ツアー競技でのルール事件は「他山の石」となり得るのか?

今年の夏以降、珍しくルールによる競技失格が女子ツアーで立て続けに起こった。

7月のミネベアミツミレディス北海道新聞カップの初日、ツアー7勝のベテラン、吉田弓美子がクラブ超過の対応ミスで失格。

9月の日本女子オープンでは距離計測器を複数回使用した、ツアー25勝の全美貞と最終予選を勝ち上がった木村円が失格した。

私は常々、ツアー競技のルール事件は、一般アマチュアにとってはそれこそ“重箱の隅”的な案件が多く、内容自体はあまり役に立たないと思っている。

だが、ルールとの向き合い方、付き合い方を見直すにはいい機会になる、とも考えている。

日本女子オープンの件では、ローカルルールの確認漏れがポイント。ルールに精通している者ほど、ルーティンの中で「つい、うっかり」陥りやすいミスでもある。

思い込みは危険!

こういった事例で忘れられないのは、2016年の伊藤園レディス。上原彩子が“リフト&クリーン”の処置を勘違いし、19回行って38罰打、15ホールで行ったため30罰打、計68罰打を受け、ツアー史上最多スコアとなる「141」を記録してしまったことだ。

雨でぬかるんだライから無罰でボールを拾い上げ、拭いてリプレースするのがローカルルールで適用された“リフト&クリーン”だったが、上原は慣れ親しんだUSツアーの“プリファードライ”と同様に“1クラブレングス以内にプレース”したのだ。

翌日、このことに気づいて申告したのは上原本人。おそらく同伴競技者では、気づかないぐらいの処置ミスだったはず。それでこの罰打はいかがなものかとも思うが、ここで教訓とすべきは“思い込みの怖さ”だろう。

ルールをしっかり覚えようとするほど「このルールの処置は、こうするはず」という“思い込み”〝に支配されやすい。吉田弓美子の失格も、同様の流れだったのではないだろうか。この件では、私もクラブ超過で失格はありえない、最大4罰打で済むはずでは、というのが“思い込み”だと分かり、大いに反省させられた。

ルールを確認する習慣を付けておこう

ポイントは、超過クラブに気づいた後の対応にあった。プレー2ホール目の2打目地点で吉田は超過クラブに気づいたが、そのままプレーを続け、次のホールのティーイングエリアで競技委員を呼んで報告。

一見、妥当な対応に見えるが、ルールでは「プレーヤーはプレーから除外するクラブを明確に示す行動をすぐにとらなければならない」のだ。

つまり気づいた時点で次のストロークを行う前に、マーカーか同伴競技者にそれを伝える必要があったわけだ。

どうせ自分だけのペナルティーだし、同伴競技者のプレーの流れを邪魔したくないし、次のティーイングエリアに競技委員もいるし…」と吉田が気づかったかはわからないが、この処置ミスは失格、というのが厳正なルール

もちろん、プロは知らなかったでは済まされないが、一般アマはどうだろう。クラブ超過なんて、練習ラウンドで15本以上入れることがあるプロなら結構ありうるかもしれないが、一般アマには無縁では。それなら処置方法まで厳密に覚えなくても、責められない気もする。

ただ、都度曖昧に判断せず、ルールを確認する習慣は付けておきたい。せっかくルールブックが紙からアプリに代わったのだから、スマホでチェックすればいい。

これを妨げる最大の要因も“思い込み”。この処置で正しいと思えば、それ以上調べるはずもない。だからこそ、ツアーなどでルールトピックスが上がった時が、その“思い込み”をクリアする絶好の機会となると、捉えるべきなのだ。

戸川景(とがわ・ひかる)

1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て(株)オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。


重箱の隅、つつかせていただきます

第39回(前回)を読む 第41回(次回)を読む

シリーズ一覧へ