NEW・名門ゴルフ場|吉井カントリークラブ(群馬県高崎市)Part1
リサオの『NEW・名門ゴルフ場』探訪
名門ゴルフ場という言葉があります。名門テニスクラブはあるけど、名門卓球場は聞かないので、たぶんハイソサエティの人々が集まる方便にスポーツを使った名残なんでしょう。イメージは歴史がある、閉鎖的、特権階級。でもゴルフは草っ原で始まったスポーツ。肩肘張らない開かれた名門ゴルフ場も実は数多くあるのです。誰もがプレーできるそんなゴルフ場を紹介します。
文・写真・絵
リサオ(大隈里砂)
元超インドア文学少女。遅咲き・狂い咲きゴルファー
ウェブストア https://lisaomania.stores.jp/
コラムニスト、似顔絵作家、イラストレーター、フォトグラファー、翻訳家(英語)として(自称・ひとりスキマ産業)、主にゴルフ業界で活動
プレースタイル:山っ気たっぷり、策に溺れ式
特技:無駄ロブ(不必要なロブショット)
好きなライ:ヘンなライ、下りフック
苦手なライ:フェアウェイど真ん中
好きな言葉:インテンショナル
子供の頃の将来の夢:電気屋さん
日本にもあるハワイ。興奮度MAXなゴルフ場
日本にあるハワイといえば、昭和の子がまず思い浮かべるのは『スパリゾートハワイアンズ』だと思います。元の名を『常磐ハワイアンセンター』といいました。福島県いわき市にございます。平成18年には映画『フラガール』の舞台にもなりました。ちなみに15年ぐらい前に行ったときに「行こう湯こう湯の国へ、行こう湯こうハワイアンズ♩」って曲がずーっと流れてて完全に刷り込まれました。しかもメロディは「はこうはこう鬼のパンツ♩」。ズルいよ。今でもたまに脳裏に浮かんで気がつくと口ずさんでることがあるのでキケンです。これを読んじゃったからには、皆さまにもぜひ刷り込まれ仲間になっていただきたい。あしからず。
そういえばゴルフを始めるきっかけになった場所がハワイアンズだったんですよね。仲の良い連中が皆ゴルフにハマっていて、たまたま福島のゴルフ場でコンペをするという。ああそうですかそうですか。ゴルフなんて何が楽しいのかサッパリわからんわ、と思ってた頃です。子供の頃は爺さんと一緒にゴルフトーナメントをテレビで見てたし、オトナになってからはPR会社でゴルフコンペの裏方業務もしてたけど、漠然と自分とは無縁なものだとカテゴライズしてたのです。だからゴルフはしたくない。でも友達とは遊びたい。そしたら「リサオも来ればいいじゃん。前泊するから、美味いもん食べて、温泉もあるしさ、翌日は常磐ハワイアンセンターにでも行って遊んでればいいよ」と。たまたまそのとき腕を骨折してゴルフができない子がいたので2人で遊んでればちょうどいいだろうというわけです。他にやることもなかったので同行して、宴会して、翌朝は皆のティーショットの写真を撮って見送ってから、ハワイアンズで時間潰して再び合流というスケジュール。
だけどそのときもやもやしてたのですハワイアンズで。いいオトナだし前夜の深酒で眠かったしプールでフィーバーって感じでもなく、まあ実は全然フィーバーできるんだけど、一緒に行った子がなにしろ腕を骨折しているので、置き去りにして一人でキャッキャするのも憚られた。じーっとして、プールをぼんやり眺めてたら、ゴルフ場でなんか楽しそうだったなあって皆の顔が浮かんできた。それに引き換え今のこの状況はそんなに楽しくないなあという思いも。それで、自分は活字中毒の超絶インドア派だし運動にもゴルフにも全く興味はないものの、なにしろ皆がゴルフに夢中なので、一緒に遊ぶためにはカタチだけでもゴルフするしかないのかもしれんぞと考えていたのです。なによりもこのオマケみたいな扱い、お父さんのお仕事が終わるのを待つ子供みたいな状態が不本意だった。そもそも誰かの都合に合わせるのは性に合わない。主体でいるためには先頭集団に加わるしかないよなーと。
それが始まり。終わりの始まり。人生がではなく、経済崩壊の始まり。だってもうゴルフのことしか考えられなくなって、後先考えずに有り金全部ゴルフにぶっ込むような子になったのですから。ゴルフ始める前は老後について真面目に考えて貯金なんかもしてたのに、いざハマったら、今を生きるんだよ、明日どうなるかなんてわかんないんだから今イマのこの瞬間を楽しむんだよ。老後?そんなもんあるかいな、ずっと現役だわと本人ですら同一人物とは思えない進化を遂げたのです。そして今コロナにとどめを刺されて、あの頃よりもっとずっといいオトナなのに友人宅に居候しようとしてる。けどそれもまた一興。
