、PGAツアーの2021-22年シーズンは8月28日に終了。
9月15日から新しいシーズンを迎えることになるのですが、LIVゴルフはその間隙を衝いて9月2日~4日にシリーズの第4戦をアメリカのボストンで開催。
そこには、PGAツアーから新たに複数の有力選手が加わると伝えられています。
その本命は今年の全英オープンを制したキャメロン・スミス。また、松山英樹の名前も強く噂されています。
こうしたLIVゴルフの攻勢にはPGAツアーのミッショナー=ジェイ・モナハン氏はもちろん、プレーヤーにも不快感を隠さないものが大勢います。
LIVゴルフの「LIV」の意味って知っていますか?
いま、世界の男子ゴルフツアーを揺るがしているのが、「LIVゴルフ・インビテーショナルシリーズ」です。改めて言うまでもなく...
PGAツアーのプレーオフシリーズの第2戦「BMW選手権」の開幕直前(8月16日)、ロリー・マキロイらLIVゴルフに反発するトッププレーヤー(報道では22人)がミーティングを行いました。
そして、そこにタイガー・ウッズが遠路、フロリダからプライベートジェットに乗って、加わったのです。PGAツアー選手たちには心強い味方です。
そのミーティングで何が話されたのか。正式には発表されていませんが、複数メディアが伝えるところでは、PGAツアー内の新シリーズとして、トップ60人だけが出場できる、賞金総額2000万ドル、予選カットなしのトーナメントを年間18試合開催するという案。
さらには、ゴルフコースではなくスタジアムでのワンデートーナメントのシリーズという企画も提案され、それらは選手たちの承認を得て、既にコミッショナーに提出されたそうです。
これらのアイデアの立案は、タイガーが旗振り役になっているようです。マキロイは、ミーティングにおけるタイガーの存在は絶大で、
「彼は、私たち全員が尊敬して来たヒーロー。彼の声は、ゴルフの世界で誰よりも強く響く。彼の役割は、私たちが進むべき方向にナビゲートすることだ」と語っています。
1997年、アーノルド・パーマーにPGAツアーの将来を託されたタイガー・ウッズ
この話を聞いて思い出したのが、1997年シーズンのPGAツアーアワードのことです。
その年、タイガーは賞金王となり、「アーノルド・パーマー・アワード」を受賞しました。
アワードの式典で、タイガーはアーノルド・パーマーから直接、トロフィーを授与されたのですが、その際にパーマーから託されたことがありました。
そのときの様子をフロリダの地元紙「タンパベイ・タイムズ」は、「パーマーはタイガーに、ゴルフというゲームを守ることを頼んだ」という見出しで次のように伝えています。
アーノルド・パーマーはPGAツアーの表彰式で、「ちょっと待って」と壇上、タイガーの歩みを止めた。そして、少し驚いた様子のタイガーに、「君に言いたいことがあるんだ」と言った。
パーマーは、まずPGAツアーの今日の成功について話した。
1958年に100万ドルだった賞金は、今年は9500万ドルに達している。
「大金のためにプレーしている君たち」とパーマーは、他の30人の受賞プロに向かって言った。
「ゴルフというゲームの健全性と伝統を守る義務があることを忘れないでくれ」
そして、タイガーの肩に手を置くと、こう言った。
「ここにすべてがある。責任は君の肩にある」
これにタイガーがうなずくと、
「ゴルフを守ってくれ。ゴルフは美しいものなんだ」
出席した30人のプロたちは、パーマーの言葉に長いスタンディングオベーションで応えた
タイガーはゴルフの健全性と伝統を守ろうと、敢えてPGAツアーに改革に自ら動き出したのだろうか。パーマーに託された思い、パーマーとの約束を守るために。
世界中で話題になったタイガーとパーマーが出演したゲームソフトのCM動画。この2人の絆は深い。
小関洋一
出版社、編集プロダクションを経て、フリーランスのライターに。テレビ誌・トレンド誌などで、主にスポーツに関する記事を執筆。テレビ、ラジオのスポーツ番組の構成も手掛ける。現在はゴルフ誌を中心に内外の最新トレンドを伝えたり、ゴルフ場のレポートを担当している。東京ゴルフ倶楽部の年史製作に携わっており、ゴルフ史に関する執筆機会も多い。
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