飛ばしたい時ほど左グリップはリキませちゃダメ!右手は緩めず左手の緩急で加速をサポートする
ベン・ホーガンを先生に!森プロが解説する『アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方』【第13回】
ホーガンのグリップ修正といえば、フックグリップをスクエアにして左親指をショートサムにしたことが有名。「でも、それ以前からホーガンのグリップには独自の、特に左グリップの脱力テクニックがありました」と森プロ。今回から、そういった“ホーガン流“を再確認していこう。
GOLF TODAY本誌 No.614 73〜76ページより
イラスト/久我修一 取材協力/東京ゴルフスタジオ
取材・構成・文/戸川 景 撮影/圓岡紀夫
ホーガン流グリップの目指したものとは?
握り締めずに鋭く振れる゛脱力”を極める
森プロ「通常のレッスンでは、左手小指側3本指でしっかり握ることを基本としています。
しかしホーガンは「モダン・ゴルフ」で、まず左手のヒラの膨らみと左人差し指だけで持ち上げられることをグリップの大前提に置きました。これはレッスン史上、最も画期的なことだったと思います」と森プロ。
クラブを鋭く振り抜くには、昔からグリップは゛小鳥を包み込むように”とたとえられるくらい、いかにソフトに握るかが重視されてきた。だが、アドレス時はソフトに握れても、スイング中に力むことを防ぐ具体策はなかった。
森プロ「ホーガンは自動車事故で左半身を故障した後に、このグリップ方法を提唱しました。
元々スイング中にグリップの緩急でヘッドを走らせていたホーガンですが、人差し指だけ引っかければスッポ抜けない、つまり左手は“脱力”したままでもスイングできることに改めて気づいたのだと思います」
疑問1:なぜ3本指を外してもいい握り方を見つけられたのか?
森プロ「ホーガンの左手は元々、フックグリップのロングサム。それがグリップ改造で左手の被せ方を浅くしたことで、左人差し指のかかり方も浅くなり、3本指が緩んでもしっかりクラブを支えられ、クラブが遠心力でもスッポ抜けないポイントが見えたのだと思います」
なぜホーガンはグリップを短期間で改造できたのか?
疑問2:なぜスクエアに改造してすぐに優勝できたのか?
森プロ「27歳でヘンリー・ピカードに切り返しでの握り直しのクセを指摘され、さらにフック防止のアドバイスとしてフックグリップからスクエアに。
直後からツアー3連勝できたのは、それ以前から打球コントロールの要が右手であり、左手はその補助的な役割だったことの証明だと思います」
疑問3:左手甲の向きより外転と手首先行を重視したのは?
森プロ「『モダン・ゴルフ』に、インパクトで左手首が先行するイラストがあり、ハンドファーストの代表的なイメージになっていますが、これは左前腕の外転、つまり“たぐり動作”の結果です。
グリップエンドを引き込む動きとしてとらえないと、右手のスナップ動作の補助になりません」
疑問4:なぜオーバースイングはグリップ改造後も続いた?
森プロ「ホーガンのオーバースイングは、グリップ改造後に多少度合いは減りましたが、自動車事故で左半身を故障するまで続きました(右)。
つまり、オーバースイングでもメジャーを獲れる打球コントロールはできていたということ。切り返しでクラブがブレない(左)、フェースの動きが安定する左手の握り方が見つかったわけです」
ホーガン流グリップの“左手の緩急”とは?
【左手の脱力のヒント】左手は“引っぱる”“たぐる”を最優先に
左手フィンガー
左手をフィンガー主体で握ると、切り返しで緩むとヘッド位置、フェース向きが変わりやすい。ダウンで締め込んでも、フェースの動きにブレが生じやすく、コントロールが効かなくなる。
左手パームは緩めても緩みすぎずに引ける
左手パーム
左手がホーガン流のパーム主体なら、左手3本指が緩んでも、ヘッド位置やフェース向きはほとんどブレない。スイング中、コントロール性を損なうことなくソフトな握り方を維持できる。
左手はスナップ動作の補助に徹する
森プロ「ホーガン流スイングの基本は右手のサイドスロー、スナップ動作。左手はそのクラブの動きを邪魔せず、加速するのがポイント。“たぐって、かわす”使い方を目指すと、ホーガンの左手の使い方が見えてきます」
飛ばしたい時ほど左グリップはリキませない
検証① 左人差し指の爪が見えている
森プロ「試してみるとわかりますが、大抵の人は左人差し指は右手で隠れます。両手は一体で動きますが、脱力した状態を保つと、右手はヒンジ方向のスナップ動作メイン、左手はグリップエンド方向へのたぐり動作メインで動かすことで両手にセパレート感が生じ、このように右人差し指の爪が見えるようになります」
検証② グリップエンドを余さず握る
森プロ「左人差し指で吊り上げる感覚を生かすなら、グリップエンドは余すべきですが、ホーガンはよくグリップエンドギリギリを握っていました。おそらく、多少力が入っても左手のたぐり、外転動作によるフェースターンを強めないための工夫だと思います。また、よりヘッドを利かせて叩けるイメージにもつながったのでは」
右手は緩めず左手の緩急で加速を補助する
よく、左腕がスイングの半径を作ると言われるが、そのイメージは左腕を硬直させる危険性が高くオススメできない、と森プロ。
森プロ「ホーガンも左腕を伸ばすことは勧めていますが、実際にはしなやかに使っていました。おそらくスイング中はクラブの重さに引かれて、左腕は伸びるのが自然という認識だったと思います」
一番悪いのは、左手3本指を強く握り締めてしまうこと。
森プロ「セルヒオ・ガルシアはアドレスでこの3本指をよく動かしてほぐしていますが、右手は等圧で握ったまま。ホーガンも同様に、左グリップは脱力して、たぐり動作、引きつける動きに特化した左グリップを作り上げたのでしょう」
右手がクラブコントロールのメインだとしても、クラブの重さを支え、適切な軌道で鋭く加速するには左腕のたぐり動作は必須。そのためには“脱力状態で引っぱれる“左グリップが不可欠なのだ。
Ben Hogan
ベン・ホーガン(1912~1997)
アメリカ・テキサス州出身。身長173cm、体重68kg。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。
ホーガンアナリスト 森 守洋
ベン・ホーガン(1912~1997)を手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
【アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方】
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