まあそういうわけで、ハワイアンズがわたしのゴルフの起点なのです。あのとき行ってなかったらゴルフ始めてなかったかもしれない。ゴルフやってなかったらそれはそれは退屈な人生だったに違いない。友達もいなくて本ばっかり読んで不眠症で不健康で不満だらけで早死にしたかも。ああよかった。
それはさておき、今回のハワイは福島ではなく、
日本でいっちゃんハワイなスポットは群馬にある
そう、群馬なのです。高崎市にあるの、吉井カントリークラブって名前のハワイが。前々から噂には聞いてたけど、実際に行ってみたら度肝を抜かれました。テンション上がりっぱなしで鼻血が出そうだった。なんたってゴルフ場というよりアトラクション。お茶屋のおねいさんに聞いたところによると、1996年の開場当初は普通の林間コースだったらしい。しかし経営がSANKYOに代わって大改造、浅間山から溶岩や岩石をせっせと運んで、数年後には徹底的にモーレツに本気のハワイになってたんだって。なにしろ溶岩や岩石の量が尋常じゃない。一体どんだけの日数とお金と人員を導入したんだろうか。社長さんはなにかに取り憑かれておられたのですね。ありがたいことです。これはもう完全にハワイのゴルフ場。なんならハワイよりもハワイらしい。
エントランスからこれですよ。というか、ゴルフ場に着くちょっと前から右も左も溶岩だらけの道を進んできたのです。「え?え?どういうこと?これ全部敷地?ぎやあー!ここどこー!に、に、日本の、ぐ、ぐ、群馬のはずがないー!」。ああもう半狂乱です。
"We love golf / We love YCC"
はい。愛してる。愛してますとも。
YCCのYはクジラの尻尾になってます。
ハワイだハワイだって騒いでるけどホントにハワイかよとお疑いのあなたに、6年前に撮ったホンモノのハワイ島の写真も載せておきます。まー比べてみるとね、樹木がね、そりゃあね、ハワイだ。でも遜色ないと思います。チョー頑張ってる。コース内だけじゃなくて、全部ひっくるめて徹底的にハワイアンリゾート感を演出してるとことが素晴らしいのです。
そういえば何故か全然記憶にないんだけど、ここは2009〜2011年の『SANKYOレディースオープン』の会場だったんですね。パチンコ台製造メーカーのSANKYOの主催で、創業地である群馬県を舞台に行われていた日本女子プロゴルフ協会公認のトーナメント。ちなみに2020〜2008年は桐生市にある赤城カントリー倶楽部で開催されてました。
クラブハウスのエントランス。どこもかしこもディテールがすごいわー。
そしてスタイリッシュで落ち着くロビー。ずっとソファに転がっていたいです。
いろんなとこに飾られてるハワイアンキルト。
他にも絵やオブジェなどハワイのフレーバーに満ち満ちてます。
ロッカールームとかトイレとか、サインももちろんハワイ。
最上階。レストラン手前のスペースにもいろいろ飾られてました。ギャラリーのようだ。大きな開口窓で開放感満載。
その窓硝子を外から見るとこんな感じに青い。趣のあるクラブハウス外観。
ちょっと遠目のコース内から。青い!
このガラスの色とかデザインのトーンはお茶屋さんにも統一感あります。
ちなみに地面にはめ込んである石はハワイ諸島をあらわしてるってお茶屋のおねいさんが教えてくれました。確かに一番手前はビッグアイランド。
カメがいるのわかるかな?なにしろ芸が細かいのですよ。
お茶屋さんのガラスも青い。斜面にはカメ。後々出てくるけど斜面に結構いろいろいます。ここに来たらゴルフには決して集中しないでキョロキョロするように。こんなに楽しい場所でゴルフに集中するなんて冒瀆です。人生損します。2打目地点やグリーン奥から後ろをマメに振り返ることもオススメします(※用語集参照)。
NEW・ゴルフ用語集
丘・あの丘:ティーイングエリア
シグネチャーホール間:『シグネチャーホール・間』ではなく『シグネチャー・ホール間』。ホールとホールの間、ホールと全然関係ないとこで印象に残る場所のこと
振り返りのススメ:飛球線方向以外を見る、特に振り返ると驚きの美しい光景が広がってることが多いよ!
