フェースの開閉が大きいのはNG?打面をコントロールしやすい方法を見つけて、飛距離を生み出すコツ
ベン・ホーガンを先生に!森プロが解説する『アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方』【第12回】
「スイングは“棒振り”と“面合わせ”」と森プロ。ヘッド、シャフトを効率よく加速して振る感覚と、打点、打面の向きを操作する感覚は分けて考えるという。「ホーガンはフェースの開閉が大きいのに弾道は安定。その理由を考えると“面合わせ”の本質が見えてきます」
GOLF TODAY本誌 No.613 73〜77ページより
イラスト/久我修一 取材協力/東京ゴルフスタジオ
取材・構成・文/戸川 景 撮影/圓岡紀夫
ヒールを下げ切るイメージで“面”を起こす
打点の内側にヒールを通す工夫が必要
フェースターンを抑えると、逆に弾道がブレやすい、と森プロ。
森プロ「パッティングならフェースターンを抑え込む打面コントロールも可能ですが、スイングでヘッドを加速してヒットする場合はナンセンス。シャフトがヒールに接続している限り、ヒールでヘッド重心をリードするのが、軌道の安定と大きな出力につながります」
フェースの開閉を抑えるとヘッド重心のプレーンとヒールのプレーンは平行に動くことになる。
森プロ「「すると、ヘッドを加速しながらヒールのブレーキをかけるようになり、シャフトに余計なトルクがかかります。これがエネルギ―ロスだけでなく、打面のブレや打点のズレを誘発します。
ダウンではヒールでヘッド重心をリードし、途中でヒールを〝下げ切って〟打面を〝起こす〟動きで押し込む。それをスムーズに行う工夫が厚いインパクト、強弾道を生み出すコツなんです」
「遠心力任せ」では安定しない
ヒールを下げて、シャフトをプレーンからかわす動作が入らないと、運動連鎖で加速したヘッドはヒールが先行したまま。
シャンクやスライス、プッシュアウトのミスにつながってしまう。
ヒールを下げる=フェースを起こす動きは、たぐり動作を含めてグリップとシャフトをどうプレーンからかわすかがポイント。
自分なりに打面をコントロールしやすい方法を見つけることが大切。
シャットフェースは飛ばしにはマイナス
ターンを抑えるのはロスが大きい
ダウンの早い段階でフェースがシャットだと、ヒールでヘッド重心をリードしづらくなる。
ヘッドのリリースを抑えたままハンドファーストでインパクトしやすく、ライン出しはしやすい半面、弾道の高さや飛距離は出しにくくなる。
シャットフェースからヘッドを走らせると、フェースが開く方向にシャフトに大きな負荷がかかる。
手元での押さえや加減が難しくなり、持ち球をフェード、ドローのどちらか一方通行にしないと安定しない。
フェースの“順回転”が打球を強くする
トップでフェースが開くとつかまらなくなるイメージだが、ヒールでリードするダウンならフェースターンも早く始まり、リリースに間に合う。
左手首が甲側に折れて深いタメになりやすく、正しくリリースできれば飛距離アップにつながる。
森プロ「ヒールとシャフトがプレーンの内側にかわしてヘッド重心を押し込むと、フェースは“順回転”してボールに強いバックスピンを与えます。
これがブレない強弾道の基本です」
「ヒールを下げて打面を起こす」練習法とは?
【必要で十分なターン】オープンフェースからドローを打ってみる
ヒールを下げる
森プロ「ハーフウェイダウンまではシャフトプレーンでヘッド重心をヒールがリード。そこからシャフトが下がることでヒールも下がり、フェースターン。
グリップエンドを少しひねるか、グリップ位置をグッと大きく下げるか。いろいろ試してみてください」
球を包み込む
森プロ「アイアンはヘッド重心の下が打点エリア。フェースターンしないと、打球は右上に逸れてしまいます(下)。
球を包み込むようにフェースを“順回転”させることで打球はラインに押しこまれ、タテのスピンがしっかりかかり(上)、伸びる強弾道になります」
森プロ「ヘッド重心のプレーンに対して、手元とシャフトを下げてかわしながらリリース。ヘッドは“順回転”しながらヒットします」
森プロ「フェースをわずかに開いたままインパクト。ボールが潰れて放たれる時にスクエアになるイメージで、打面を起こす比率と、トゥを回す比率の兼ね合いでストレート(上)とドロー(下)を打ち分けます」
オープンからターンを促すホーガン流の“助走”
切り返しからスピードが乗るオープンフェース
森プロ「オープンフェースからヒールを下げる意識でダウンすると、右ヒジが自動的にタックインしシャローなプレーンで下ろしやすくなります。また、腕や手のテンションも下げやすく、ヘッドスピードを上げやすくなります」
スクエア
ヘッド重心とヒールがヘッド重心のプレーンに乗るのが、トップでのスクエアフェース。切り返しからスムーズなフェースターンが期待できるが、インパクトで返りすぎることも。
シャット
早い段階でヒールがヘッド重心のプレーンから離れているため、ヘッドに逆回転の負荷がかかりやすい。ヒールを下げ続ける動きを維持するため、ヘッドを加速し切れない。
オープン
ホーガンのように、ヒールがヘッド重心のプレーンの上からダウンで引き下ろされると“助走”がついた状態で、フェースターンの加速度を加減しながらインパクトに入れる。
番手ごとのたぐり動作をアレンジする
フェースターンは加速するほど安定する、と森プロ。
森プロ「自転車の車輪やコマのように、回転運動はスピードが乗るほど軸が安定します。フェースターンも、シャットフェースからターンを抑えるより、オープンフェースからスムーズに加速してターンするほうが、リピータブルになり、安定した動きを作りやすくなります」
ただし、重心距離の長さや重心アングルの大きさ、ヘッド慣性モーメントに応じたアレンジは必要だという。「同じアイアンでも5番と9番では、フェースターンの量もタイミングも変えます。だからこそ練習で、その違いを把握します。
オススメは、わずかにオープンフェースで当てながらドローを打つドリル。ロフトの大きいものほどオープン度合いを大きくし、ロフトの小さいものほどターンを強めないとドローになりません。たぐり動作のアレンジを実感できます」
Ben Hogan
ベン・ホーガン(1912~1997)
アメリカ・テキサス州出身。身長173cm、体重68kg。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。
ホーガンアナリスト 森 守洋
ベン・ホーガン(1912~1997)を手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
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