ゴルファーとしてだけでなく、一人の人間として広がる可能性に目を向けて

可能性が広がり、選択肢が広がることは素晴らしい。

その中で、いかに自分を見失わないように踏ん張るか。若くして結果を出した者ほど、雑音に悩まされることは増えるが、その中でもしっかり自分を持ち続けることはとても大切だ。

8月の全米女子アマ優勝者として、馬場が初めて出場した住友生命Vitalityレディス東海クラシック。世界女子アマ最高峰の戦いで圧勝した大器の凱旋には当然、たくさんのギャラリーがつめかけ、そのプレーを見つめた。

馬場本人も、見られることを楽しみ、応援の声に興奮したというが、残念ながらプレーぶりは今一つ。絶好調だった8月に比べるとヘッドスピードも大きく落ち、ドライバーの飛距離も20ヤード近く減っている状態で予選落ちした。

アマチュアの試合とプロの試合は大きく違う。しかも、海外遠征が続いた疲労もあって、体重が6キロも減っているという状況だった。それでも馬場は

「悔しい気持ちよりも、すごく楽しかったし、いい経験ができました」

と前向きだった。 

全米女子アマ優勝によってJGA特別承認枠が与えられた日本女子オープン(29~10月2日、千葉・紫CCすみれC)に向けて、現在は調整を続けているはずだ。

日本でプレーしている日本のジュニアゴルファーのトップクラスの多くはプロ志望。アマチュア時代から、出られればプロの試合に出場し、高校卒業と前後して日本でプロになることを考えている者がほとんどだ。

畑岡奈紗のように、最初から米ツアーに挑む者もいるが、日本で実績を残してから、という場合もあれば、最初から海外への気持ちがあまりなく、日本でのプレーに専念する者も多い。大学に進学するケースもあるが、トップレベルであればあるほど、ゴルフのため、ということが多いのが実情だ。

そんな中で、全米女子オープン、全米ガールズジュニア、全米女子アマ出場を選んだからこそ、馬場の世界は広がった。

現在、高校2年生。この先どんな進路を選ぶのか。全米女子アマ優勝後、日本ウェルネス高校から代々木高校に転校しているが、いずれも通信制で、ゴルフがしやすい環境ではある。

可能性は、全米女子アマ優勝で限りなく広がった。鮮やかな勝ちっぷりは全米の大学ゴルフ部関係者の目に留まり、スカラシップでの進学の誘いが数多く来るに違いない。

米国の大学に進学し、NCAAでプレーする道、日本ですぐにプロになる道、米国でプロの世界に飛び込む道、日本で大学に進む道、最後にプロゴルファーにならない道…。家族と相談することはとてつもなく多い。

ただ、進学する場合、日本の大学と米国の大学の大きな違いは、どれだけ勉強をするかというところにある。
大学にもよるが、ゴルフばかりしていればいいという傾向が強いのが前者で、しっかり勉強をして成績を出さなければ試合にも出られないのが後者ということになる。

馬場の前に全米女子アマに優勝した服部道子は、その縁もあってテキサス大学オースティン校に進学。
ゴルフチームのエースとして活躍したが、その一方で食事をする間もないほど勉強したことを打ち明けている。

「ゴルフは人生の一部。ゴルフだけが人生ではない」。

プロになって、苦しい時を乗り越えた後、こう考えて楽になったと言うプロゴルファーは少なくない。
ジュニア時代から、ゴルフ漬けの生活を送っていると、視野狭窄を起こしてしまうのも無理はない。
それでも、人生はゴルフだけではないことを、ぜひ、若いうちからわかって欲しいと、馬場だけでなく多くのジュニアや若いプロゴルファーを見るたびに思う。

全米女子アマ優勝で、米国の大学だけではなく、日本の大学、日本のゴルフメーカーを中心に多くの企業から、すでに馬場の元には様々な誘いが届いているだろう。
大学も、企業も、馬場にとっていいこともあれば、重圧をもかけるものだ。
自分の人生を長い目で見て、進む道を考えるのがいいだろう。

若い頃には、なかなか視野を広げて考えるのは難しいかもしれない。
それでも、ゴルファーとしてではなく、一人の人間としての可能性を広げることを考えて欲しいと心から思う。

アマチュアとしてもプロとしても、ゴルフとは長く付き合っていくことができる。メディアも含めて、周囲は結果を急がせるが、それはあくまで他人事だから。
無責任な声はスルーして、聞くべき話にだけ耳を傾けて、進路を選んでほしい。ときには「こんなはずじゃなかった」ということもあるかもしれない。
そんな時にはいくらでもやり直しができるはず。それくらい柔軟な気持ちでいれば、苦しみはすくなくてすむはずだ。

喜びも大きいが、苦しみもついて回るのがアスリートの宿命ではある。それでも、無限の可能性はゴルフの世界だけにあるわけではないことを頭のどこかに置きながら、自由にのびのびと人生を謳歌して欲しいと心から思う。