昔やっていた練習はスイング作りの邪魔になっていることが多い
いまやスマホに声を掛ければすぐに電話がかけられる時代。おじいちゃんが孫に「受話器を上げて10円玉を入れてダイヤルを回して……」と教えても、ほとんど役に立たなくなってしまいました。
このようなミスマッチをいまだに抱えているのがゴルフ界です。「頭を動かすな」、「ワキを締めろ」、「手を使うな」、「上から打ち込め」と教え、それでミスしたら「いまのは力んだから」となる(笑)。
先日、ツアープロコーチの奥嶋誠昭さんと話している中で「自分たちが学生時代にやっていた練習で、今もやっていることはある?」と聞いたら、奥嶋さんはないと言っていました。僕も同感です。もちろん基礎的な練習についてはその限りではないけれど、悪いところを直そうとしてやっていたことについては、むしろ邪魔になってしまうことが多いという印象です。
無理もありません。当時は「クラブを上から入れろ」と言われても、何度の角度で入れるのがいいのか誰一人答えられませんでしたから。でも、この10年でスイング解析技術が普及して、見えなかった部分の可視化が進みました。これにより、どこをどうすればいいかが具体的にわかるようになって練習効率が飛躍的に上がりました。若いプロたちが猛烈に飛ぶのは、道具やトレーニングの進化によるものだけではない。体力で飛ぶんだったら20年前の大学生が300ヤード飛んでもおかしくなかったわけですからね。
また、日本のツアー界には、勝てるのは30歳過ぎてとからとか、経験を積まなきゃダメだとか言われた時代が長くありましたが、いまは最先端の知識があって体がバンバン動く若手選手におじさんは勝てません。明らかにパワーが経験や技術を凌駕していて、なおかつそういう子たちがカリキュラムで経験も積んでいる。ゴルフそのものが大きく変わっていると言っていいでしょう。
道具の変化もしかり。昔よりは道具が人間に近寄ってきていると思いますが、ゴルフが道具を使うゲームである以上、与えたれた道具で真っすぐ打とうとするのが我々のスイングなので、やはり道具の特性を知ることは重要です。アニメの『パーマン』(古いか!?)で出てきた自分のコピーロボットが2つあって、1つはボールがつかまらないクラブ、もう1つはつかまるクラブでゴルフを始めたらスイングは真逆になるでしょう。ただし、打感や打音は好みでいい。オールドゴルファーは打感にこだわる人が多いですが、中空のクラブでゴルフを覚えたら、それが打感の基準になるわけで感じるままでいいんです。
番手ごとの飛距離はキャリーで把握しておかないと意味がない
僕の時代は7番アイアンで練習することが多かったですが、いまのお客さんには8、9番で基礎練習をしてもらっています。短めの方が当たりやすく、ロフトもあって球が上がるからです。アイアンの場合、人それぞれに“この番手から上は難しい”みたいな境界があるようですが、これは長さとロフトに対する慣れの問題です。
例えば僕は6番が打てない時には7番の長さに握って打っていました。7番だと思って打てば6番ぽい球が出る。そこから徐々に長く握っていき自分の脳を騙しました。もちろん他の番手でも有効、番手による弾道の違いもわかるようになります。シンプルに“上の番手が打てれば下は打てる”式に脳を騙してもいいですね。逆に上の番手が打てなくなって抜くと、次に一番上になった番手が難しくなりますが、僕はそれを逆手にとって、あえてロングアイアンをバッグに入れることもあります。
これからゴルフをやる人は7番以下の番手で始めるといいと思います。
僕はクラブを長距離砲、中距離砲、短距離砲と考えています。ゴルフを始めるにあたっていきなりドライバーはキツいので、とりあえず短距離砲のPWで目の前のエリアに打つ練習をする。それができたら中距離砲の7、8番でちょっと前に飛ばす。あとは長距離砲のユーティリティあたりで、もうちょっと前に飛ばせればもうコースに行けます。実際、僕の初ラウンドは7番、PW、SW、パターの4本でした。クラブの選択肢が少なければ迷わないし、飛ばすクラブ、近づけるクラブ、乗せるクラブと割り切れて正しい使い方を修得しやすいんです。
一方、アベレージゴルファーから脱却するには、番手の飛距離を正確に把握することが不可欠です。機会があれば計測して番手ごとに自分の飛距離を覚えましょう。僕がトラックマンを導入して体験したのは、まず、“飛んだ、飛ばない”の飛距離祭りが始まること。それが落ち着くと、みんな自分の番手の距離を測るようになります。すると7番アイアンで155ヤードと思っていたのにキャリーは142ヤードだったりする。いいショットをしたのに手前のバンカーに入るのは142ヤードにバンカーがあったから。番手別の飛距離はキャリーを知らないと意味がないんです。
飛距離は朝と午後でも変わります。標高が高いと1番手飛ぶとか言いますが、それとて自分のキャリーがわかっていなければ対応できません。ジョーダン・スピースやダスティン・ジョンソンは、試合会場の高度に合わせて番手の距離を把握して試合に勝っています。「ここは1番手飛ぶと言われるけど、実は1番手じゃないんだよね」とちょっと余裕をもちながらプレーできるから勝てるんでしょうね。また、ランディングアングル(落下角度)が40度以上ないとボールはグリーンに止まらないので、そのアングルが出るのは何番までかも把握しておくべきです。
せっかくトラックマンのような計測器があるのですから有効活用しない手はありません。実のところ、データの世界にはみなさんが知らないことがたくさんあって、いまはそこまで考慮してゴルフができる時代になっています。データを礼賛するものではありませんが、正しく利用してゴルフに取り組めば、思っていることが徐々にできるようになって楽しみが増える。当然スコアもよくなります。
石井良介
いしい・りょうすけ。1981年生まれ。『令和の試打職人』として各種メディアに引っ張りだこの人気解説者。PGAティーチングプロA級。You tube「試打ラボしだるTV」が人気。早くからトラックマンを活用したレッスンを開始。高い経験値と分析力で正しいスイング、正しいギアへと導く指導と的確な試打インプレッションに定評がある。




