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どんなコースが良いコース?間違いだらけのコース評価の真相を究める!

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第42回

2022/11/09 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

ゴルフ場

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

写真提供/篠原嗣典

子どもなら許されるけれど、大人は少し恥ずかしいのは本音だから?

今から約20年前、僕はほぼ月一で親子ゴルフ大会を主催していました。当時、石川遼プロの影響で、ジュニアゴルファーブームみたいな雰囲気がありましたが、子どもをプロにするとかいう夢のお手伝いするのではなく、単純にゴルフの面白さを親子で味わう機会を提供することが目的のイベント。告知から数時間で定員になるような人気があった時期もありました。

「毎回、このコースで開催して欲しいです」
常連になっていた小学校5年生の女子ゴルファーからお願いされたことがありました。

親子ゴルフ大会は毎回会場を変えて開催していましたが、そのコースはバブル期に贅を尽くして作られたコース。お城のような豪華なクラブハウスが有名で、女の子の親子に大人気でした。

子どもは今も昔も、正直です。古いコースや、チープなコースは女性用の施設がオマケのような感じで、面積が小さかったり、使い勝手が悪かったりすることが珍しくありませんでした。豪華なクラブハウスは、それとは正反対に女性の施設が充実しているケースが多かったのです。

例えば、男性のお風呂はどこも大きなホテルの大風呂ぐらいの施設ですが、女子用のお風呂はその数分の1で、4人同時に入ったら、5人目は誰かが出るまで待たなければならないような規模だったりするのです。

それが同じようなスケールの大風呂があったり、パウダールームが女優ライト付きの鏡(鏡の左右に複数の明かりが付くようになっていて、顔に影ができない鏡)で、それも6台も並んでいたりすれば、子どもでなくとも好印象を持つというわけです。

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日本のコースランキングの問題点

「このコースは、一昨年クラブハウスを新しく建て直して名門コースになりました」
ずいぶんと前ですが、有名プロゴルファーが、トーナメント中継の解説で言ったことがありました。笑い話ではなく、真面目に褒め言葉としてそのように話したのだと思われますが、ゴルフコースに詳しいゴルフファンからは、全国に流れる放送で幼稚な知見を露呈させた怖い発言だと話題になったのです。

名門コースの定義は何か?ということもありますが、それ以前に、クラブハウスはゴルフコースとは別物であるという基本的な部分をわかっていないことが、どうかしている、と注目されました。

世界中にゴルフコースのマニアがたくさんいます。コースランキングなども権威があるものだけでもいくつもあり、毎年更新されています。

日本にもラインキングはありますが、欧米のもの、特に米国のランキングとは別次元のものになっています。

ゴルフコースへの知識量が圧倒的に不足していると指摘する見識者もいますが、最も問題なのは、日本のランキングはプレーしたことがないコースにも投票できるものが多いことです。プレーしたことがないコースの評価ができるわけありません。

また、旅行感覚でクラブハウスや食事なども評価項目に入っていることも残念なことなのです。先程も書きましたが、ゴルフコースとクラブハウスは別物です。

しかし、現実問題として、ゴルフを夢中でプレーしているゴルファーの多くは、ゴルフコースを評価する余裕はありません。
例えば、大スライスして右の林の中からなかなか脱出できずにグリーンの脇から出てきたゴルファーは、そのホールのフェアウェイからの光景を見ることができないわけです。

わかりやすく、誰でも同じように体験できるもの…クラブハウスや食事、ということになってしまっても仕方がないのかもしれませんし、コースの評価はハイレベルなゴルフができないとむずかしそうだし、相当に勉強もしないと無理そうだから知らないフリをしようという本音も見え隠れします。

どんなコースが良いコースなのか?正解はあるのか?

ゴルフ場

ゴルフは、色々な楽しみ方があることが人々を夢中にさせる要因の一つになっています。それらは、尊重し合うべきですが、基本はプレーするゴルフだということも事実です。
そういう中に、ゴルフコースへの知見を深めることに夢中になるゴルファーも、ごく一部ではありますがいます。

彼らが、良いコースだと評価するコースは、確かに、プレーする意欲を刺激する素晴らしいコースですが、一般的な意味で語られる良いコースとは違います。

バブルが崩壊するまでの日本のゴルフコース評価は、会員権相場が一つの基準にはなりました。購入金額1億円のコースと、100万円のコースでは、当たり前ですがステータスが違いました。1億円を超えるコースは、“億カン”と呼ばれて、良いコースの見本のように思われました。

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でも、プレーしてみれば億カンも100万円のコースもどちらも面白く、100倍の差はありません。

この頃、良いコースとして、多くのゴルファーに支持されるのは案外と単純なものだったのです。横幅が広く、池やOBなどのペナルティーがなく、平らで、グリーンも意地悪なところがないコースが受けたのです。

良いスコアが出るコースがみんな大好きなのです。
自分が良いスコアを出したコースの悪口は聞きたくないので、無意識に『そのコースは良いコースだ』と吹聴することになります。実際に、そういうコースの会員権は、そのステータスよりも高額になる傾向がありました。

