相性の悪いグリップもあるので要注意です…!シャットフェースの技術を上手に生かすコツをマスター
ベン・ホーガンを先生に!森プロが解説する『アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方』【第10回】
現代では“掌屈”など、シャットフェースを促してフェースローテーションを抑えるメソッドが目立つ。だが、ホーガンはインパクト直前までオープンをキープするイメージを大切にしていた、と森プロ。どちらが本当に有効な技術なのか、考えてみよう。
GOLF TODAY本誌 No.611 135〜139ページより
イラスト/久我修一 取材協力/東京ゴルフスタジオ
取材・構成・文/戸川 景 撮影/圓岡紀夫
“つかまえ過ぎない”がシャットフェースの目的
インパクトで返さないための事前準備
ドライバーヘッドの大型化、慣性モーメントのアップとともに、巷のレッスンで目立つようになったシャットフェースの技術。
森プロ「フェースターンの動きがしづらいぶん、事前にフェースを閉じておけばいい。
だからフックグリップで構え、トップではフェースが天を向くようにする、というレッスンが大半でしたが、本来のシャットフェース技術はクローズからオープン、つまりフェースをシャット状態から徐々に開いていくことでフェースターンの動きを抑えるものです」
インパクトゾーンでヘッドをリリースすると、重心アングルが効いてフェースは左を向きやすくなり、つかまったフック系の弾道になるのが自然だという。
森プロ「その動きを抑えてフェード系の弾道を得るには、ハンドファーストにしたり、このシャットフェースの技術を利用して、つかまえ過ぎないようにするわけです」
ヘッドが走れば自然につかまる
遠心力で引っぱられるとフェースは被る動きに
インパクトエリアで手元をたぐり、ヘッドをリリースすると遠心力でヘッド重心が外に引っぱられる。すると重心アングルの影響で、フェースは自然と左を向きやすくなる。ハンドファーストでとらえてもドローが出やすいのは、このためだ。
たぐり動作でグリップ部分をヒネると、ヘッド重心を軸にさらなるフェースターンが促される。
フェースターンを先取りするシャットフェースの切り返し
オープンフェースでフックのミスを解消
ホーガンは左手首を甲側に折る“カッピング”を採用し、トップからオープンフェースを維持することでフックのミスを抑え込んだ。
森プロ「エネルギーの伝達効率が良いフェースターンを生かしつつ、フェードにするための技術。
スピン量を増やし、弾道を安定させるメリットがあります」
左手の“掌屈”ではなく右手の“背屈”に注目
シャットフェースのトップからフェードを打ちこなすダスティン・ジョンソン。
森プロ「トップで左手首が折れる、いわゆる“掌屈”が目立ちますが、本当に注目すべきはフェース面と連動している右手首の“背屈”です。
右手を生かしたリリースがシャットフェース技術の真骨頂です」
切り返し以降、どの時点で“ヒールを下げる”かが、フェースターンの量や速さを決める。
森プロ「早めでも遅めでも、自分に合う動き、ポジションを探してみることが大切です」
シャットフェース技術のリリース方法とは?
【右手で打面を感じる】右ヒジのタックインでシャローに押し込める
切り返しで右ヒジを下げる
トップで“ヒールを下げる”のがフェースをシャットにする技術だが、シャロー軌道を目指すなら、まず背中側にヘッドを下げる。
次に右ヒジを下げつつ右手首を“背屈”してヒールを下げる。右ヒジを右脇腹にタックインすることでインサイドからシャロー軌道で振り下ろせるようになる。
フェースを閉じる動きは、ヒールを軸にトゥ側を起こすのではなく、ヘッド重心を軸にヒール側を引き下げるイメージで行う。
ダウンで右ヒジが外れてしまうと、シャットフェースでフェースターンを抑える動きが、手で当てるだけの弱いインパクトになりやすい。
右ヒジが外れるとヘッド軌道はカットになり、フェースも左向きで引っかけやすくなる。
森プロ「テニスと同様に、打面を身体でしっかり押し込むには、右ヒジが右ワキ腹にタックインしているのがベターです」
右ワキが締まり、右ヒジを軸にするイメージで手元を先行させると、フェースをリードして押し込める。
あくまでも右手首のスナップ動作で考える
“サイドスロー”をイメージ
森プロ「インパクトから逆算してトップのフェース向きをコントロールするなら、ホーガンが提唱している“サイドスロー”のイメージが有効です。“背屈”した右手首を、リリースを考えながらセットできます」
フォローで解放された右手首と左肩に注目!
ダスティン・ジョンソンは右手首のスナップ動作が秀逸、と森プロ。
森プロ「フルショットでは放り投げるようなスナップで、アプローチではフェースの返しをさらに抑えて上向きに。結果、アプローチでは受けた左肩がせり上がっています」
ヒールの操作とスナップ動作を上手く合わせる
シャットフェースの技術はフックグリップとは組み合わせないほうがベター、と森プロ。
森プロ「左手を被せて握ると、インパクトエリアで低くたぐるとフックしてしまうため、たぐり動作自体を弱めてしまい、手元が浮いてシャンクやプッシュのミスが出やすくなります。
また、左ヒジが外を向きやすく、右から回すフック以外ではフォローで詰まりがち。左ヒジをたわめて抜くプロもいますが、難しい技術です。
右手首のヒンジングでスナップ動作が入れやすいグリップがベストです。クローズからオープンにフェースを操作してフェースの開閉を抑えるには、ヒールから引いて、ヒールから押し込むようなスナップ動作が必須。
右手のヒラを、フォローで上向きにしてボールを放るようなサイドスローのイメージと、ハンドファーストの組み合わせでスピン量を抑えた弾道が打てます」
Ben Hogan
ベン・ホーガン(1912~1997)
アメリカ・テキサス州出身。身長173cm、体重68kg。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。
ホーガンアナリスト 森 守洋
ベン・ホーガン(1912~1997)を手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
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