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ロフト58度を“58度で打つ打ち方”と“40度で打つ打ち方”は違います

石井良介のゴルフ・すべらない話:第21回

2024/04/24 ゴルフサプリ編集部

石井良介

石井良介の一面を一人語りという形でお届けする連載企画「石井良介のゴルフ・すべらない話」。第21回は、インパクトロフトについての話をします。
写真/ゴルフサプリ編集部

58度のウエッジでロフト通りに打ったらボールはどれくらい上がる?

みなさんはアプローチの時に、どれくらいの角度でボールを打ち出していますか? おそらくこの問いに即答できる人はおらず、答えに窮するか、使用クラブのロフトを口にされる人がほとんどだと思います。

例えばロフト58度のサンドウエッジ(以下SW)で、ハンドファーストに構えてショットっぽくアプローチすると、インパクトロフトは40度台になります。本来よりもロフトが立つ、ディロフトした状態で打つことになりますからボール初速が出て前へ前へといく球質になります。これはアイアンでダウンブローに打ち、ボールをしっかりとらえて遠くに飛ばすのと一緒で、アイアンをうまく打つコツとも言えます。

ディロフトがあればキープロフトもあります。ロフト58度のSWを58度のまま打つということですね。こうすると打球が高く上がります。ディロフト時に比べるとボール初速は遅くなり、硬かったり速いグリーンでボールを止めるのに適した球が打てます。

なぜこんな話をしたかというと、アマチュアゴルファーのほとんどは、自分がどれくらいのロフトでインパクトしているか理解していないことを知ってほしいから。ショットでもアプローチでも打つ前には球筋をイメージすることが大事ですが、残念ながらイメージと現実とが乖離している人が大半。そのためボールを低く打ち出したいのに高い球が出るアドレスをとる、といったようにチグハグなことになっている。58度のSWでロフト通りに打った場合に、どれくらいボールが上がって前に飛ばないかを理解していないんです。

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ディロフトして打つ時は、ハンドファーストでアドレスし、胸を右に向けながらトップへ。そしてお腹からダウンスイングすることでハンドファーストのインパクトになります。また、ショットと同様にインパクト後はクラブを左に引き入れる感じになってクラブヘッドがインサイドに動きます。左に抜くことでロフトが立つ動きになるのです。どちらかと言えばショットのミニチュア版のような感じ。特徴としては低くて強い球が出ますが、スピンがかかるので“キュキュッ”と止まります。基本的には前に行くエネルギーを帯びた球になりますから、アプローチではその兼ね合いを考慮して用いることになります。

ディロフトバージョンのアプローチ。ハンドファーストに構えて始動。お腹からダウンスイングしてインパクトへ。打ったあとはショット同様、クラブヘッドがインサイドに抜ける。低く強い球が出てバックスピンがかかる
ディロフトバージョンのアプローチ。ハンドファーストに構えて始動。お腹からダウンスイングしてインパクトへ。打ったあとはショット同様、クラブヘッドがインサイドに抜ける。低く強い球が出てバックスピンがかかる

一方、キープロフトで打つ場合には、クラブを垂直に構えてやや左側にボールを置き、左手をダランと垂らしたところでクラブを持ちます。胸を右に向けてテークバックからトップに行くのは変わりませんが、ディロフト時とは違って、ダウンスイングでは胸から下ろすイメージをもちます。腰から動かすのではなく、上半身から上げて上半身から下ろす。極端に言うとヘッドから下りてくるくらいの感じです。イメージ的にはハンドファーストにせず、むしろフリップ(手首を解く)しながら下ろしてロフトを戻します。

石井良介

こちらはインパクト後にヘッドがインサイドに入りません。練習場で打つ時にはマットや足場のラインに沿って立つ人が多いと思いますが、そのラインの延長線上より左にクラブヘッドが入りません。グリーンが速いPGAツアーのトーナメントを見ると、プロがグリーン周りのアプローチでヘッドを真っすぐ抜くことが多いのでよくわかると思います。これができると春先の芝が生えそろっていない薄いところからでもフェースを開いて柔らかい球が打てます。ロフト通りに打てると、前述したようにボール初速はゆっくりになります。ロブショットのように力強く振る必要がないので、ミスしても大ケガになりませんから覚えておくといい打ち方です。

キープロフトバージョンのアプローチ。クラブを垂直にセットして始動。ダウンスイングは胸から。イメージ的にはフリップする感じで打つ。インパクト後はヘッドが真っすぐ出て高く上がるボールになる
キープロフトバージョンのアプローチ。クラブを垂直にセットして始動。ダウンスイングは胸から。イメージ的にはフリップする感じで打つ。インパクト後はヘッドが真っすぐ出て高く上がるボールになる




石井良介,アプローチ

ゴルフ場ではやりたいことではなく求められていることをやる

キープロフトで打つかの判断基準の一つは地面の抵抗が強いか弱いか。弱ければ振らなくていいのでキープロフトでアプローチできます。まずはライ次第ということですね。あとはピン位置が手前か奥かでも変わりますが、本当のことを言うと最終的にはインスピレーション。その瞬間に「自分はこれでいこう」という方法が浮かぶようになってほしいところです。僕はアマチュアの方に指導させていただく立場ですから、なぜこの状況でその方法が浮かんだのかを説明できないといけない。ラウンドレッスンなら「ここから石井さんだったらどう打ちますか?」と聞かれるので、それに対する答えを用意しているだけです。おそらくツアープロたちは僕など経験したことがない、もっと難しいところから寄せる方法を知っていますが、なぜそうするのか、すぐには説明できないと思います。

抽象的になってしまって恐縮ですが、インスピレーションを得るには、いかにクラブと会話するかだと思います。おしなべてアマチュアゴルファーは、ラウンドで自分のやりたいことを優先しすぎる傾向があります。ゴルフ場は自分がやりたいことをやる場所ではなく、求められることをやる場所です。シチュエーションによってやってもいい項目がいくつかあって、そのどれかを選ばなくてはいけません。ドライバーショットでもそうで、クリアしなければならない条件がいくつかあるのに、みんな真っすぐ飛ばすことしか考えていない。だからゴルフがゲームとして成立しないんです。

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僕が生徒さんに教えることにしても、すぐに信じてはダメで、まず試してみて、よさそうなら取り入れる。その方法がダメなら別の方法を教えます。今はみんな遠回りしたくない時代。最短距離で解決策に辿り着きたいんです。気持ちはわからないでもないですが、それって冷静に考えるとTVゲームと攻略本を一緒に買うみたいなもので、マニュアル通りにやって何が楽しいの? という気持ちになる。もっと寄り道したり、試行錯誤する楽しさを見つけてもいいんじゃないかと思います。

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石井良介

石井良介
いしい・りょうすけ。1981年生まれ。『令和の試打職人』として各種メディアに引っ張りだこの人気解説者。PGAティーチングプロA級。You tube「試打ラボしだるTV」が人気。早くからトラックマンを活用したレッスンを開始。高い経験値と分析力で正しいスイング、正しいギアへと導く指導と的確な試打インプレッションに定評がある。


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