「練習省エネ派」も「アスリート系」も、レッスン記事のヒントを生かすにはどうしたらいい?
重箱の隅、つつかせていただきます|第31回
スイング、ゴルフギア、ルールなどなど…。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。
Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
GOLF TODAY本誌 No.609/98ページより
クラブと打ち方はどちらが優先なのか?
上達のヒントを期待してゴルフ雑誌の記事を眺める際、ギア情報とレッスン、どちらを重視するだろうか。両方とも大事だ、という人も当然いるだろう。
だが、実はこの〝優先順位〟を見誤ると、上達どころか停滞、低迷につながる危険性もある。少し整理してみよう。
ゴルフ雑誌を読む、ということはすでに球を打てる、コースでプレーできる人だろう。つまり、それなりに打ち方が身に着き、それなりのクラブも持っているはず。
それでも現状に不満があり、上達を促してくれるであろう「打ち方のレッスン」と「新しいギア」の情報を欲しているわけだ。
ここでまず意識すべきなのが「クラブをどう変えたいのか」である。考え方は2通りある。
上達の王道は練習以外にないが、なるべく練習量を抑えて上達したいからゴルフ雑誌を手にする、という人も多い。当然、ギアも〝練習量を増やさずに〟ショット力が向上するものを選びたがるので、各メーカーもそれを可能にする(と思い込める)〝やさしい〟ギアを毎年のように開発してくる。
私見だが、30年前に比べて圧倒的にドライバーの寛容性が向上したことで、100切り、90切りのハードルは格段に低くなったと思う。
上達ルートから外れないためには
さて、この〝練習省エネ派〟は「飛ぶものが正義」と考えがちで、超ストロングロフトのアイアンなどを選びたがるためにスコアを崩している。本当に選ぶべきは「程よくつかまる」というものだ。
軽く振っても右に大きく逸れない、しっかり叩いても大フックにならない。雑誌記事で目星をつけて、ショップで試打すれば結構簡単に見つかる。現在のクラブの進化は、そこまで成熟している。
一方、練習量も豊富な〝アスリート系〟と呼ばれる人たちは、選ぶギアはプロモデル、準アスリート系モデルと決めている。雑誌記事で調べたいのは、スペックの選び方、主にシャフト情報だ。
各メーカーが、毎年飛距離性能が上がった(と思い込ませる)ヘッドを開発。それを使いこなして好成績をマークするプロに憧れて同モデルを選ぶも、使いこなすためにシャフトを吟味する。この時点で「フェアウェイを外さない」ものを選べる人は、上達ルートから外れないようだ。
だが〝アスリート系〟も高齢化すると、見栄が強くなるらしい。〝ちょい飛び軟鉄アイアン〟とかに手が伸びてくる。番手数字のギミックだけなので、どうかと思うが、これが売れているから各メーカーの戦略勝ちなのだろう。
ストレスフリーで上達するには
練習省エネ派〟も〝アスリート系〟も、基本的には「自分の打ち方にギアを合わせる」選択法だと、ストレスフリーで上達が促されやすい。
上級者がレッスン記事は読まない、とうそぶくのは打ち方で迷いたくないからだろうが、ある意味正解だと思う。
では、打ち方の学び(レッスン記事)はなくてもいいのか。そんなことはない、ギアの進化とともに打ち方も進化している。ここ30年の女子プロのスイング変化を見ると、クラブの軽量化、長尺化が影響していることがよくわかる。
長い棒を振って加速し、先端の打面で球を打つ。突き詰めると打ち方はこれだけだが、軽く長くなったぶん振り回しすぎが減り、打面の動きが鈍くなったぶん昔とは別のヒントが生かせるようになった。だが、どちらも「スイング有りき」ではない。
以前、クラブ設計家の竹林隆光は「クラブが変わるからスイング理論が変わる」と語っていたが、もしスイングを変えたかったら、レッスン記事のヒントを生かせるクラブに変えることから始めるのが正解だと信じている。
戸川景(とがわ・ひかる)
1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て(株)オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。
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