どんなコースが良いコースなのか?このゴルフ談義は終わりがないと思っています。
小学校5年の女子のように、ピカピカのクラブハウスが最高、というものも、最高に美味しいハンバーグが食べられるというものも、ベストスコアが出たコースが一番というものも、スコットランドのリンクスを基準にした評価点が高いコースが良いという学術的なものも、そのゴルファーにとっては、正解なのです。

プロゴルファーが良いコースだと感じるコースと、100の壁と戦っているゴルファーが良いコースだと感じるコースは、違っていて当たり前です。それはどうプレーするかで、面白いと感じる要素は変化するからです。

とは言っても、例えば、景色を楽しむようなシーンであれば、ゴルフレベルとは無関係に良いコースという感性は共有できます。

しかし、紅葉の季節が最高の景観になるゴルフコースには、どの季節にプレーしたかで大きく印象が変わってしまうこともあります。

ゴルフコースの印象は、一期一会の要素もあるのです。ますます、良いコースの定義はむずかしくなります。

憧れはあくまでも恋にすぎず、触れなければ愛せない

ゴルフ場

「結局、良いコースというのは何なんですか?」効率良く知識を増やしたい意欲的なゴルファーほど、焦って悲鳴を上げます。

良いコースを知りたいという気持ちは大切ですし、知った上で、プレーしてみたいと考えるのも自然です。そういうことを繰り返して、ゴルフコース評価の知識は増えていくのです。

それだけで良いのか?といえば、僕は違うと考えています。評価されにくいコースでもプレーしてみるべきです。光を理解するには、影を知ってこそですし、良いと悪いは表裏一体だと知ることで見えて来るものもあるからです。

ただし、現実的に、一人のゴルファーが生涯で経験できるラウンド数の何倍もゴルフコースは存在しています。全てを経験した上で、それもそれぞれのベストな状態で、と考えれば絶望するしかありません。

「簡単すぎて、このコースはダメだ」「距離が長いコースが良いコースの最低条件」「最終的には、林間コースが良いコースなんだよ」オールドゴルファーたちがよく言っているセリフです。本当でしょうか。

結論から書くと、3つとも、間違いです。

簡単すぎると飽きてしまうという主張ですが、普段よりも良いスコアでプレーできたのなら、もっと良いスコアに挑戦し続ければ飽きることはありません。
70台が出たなら、パープレーを。パープレーができたなら、60台を。普段より良いスコアが出たら、それで満足する気持ちはよくわかりますが、もっと高いレベルに挑戦することに、理由をつけて蓋をしているだけです。

長いコースが良いという主張も、長いほうがむずかしい、というだけの話です。むずかしい=良いコース、という考え方は競技ゴルフだけに通用するもので、全てのゴルファーに押し付ける価値観としては、かなりの低レベルで、ゴルフを知っているようで実は知らない人の考え方です。

林間コースが良いコースだというのは、いわゆる名門コースが日本に生まれたときの環境が影響しているだけのことです。日本は国土の多くが山岳や山林です。平らで広い土地は、住宅地や農地になっていました。

大正時代、昭和初期にゴルフコースを作ろうとしたときに、林や森を切り開いて開発するしかなかったのです。林間コースには林間コースの良さがあり、丘陵コースには丘陵コースの良さがあり、山岳コースには山岳コースの良さがあります。良いコースの条件にはなり得ないのです。

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思い込みは危険で、愚かしい

長々と書きましたが、良いコースの定義は、基準や視点で、全く違ってしまうのです。
幼稚でも良いですし、無知でも良いので、身の丈に合った良いコース論を知っていれば十分です。

経験数が少ないので、わからない、という回答もありです。ベストスコアが出たコースを好きだというのもありです。よく行くコースが、リーズナブルで気取らないでゴルフができるので良いというのもありです。自分の好きな異性が、全ての人から好かれなくとも良いのと同じです。

注意したいのは、プレーしたことがあるコースと、プレーしたことがないコースを混同しないことです。

有名なゴルフコースは、俳優やアイドルのようなもの。つまりは、憧れであり、恋い焦がれる対象で、知っているつもりになっていてもそれはごく一部であったり、虚像であったりするのです。プレーをした気になって、良いコースだと思い込むのは危険で、愚かしいものかもしれません。

良いコースを考えるときには、プレーしたことがあるコースを対象にすることです。憧れのコースに恋することは素敵なことです。しかし、それはいつまで経っても愛には昇格しません。

プレーしたコース、もしくは、プレーできるコースがゴルファーが愛することができるコースです。剥き出しで、お互いに触れ合わなければ、愛は生まれないからです。

そして、それは、他のゴルファーと違っていても良いのです。わかり合えなくとも、全く問題はない。良いコースだと言い切れるコースが、もしくは、愛すべきコースがちゃんとあるゴルファーは幸せです。それらがないゴルファーは、これから探せば良いのです。




篠原嗣典

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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