ブリヂストンスポーツの最新テクの根源「PRO230チタン」2003年の登場当時は230cm³ヘッドが”バカデカ“だった!
【第33回】商品開発はドラマ!女子プロ使用が人気に拍車!230cm³のドデカヘッドで”ジャガイモ”と呼ばれたチタンヘッドの名器
ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話を、メーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はプロ230チタン(ブリヂストンスポーツ)が主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.616/70〜71ページより
写真/ゴルフトゥデイ編集部 取材・文/嶋崎平人
2003年に登場!当時”バカでかい”といわれた230cm³ヘッドで、鮮烈デビューした大型チタンの先駆者
大型ヘッドのはしりとなった、ブリヂストンスポーツが2003年に発売した「PRO230チタン」。
クラブヘッドの体積は”ゴルフ規則”で2008年から460cm³に制限されている。チタンヘッドの大型化が進み、寛容性の拡大、反発係数のアップなどによる飛びすぎに対する懸念からの規制だ。
チタンヘッドが最初に登場したのが1990年で、このチタンヘッドのドライバーを世界で最初に発売したのはミズノだ。製造方法は鋳造で、ヘッド体積は206cm³。
当時、ステンレス製鋳造のメタルドライバーで大型と言われていたブリヂストンの「J'sメタル」が190cm³で、200cm³を超えたチタンドライバーは”バカでかい”といわれた。
ミズノを皮切りに各社がチタンドライバーを発売し、開発競争が激化していった。特に、当時の各社の方針はヘッドを大型化することにより、スイートエリア拡大でミスに強いクラブの開発であった。
そして、さらなる大型ヘッドのはしりとなったのが、ブリヂストンスポーツが2003年に発売した「PRO230チタン」である。この商品開発について、ブリヂストンスポーツ株式会社・取締役常務執行役員、技術担当兼生産担当の今本泰範氏にお話を伺った。
PRO230チタンが誕生するまで
ブリヂストンスポーツ株式会社・取締役常務執行役員、技術担当兼生産担当の今本泰範氏。
1990年初期のチタンドライバーのヘッド製造方法は鋳造で、1991年にブリヂストンスポーツも「レクスターチタン」を商品化した。
ただ、クラブヘッドの構造上クラウンなどの薄肉部分に溶融したチタンを均一に流すことが難しく、ヘッドをさらに大型にするには、製造技術の進化が不可欠であった。
ブリヂストンスポーツも大型化するために、いろいろな製造方法をトライしていた。今本氏は1991年入社でクラブの開発部門に配属され、「当時の開発部門の宮島徹也部長を中心に大型チタンヘッド開発を進めていた」という。
製造に関しては、自社でクラブヘッド製造設備は保持しておらず、パートナー企業と共同で開発を進めていった。チタンヘッドの製造方法として、チタンの板を、大型プレスで鍛造する製造方法にもトライしていた。鍛造チタンヘッドである。
チタン材料を金型に入れて鍛造しても、元の形状に戻ろうとする性質が強く思いどおりの形状にするために、加工温度や金型の工夫が必要で、なかなか思うような形状にすることができなかった。ただ、チタン板を加工するので、当時の製造技術の中では薄肉構造にできる可能性が優れていた。ほぼ、2年の歳月をかけて、当時としては超大型の230cm³チタンヘッドの開発に成功した。「PRO230チタン」の誕生である。
やさしい印象を与える落ち着いた膨張色のベージュ系のヘッド採用。女子プロからも大きな支持を受けヒット商品に!
名称は体積の大きさをそのまま採用し「PRO230チタン」に。ヘッドカラーは「落ち着きがありより大きく見える膨張色のベージュ系の半艶消し」に。
当時を今本氏が振り返って「サンプルを最初に見た時、大きすぎてちょっとこれは」「これはあり得ない」「プロに受け入れられない」との第一印象であったという。
ただ、このヘッドの大きさを生かすために、通常クラブ長さが43.5インチだったものを45インチとした。
クラブの名称、カラーリングは当時のクラブ企画部門を中心に決定した。名称は体積の大きさをそのまま使い「PRO230チタン」とした。また、ヘッドカラーについては、当時デザインを担当した外部の竹内幹雄アートディレクターによると「広くアマチュアでもやさしく飛ばせるとの思いから、落ち着きがあるより大きく見える膨張色のベージュ系の半艶消しにした」という。
当時の企画担当も最初にこのクラブを試打した時の感想を「230はバカでかく見えたが、打ってみると今までで一番飛距離が出た。45インチの長さの効果もあったと思う」と述べている。
「PRO230チタン」がヒットしたのは、たくさんの女子プロがこのクラブを使ったことが大きな要因であった。この点について当時の関係者は「開発部長から100個以上のヘッドを預かり、広めてほしいとの要望を受けて、毎週トーナメントに持っていき女子プロに試打してもらった」
「最初は大きさで嫌がったが、『テニスのデカラケと同じと思って打ってください』と試してもらったところ、去年より飛んだ、風に強い」との評価が多く集まった。
今の最新技術に生かされているのだ
発売開始は1993年2月。販売価格は11万円で、ロフトバリエーションは10度、11度、12度の3種類、シャフト長さは45インチ。
次第に契約プロ以外でも打ちたいとの要望が来るようになった。当時は、男子向けの難しいクラブを使っていた女子プロが多く、「PRO230チタン」の飛びとやさしさを実感した。
「一番多い時で、同じトーナメントで3割のプロが使っていたとの記憶がある」そうだ。
さらに、男子プロにも広がっていき、新しいカラーリングであったことも強い印象を与え、これまでにない大きさも含めて「ジャガイモ」の愛称で呼ばれたという。
「PRO230チタン」の発売開始は1993年2月。販売価格は11万円で、ロフトバリエーショは10度、11度、12度の3種類で、シャフト長さは45インチであった。当初の販売目標は初年度1万5000本だったが、女子ツアー界での評判も広まり販売にも大きな弾みがつき、販売目標を大幅に上回るヒット商品となった。
発売から30年、ヘッド体積は2倍になったが、当時の衝撃は今でも語り継がれ、新しい技術にチャレンジするブリヂストンの最新のクラブに生かされている。
商品開発はドラマ!!!今だから言える驚きのストーリー
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