ゴルフしてたら突然、鼻水が止まらなくなる!? それ寒暖差疲労かも |ゴルフと寒暖差3
生涯スポーツ・ゴルフと健康「末長くゴルフを楽しむために」|第24回
12月初旬は思いのほか日中ぽかぽか陽気の日が多く、ゴルフにうってつけの時期です。「それだけに真冬のラウンドより寒暖差が大きくなり、体の不調が起こりやすいのです」というのは、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司先生です。寒暖差に負けずラウンドを楽しみ、ゴルフパフォーマンスを向上させるためのポイントを教えていただきました。
晩秋の倦怠感、頭痛、めまい、咳、鼻水…その症状“寒暖差疲労”かもしれません!?
ラウンド中の咳や鼻水も寒暖差が原因
秋から初冬にかけて、アレルギー症状に似たような症状がでることがあります。人によってはラウンド中も鼻水が止まらなかったり、コースに出たとたん咳き込んだり……。これらも寒暖差によるものなのでしょうか。
「気象病・天気病外来」等の特殊外来を立ち上げ、これまで5000人以上の患者さんを診察している久手堅司先生(せたがや内科・神経内科クリニック院長)に教えていただきました。
「 “寒暖差疲労”とは別に、気温差が7度以上になると寒暖差アレルギーを発症しやすいといわれています。例えば、鼻水やくしゃみは、花粉症やアレルギー性鼻炎でも生じる症状です。しかし、花粉症やアレルギー性鼻炎にははっきりしたアレルゲンの原因がありますが、寒暖差アレルギーにはアレルゲンのような原因はないのです」。
マスクで冷気を防ぎ鼻を温める
寒暖差アレルギーは2つの症状が比較的よくあらわれるといいます。
1)鼻炎の症状
2)咳の症状
「1は、鼻水や鼻づまり、くしゃみが出たりする症状です。前回お話ししましたが、血流や呼吸や内臓の働きは自律神経によって一定に保たれています。鼻の粘膜の血管も自律神経が拡張・収縮をコントロールしているのですが、7度以上の寒暖差があると自律神経のバランスが乱れてうまく調整できなくなってしまいます。その結果、鼻の粘膜が腫れてしまい、鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状が出やすくなるのです」。
ショットのたびに鼻をかんだり、パットで下を向くと鼻水が……というようではプレーに集中できません。どうしたら症状が治まるのでしょうか。
「寒暖差アレルギーを防ぐには、できるだけ気温差を小さくすることが大切です。それには、コロナ禍でもありますからマスクがオススメです。鼻に入って粘膜を刺激する冷気をシャットアウトし、鼻を温められるからです。それでも鼻水やくしゃみの症状が強くプレーに支障がある人は、医師に相談のうえ薬の服用や点鼻薬の使用を考えてもいいと思います」。
咳の原因は寒暖差?秋の花粉?
2の咳の症状もつらいものです。
「咳については2つの原因が考えられます。一つは寒暖差によって気管支が閉じたり拡がったりしやすくなること。人によっては咳喘息の発作かもしれませんので、ゴルフが終わっても続くなら受診するようにしてください。もう一つは花粉症によるものです。花粉症は春だけのものではなく、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラといった秋の花粉によっても発症します。秋の花粉は粒子が細かく、咳が出やすいのが特徴です。草が枯れる12月まで辛抱するか、症状が重い人は受診して薬を処方してもらいましょう」。
寒暖差アレルギーと“寒暖差疲労”は別のもの。とはいえ、気温差に対応しようと自律神経が働きすぎてバランスを崩した結果であるという点は同じです。
深呼吸で自律神経のバランスを整える
寒暖差の影響を受けにくいように、自律神経そのものを強くすることはできないものでしょうか。
「自律神経は自分の意思で動かすことのできない末梢神経ですが、唯一コントロールできるのが呼吸といわれています。胸でつく浅い呼吸は緊張モードの交感神経を高め、お腹を動かす深呼吸はリラックスモードの副交感神経を高めます。酸素をたっぷり含んだ血液を脳をはじめ体中に送り血流をよくするのです。それによって“寒暖差疲労”にならないとはいえませんが、症状が軽くなることは期待できます。ゴルフの数日前から行なうだけでなく、ふだんから腹式呼吸や深呼吸を練習することをオススメします」。
深呼吸を日々行なうことによって自律神経のバランスが整いやすくなる。時間もお金もかからず、体にとってこれほどプラスになることはないでしょう。しかも、だるさ、倦怠感、冷え、首・肩こり、頭痛、めまい、メンタルの不調、古傷の痛み、咳や鼻水など“寒暖差疲労”の症状が軽減するなら願ったりです。
息をゆっくり長く多く吐くことが大事
効果的な深呼吸のポイントはあるのでしょうか。
「呼吸の“呼”は“吐く”という意味で、“吸う”より先にきていますよね。つまり呼吸は息を吐くことから始めるものなのです。ゆっくり長く多めに息を吐きましょう。そうすれば自然に息が吸えます。夜ベッドに入ってからで構いません。1日1分でも、息をしっかり吐くことを意識して深呼吸を練習するといいですよ」。
深呼吸は、朝イチのスタート前など緊張して交感神経が優位になっているようなときこそ思い出してほしいと久手堅先生は強調します。
ヒザがガクガクしたり指先が冷たくなったりしなくなるといいますから、ぜひスタート前のルーティーンワークにしたいものです。
【ゴルフと寒暖差のまとめ】
〈“寒暖差疲労”によるアレルギー症状と対処法〉
1)くしゃみ、鼻水、鼻づまり
・マスクで鼻を温める
・プレーに支障がある人は薬を服用
2)咳
・咳喘息、ラウンド後も長く続く咳は必ず受診を
・秋の花粉が原因の場合は飛散が落ち着けば症状も落ち着く。プレーに支障があれば薬を服用
〈自律神経と呼吸の関係〉
・自律神経は呼吸でのみコントロールできる
・胸でつく浅い呼吸は緊張モードの交感神経を高める
・お腹を動かす深呼吸はリラックスモードの副交感神経を高める
〈自律神経を整える深呼吸のポイント〉
・息を多めに吐くことから始める
・ゆっくり長く息を吐けば、自然に吸える
・夜寝る前に1分だけでも練習する
・朝イチのショット時など緊張時に行ない副交感神経を高める
取材・文/野上雅子
イラスト/庄司猛
撮影トーナメント/2022リコーカップ
久手堅司氏(せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士)
日本内科学会総合専門医、日本神経学会神経内科専門医、日本頭痛学会頭痛専門医、日本脳卒中学会脳卒中専門医。東邦大学附属医療センター大森病院、済生会横浜市東部病院での臨床経験を経て、2013年せたがや内科・神経内科クリニックを開設。「自律神経失調症外来」「気象病・天気病外来」等の特殊外来を立ち上げ、5000人以上を診察。一人ひとりの訴えに寄り添ったきめ細かい診療は患者さんからの信望が厚い。テレビや雑誌等への出演のほか、気圧予報・体調管理アプリ「頭痛ーる」を監修。SNSでも気象の変化に適した体調管理のアドバイスを日々発信。近著『気象病ハンドブック』(誠文堂新光社)が注目されている。