どんぶらこ:アップダウンやアンジュレーションのこと
サバンナ系:アフリカのサバンナを彷彿とさせる光景が見られるコースのこと。河川敷に多い印象
イケメン:池を見ると平常心を失って力が入っちゃう池メンタル=お豆腐メンタルのこと
ゴルフがちょっと慌ただしい:ヘタの言い換え。上手い人でもヘタな日はある。だからって心底ヘタってことじゃない。そもそもゴルフは上手いヘタじゃない。評価基準は楽しいか楽しくないか、楽しんでるか楽しめてないかだけ
その日暮らし:お悩みや平均スコアを聞かれたときの返事。用例「いやあ、なにしろ人生もゴルフもその日暮らしなもんで」
とんがり君:山でも岩でも、とんがってる物体はみなとんがり君
ゴルフは禅問答:良かれと思ってやったことが報われない。ケガしてるのに普段より良かったりする。ゴルフって何が幸いして災いするのかサッパリわからん。いっそトンチをきかせればいいとゆーの?
無駄ロブ:全然必要じゃないシチュエーションで一見無意味に放った高い球のこと。だいたいショートするけどそれでいいの。ロブショットが打ちたいだけだから
そういえば、吉井CCのモチーフはクジラとイルカとカメです。クラブハウスのそこここにいます。
クジラとイルカとカメはコース内にもたくさんいます。あ、その前に、スコアカードにまず描いてある。これ見てわかる通り、『丘(※用語集参照)』の選択肢は3箇所。バックティ、レギュラーティとフロントティです。
これはただのデザインじゃなくて、スコアカードに絵が描いてるのにはワケがある。それはコースに出るとわかるんだけど、ティーマークがこの絵だということをスコアカードであらわしているのですね。
これね、イルカだけはかろうじで内側が白いから判別できるけどね、後ろから見たら全部おなじ色だから。だいたいのゴルフ場が赤白青みたいにティーマーク自体に色をつけるか、ティーマークはおんなじでも内側に色を塗ってるか、まあまあ識別しやすくなってるでしょう。そこいくと吉井CCはこのように激しくシンプル。でもこんなふうに石に模様が描いてあるティーマークって確かにハワイやアメリカ本土のゴルフ場でわりと見かけます。味があって大好物です。それにしてもこの子たち、最初の2ホールぐらいは「あれ?どっから打つんだっけ?」ってなりました。どーんって広いコースのそこいらじゅうに溶岩だの岩石だのが転がってて、『丘』が完全に景色に溶け込んでるもんだから「どこー?」って宝探しみたいで楽しかった。最終的には「あたしはカメだから。ドジでノロマなカメだから(昭和の言い回し)」、つまり「カメを探せ」ということで落ち着きました。同伴の男性陣も「クジラクジラ」って唱えてた。ほっこりします。
「バックティーはこちら」のサインもめっさ可愛い♡そして背後の苔むしてる岩たちが美しい。
そういやさっきのお茶屋さんの地面にはめ込まれた岩んとこにも「スッテンコロリン要注意」のサインがあったよ。岩に描いてあるのって情緒があっていいなあ。
このように完全に完璧に緻密にプロデュースされてる吉井カントリークラブ。『NEW・名門ゴルフ場』ではお高い名門ではなく誰もがプレーできる身近なところを紹介していますが、そういう意味ではこちらはプレーフィに関しては「きゃ!」ってなるかもしれません。でもその価値はある。だし、こんだけのものを見せてもらえるなら喜んで払いますとも!という気になります。頑張ってお高い名門に行ってお行儀良くして窮屈な思いをして高い金額を払うのとは全然違います。わたしは極めてカジュアルなタイプなので、そういうとこって一度行ったらもういいやってなるとこが多いんだけど、吉井CCはまたすぐ行きたいもん。そんでもって実は公式サイトにある金額よりお得に行く方法があるのです。ググってもらえばすぐわかります。
あとすごいのは、こちらなんと1日20組限定なんですと。スタートは12分間隔。時間がゆったり流れてる。おかげさまでコース内で人っ子ひとり見かけませんでしたわ。まるっきりプライベートコースな気分。追われることも待つこともなくスイスイまわれてサイコーでした。あああーしゃーわせな時間をありがとう!
いやあ久々にゴルフ場で写真を撮りまくりました。だって、どこ見ても絵になる。次回以降もじゃんじゃん紹介していきます。
【シリーズ一覧】
●第1回:NEW・名門ゴルフ場|サニーカントリークラブ(長野県佐久市) Part1
●第2回:NEW・名門ゴルフ場|太平洋クラブ佐野ヒルクレストコース(栃木県佐野市)Part1
●第3回:NEW・名門ゴルフ場|四街道ゴルフ倶楽部(千葉県四街道市)番外編 Part1
●第4回:NEW・名門ゴルフ場|キングダムゴルフクラブ(埼玉県秩父市)Part1
●第5回:NEW・名門ゴルフ場|志摩シーサイドカンツリークラブ(福岡県糸島市)Part1
●第6回:NEW・名門ゴルフ場|千代田カントリークラブ(茨城県かすみがうら市)Part1
●第7回:NEW・名門ゴルフ場|吉井カントリークラブ(群馬県高崎市)Part1