”習志野のエジソン”と呼ばれたジャンボ「スポーツ力学」に基づいたトレーニングが世界レベルのジュニアをつくる
ジャンボに聞け!ジュニアゴルファーの育て方 VOL.12
サッカーのカタールワールドカップではベスト16、野球のWBCでは3度目の世界一と、快挙が続くスポーツ界。ゴルフの世界も、いよいよ本格的なシーズンを迎えたが、海外での活躍度となると野球やサッカーの後塵を拝している感は否めない。今、日本のジュニアゴルファーが世界に通用する力をつけていくために、何をなすべきか。そのポイントを、「誰も書けなかったジャンボ尾崎」の著者である金子柱憲が、掘り下げる。
GOLF TODAY本誌 No.612/102〜103ページより
取材・構成/日本ゴルフジャーナリスト協会会長・小川 朗
撮影/相田克己
世界に通用するゴルファーを育てるには「スポーツ力学」に基づいた、合理的トレーニングを取り入れていく必要がある!
野球選手出身ということもあり、ノックや早くからバットスイングもトレーニングの中に組み入れられていた。
ーー「男子と女子に、指導法の違いがあるのか」。
その問いに、甲子園の優勝投手でプロ野球出身者でもあるジャンボは、こう語っている。
「いやいや、スポーツだからね。(男子と女子で)そんなに大きく変わるわけない。スポーツ力学っていうのがあるわけだからね。それに基づいて、野球を組み合わせて、スイングっていうのはこういうもんだよ、とね」。
金子の独白 ジャンボは、日常的に「スポーツ力学」という言葉を発します。「スポーツ力学」とは「力」に着目した研究です。
ヒトが走っている時、ヒトは筋肉で力を発揮します。また、地面を押せば、地面からの反力が発生して、その力を受けて体が前に進みます。
そして、走っていれば当然風の影響を受けます。つまり、筋肉や体の動きを如何に大きな力に変えていくかを考えているのです。
ジャンボ軍団のトレーニングは常にこの「スポーツ力学」に基づいたトレーニングが基本になっているのです。細かい筋肉よりも大きい筋肉を使うことが、スイングには大切なのです。
ーースポーツ力学の上に、野球を組み合わせたスイング理論。実は金子がジャンボ軍団入りした約40年前から、すでにそれはトレーニングに取り入れられていたという。
短く切ったクラブでの練習など、ジャンボは独自に器具を作り出して工夫していた。
金子の独白 私がジャンボ軍団に入門した頃、すでに野球のバットスイングやドライバーを短く切った特製のミニクラブを用いたスイング練習は取り入れていました。
バットも普通の硬式バットから徐々に改良され、先の部分に穴を空けておもりを埋め込み先端を重くしたり、バット自体を長くしたりと様々な工夫が施されました。
こうした改良によって、素振りや独自のスイングドリルをゴルフスイングに反映させていました。グリップ部分も細く削り、ゴルフグリップに近い状態にしていました。
今日では、ゴルフショップなどでゴルフグリップを付けた素振り用バットが販売されていますが、ジャンボは約40年前からこのような練習器具を取り入れていたのです。
ーー「習志野のエジソン」(エースキャディーの佐野木計至氏が命名)と呼ばれたほど、様々な練習器具を発明したジャンボ。長年の野球経験がその下地にあったわけだ。トレーニングメニューにも、肉体を強化するために野球のスプリングキャンプを思わせる内容が随所に盛り込まれていた。
トレーニングは軽いランニングからスタートしていくのがいい。
金子の独白 当時のトレーニングは、20分程度の軽いランニングから始まり、ダッシュや持久走(タイムトライアル)、各種筋力トレーニング等、野球でいうウォーミングアップに多くの時間を割いていました。
天候が悪く室内で行う時は、ストレッチにかなりの時間を振り分けられました。
ミニクラブによる練習とハゴミントン、最後に、野球出身のジャンボならではの「地獄のノック」。約10メートルの幅を左右に振られながら一人5本連続でキャッチするまで延々と続きました。
ゴルフはコントロールゲーム。ドラコンではない
基本的な体力作りを中学3年くらいからは、取り入れるべきとジャンボ尾崎。
ーー若き日の金子が、シーズンを通して戦える筋肉を得ることができたのも、この時期。
ジャンボが「中学3年ともなれば、そろそろトレーニングもしないと」と警鐘を鳴らすのも、ジュニアアカデミーの門をたたく年齢層が「ゴールデンエイジ」と呼ばれる筋力トレーニングが最も成果を上げる年齢層であるからこそ。
金子の独白 その後も、ゴムチューブやスイングによる体幹トレーニングなども徐々に取り入れ、少しずつトレーニング内容は進化していきました。現在のそれは最先端のスイングトレーニングと言っても過言ではありません。
「今のクラブは、強く振れば飛ぶけれど、本当に振れる体力、体の芯の強さ、スイングバランスが大事。ゴルフはコントロールゲーム。ドラコン選手じゃないんだから」と、ジャンボは今の子供たちに、警鐘を鳴らしています。
ーーこのように、野球のエキスが多くのところに注入されているのが、ジャンボのトレーニングメニュー。これらを参考にして、無理のないメニューで体を強くしていく。ジュニアにとっては、それが最善の方法と言えそうだ。
金子プロからジュニアへのワンポイントアドバイス
今はスマホの動画で様々なスポーツの、一流選手のプレーぶりを見ることができます。野球のピッチャーや、テニスプレーヤーなどのプレーを漠然と眺めるのではなく、身体の一部分に注目するのはどうでしょう。
「そんなに背も大きくないのに、なんでこのピッチャーは球速いんだろう」。こんな風に考えると、切り返しや、リリースポイント、足の動きとなど、そのヒントが見つかるかもしれません。これがジャンボの言う、スポーツ力学の観点を理解するうえでの第1歩です。
金子柱憲(かねこ・よしのり)
1961年3月4日生まれ。東京都出身。日大卒。
14歳でゴルフを始め、アマチュア時代は日本オープンベストアマ、関東学生優勝。1982年の韓国オープンではプロを抑えて優勝。1983年プロ入り後、ジャンボ軍団入り。91年に関東オープンで初優勝。ツアー通算6勝。
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