左腕を意識的に伸ばすスイングはNG!しなやかに"たわむ"左腕がミート率を上げる…そのテクを伝授!
ベン・ホーガンを先生に!森プロが解説する『アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方』【第11回】
「左腕を伸ばせ」「左ワキを締めろ」と言われるがインパクト時に左腕がたわんでいるプロは多い。「クラブの動きを優先すると、たぐり動作で左腕は伸びたり、たわんだりするのが自然」と森プロ。“左ヒジの引け“とは違う、左腕の生かし方とは?
GOLF TODAY本誌 No.612 73〜77ページより
イラスト/久我修一 取材協力/東京ゴルフスタジオ
取材・構成・文/戸川 景 撮影/圓岡紀夫
たぐり動作を促すのは、しなやかにたわむ左腕
左腕を固めてもミート率は上がらない
左腕はクラブの慣性で伸ばされるものであって、意識的に伸ばすものではない、と森プロ。
森プロ「左腕は真っすぐ伸ばすとか、腕と肩の三角形のキープがヘッド軌道を安定させる、といったレッスンがありますが、これはたぐり動作を無視した”振り回し”メソッドです。
背骨を軸として、手元までの半径を狂わさないように、という考え方です。
ですが、ホッケーなどを見てもわかるとおり、打面をコントロールして打球するには、右手を支点として左手でたぐる動きのほうがやさしい。
となれば、左腕は伸ばして固めず、しなやかにたわませたほうが良いのです。
多くのプロは、インパクトで左腕が真っすぐ伸びていますが、それは左肩のターンに強く引かれているから。だから逆に、アプローチなど左肩の動きが抑えられるものでは、左ヒジが明らかに曲がるくらいたわむプロも多いのです」
フェースターンを邪魔する、たぐらない“ヒジ曲げ”はNG
フェースターンを抑えて方向性を高めつつ、強く叩こうと欲張ると、左ヒジが目標方向に突き出る形になりやすい。
これがいわゆる“チキンウイング”で、スライスやシャンクの原因になる。
右手のスナップを利かせつつ、左手でグリップエンドをたぐると打面コントロールしやすい。
左肩の開きが少ない場合、左腕がたわんだほうが打点は安定する。
右ヒジ支点のたぐりならアイアンの切れ味が増す
カット軌道ではない厚いインパクトを実現
森プロ「右ヒジの正面が手元の最下点。左肩を低く保ったまま、左腕をたわめてグリップエンドをたぐり込み、ヘッド軌道をレベルに近づけています。打ち出し角やスピン量が安定します」
左肩を動かしすぎずヘッドを振り抜く
森プロ「左腕をたわませるアイアンの名手はリー・ウェストウッドやホセ・マリア・オラサバルなど、欧州勢には新旧を問わず多く存在します。
強い風や斜面でもバランスを崩さないよう身体の動きを抑え、たぐり動作を生かす必要があったからでしょう」
左腕をたわめる具体的なテクニックとは?
【本当の左手のリード】肩のターンが左腕のたわみ具合を決める
“たぐり”の基本動作
左手はドアのノブをつかんで、左に回しながら引くイメージ。
森プロ「実際のスイングでは、ハーフウェイダウンで右ヒジの正面に手元が下りた所から。
右ヒジを支点に、手元とグリップエンドが引き込まれていきます。上に引き上げるのではありません」
支点となる右ヒジの位置や、スイングプレーンの傾き具合、肩のターンの度合いで左腕のたわみ具合も変わる。
肩のターンが強く、速いほど左腕は余らず、伸ばされやすい。
低くたぐるとヘッドも抜ける
森プロ「砂を適量で削ぎ取るには、身体のターンにプラスしてたぐり動作を強調するほうがいい。
ホーガンもバンカーでは左ヒジが曲がり、低くたぐっていました」
森プロ「イメージでは左腕でこのくらいたぐっても、身体のターンが先行して左腕が真っすぐ伸びるインパクトになります」
ホーガン流たぐり動作 4ポイントを再チェック!
(1)右手でスナップ
森プロ「右手は軽やかにハンマーでクギを打つようなスナップ動作。リキまずに打面を感じ取るようにします。
タックインした右ヒジがボールと打点の間隔を合わせます」
(2)左手のたぐり
森プロ「グリップエンドを左手でたぐりますが、身体のターンに合わせて左腕をローリングします。
左手甲を下に向けて、ロフトを立てるイメージで左腰に引きつけます」
(3)右手を軸にテコ
森プロ「右ヒジを支点に右前腕が動き、その先の右手を軸にテコの作用でヘッドを出します。
グリップエンドを引き込みつつ、ヘッドを出すのでインパクトゾーンがより直線的に」
(4)フラットに捌く
森プロ「ホーガンのプレーンは両肩にかかるイメージでしたが、ダウン以降のヘッド軌道はそれより下。
グリップエンドを引き上げず、身体のターンに沿ってたぐれます」
左手のたぐりをシンプルに採り入れやすい
よく、左サイド主体のスイングは、車の前輪駆動と同様にスイング軌道や打点が安定しやすいと言われる。
森プロ「ですが、左サイドが流れるとヘッドが走らないため、いわゆる”左のカベ”のイメージで、左サイドの開きを止めたり、伸び上がらせたりして動きを鈍らせる打ち方になりがちです。
ホーガンがダウンで左腰のターンを強調したのは、右ヒジを支点としたサイドスロー感覚のリリース、つまり”たぐり動作“ができていたからです。左腰を開き、左肩を開き、左手を引き込む。それでも右サイドが前に出すぎず、右ヒジが支点なのでヘッドが確実にリリースされます。
”たぐり動作“では、左手でたぐる=打撃になります。これが右手をリキませない本来の左手リード、前輪駆動の安定感につながります。まずはわざと左腕をたわませて、感覚をつかんでください」
Ben Hogan
ベン・ホーガン(1912~1997)
アメリカ・テキサス州出身。身長173cm、体重68kg。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。
ホーガンアナリスト 森 守洋
ベン・ホーガン(1912~1997)を手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
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