トッププロに学ぶスイング力アップのポイント(タイガー・ウッズ|申ジエ|青木功)|三觜喜一が贈る「80台ゴルフを実現するスイングの作り方」
驚くほど“芯を喰う”ようになる! ! MITSUHASHI MAGIC大特集 Part3
正しいクラブの使い方とそのポイントがわかったところで、世界のトッププロのスイングを見本に、それがもたらすメリット、さらには参考にするべきところを教えてもらおう。お手本はタイガー・ウッズ、申ジエ、青木功の3巨頭。アスリート志向の人はタイガー、アベレージなら申、ベテランは青木を参考にしていただくといい。
GOLF TODAY本誌 No.582 42〜55ページより
タイガー・ウッズ|クラブを動かし続けてインパクトゾーンを長くする
タイガーのスイングにはフェース面を当てる動作が一切なく、常に腕を回している。ひとたびスタートしたらクラブが止まることなくフィニッシュまでいく。
アドレスではお尻が高い位置にくる
側屈を入れてクラブを上げ下げする
クラブを引きながら回し続ける
円弧は小さいが柔らかく野性的な動き
全身が連動してクラブの動きを止めずに遠心力を使う
トップでわずかに止まる松山英樹選手のように、プロでもクラブを止めずにフィニッシュまでいけるプレーヤーは多くありません。その点、タイガーはデビュー当時から現在に至るまで、クラブの挙動がスムーズで途絶えることがなく、まるで素振りの途中で打ってしまうよう。ボールに反応する感じが一切ありません。
さらに、その前提でノックダウンなどのバリエーションショットも打てる。スクエアに構えて右からフックを打つのは、プロでもなかなかできませんが、これはスイング中にクラブを回し続け、クラブを遅らせた状態でボールをヒットできるからです。
また、イメージは力強いですが、間近で見るととても柔らかく、軽く振っている印象です。これは全身が連動してクラブの動きを止めることなく遠心力を使っているから。当たり前のようにクラブを引き続けているため、それほど力感がないのです。動き続けるクラブに逆らわないのでミスがミスにならない。大きく曲がる場面がよく映し出されるのは珍しいからにほかなりません。それだけクラブの使い方がうまいということです。
ダウンスイングで手を低い位置に下ろす
ヒジから先が回り続ける過程でボールをとらえる
クラブを引き続けながら打てるとゾーンでインパクトできます。世界一インパクトゾーンが長いタイガーはその代表。ダウンスイングで手が低い位置に保たれるのは引っぱり続けている証です。止まっているボールに当てようとするとこうはなりませんから、タイガーの中にボールを固定的にとらえる感覚はないと思います。
このように動くには、ヒジから先が回り続ける過程でボールをとらえること。そしてクラブに連動して体が動くようになることです。
タイガーはこれまで何度もスイング改造してきましたがクラブの動き方は変わっていません。プロはタイガーのインパクトゾーンを目指し、アマチュアはハンドファーストのインパクトを参考にするのが上達への第一歩だと思います。
クラブを引き続けると手の位置が低くなる
スイング中クラブは回り続ける
腰高アドレスがタテに振る動きを演出
申ジエ|インパクトでブレーキをかけないクラブが回り続けるスイング
どんなショットでもスイングバランスが抜群で、絶対にフィニッシュで崩れない申。バックスイングから延々とクラブが回り続けるイメージだ。
素振りの延長でボールを打つ
クラブが動きたいように動く
素振り感覚でビハインド・ザ・ボールになる
速く振るほど全身運動になる
右回りさせず「してしまう」のが申のスイング
300ヤード先のプレーヤーを見た時、打っているかいないかわからないのは、日本ツアーでは申だけ。ほかのプレーヤーにはみんなインパクトがありますが、彼女のスイングにはありません。それだけクラブに遠心力をかけ続けて止まるところがないスイングです。
見た目には分かりませんが、日本のプレーヤーは8割方インパクト前にブレーキがかかります。それにより、すくい打つ形になってボールが高く上がる。スピン量の少ないドライバー系の打ち方で距離を稼ぐパターンが多いですが、これだとスイングが安定しません。
申プロはクラブの回転力でボールを飛ばすのでスイングの再現性が高い。世界一と言っても過言ではなく、それがショットの精度を極限にまで高めています。
なぜそうできるかというと、クラブの重心をキャッチするのに長けているから。言い換えると、クラブに逆らうことなく道具の自然な動き利用して打っている。スイング中、クラブは右回りしますが、右回り「させる」のではなく「してしまう」のが究極。申プロはまさにそんなスイングをしています。
右回りにクラブを回し続けるイメージ
左手一本で打ち続けられるスイングを目指す
素振りで永遠に振り続けられるスイングを目指す
申プロの合宿ではボールを打つ回数の何十倍も素振りをするそうですが、これが重心のキャッチにとても役立ちます。
静止したボールを打つ場合、クラブの重心をコントロールできなくても当たります。高い次元で飛距離や方向性は担保できませんが、とりあえずは打ててしまう。これがアマチュアのスイングです。
ところが素振り、とりわけ連続素振りは重心がズレた瞬間に続けられなくなります。例えば途中でボール打とうとして体が突っ込んだ瞬間に動けなくなるのです。
逆に重心をコントロールできると永遠にでも振っていられる感じになります。申プロはツアー会場でもよく素振りをしています。アマチュアもこれを見習うべき。ゴルフを知らない人が素振り一色から始めたら、一度も空振りせずにスイングを覚えられます。
日本人プレーヤーの8割はインパクトでブレーキがかかる
体の前で永遠にクラブを回し続けられる!?
青木功|腕をしなやかに使って打つ
腕をしなやかに使って打つ青木功。変則的に見えてもクラブを引き続けていることに変わりなし。体力が落ちてもクラブの遠心力を使って打てる省エネスイングだ。
手首が使えるアドレス
左手主導でヘッドを高い位置へ
肩や腰が回って全身運動になる
クラブを引き寄せない
手元が先行してインパクトへ
スピネーションでつかまえる
腕が主導のスイングながらクラブの運動力学を見事に体現
青木プロのように腕を使えると、クラブがしなやかに動いてしなりが使えるので、遠心力を最大限に生かせます。
まず前傾を深めハンドダウンで構える。手首が伸びずに曲げやすくなるため、テークバックでリストコックを使いやすくなります。始動ではその場でヘッドを上げるように見えますが、腕を振りながらなので、明らかにクラブは引かれています。また、左手主導で動いているのでクラブがスピーディに上がり、切り返しでは手元とヘッドがしっかり反転。クラブを引く準備ができます。
ダウンスイングは右ヒジを伸ばすことでクラブを下ろします。ヒジを曲げたまま引きつけるように見えますが、実際には引き下ろしているだけ。その結果タメができ、インパクトに向かってヘッドが遅れてきます。腕が主体で下半身を追随させるスイングながら、クラブの運動力学を見事に体現している。とても長持ちするスイングだと思います。
手の滴を払うように右ヒジを一気に伸ばす
早めの左リストコックで右ヒジをたたむ
80台に向けてスイング力がアップするオススメ練習法
①ボール投げドリル
大きなボールを遠くに投げるように動く
両手で大きめのボールやカゴを持ち、飛球線方向のなるべく遠くに投げるイメージで動く。遠心力を落とさないフェース使いが習得できる。
②紙コップドリル
ボールの後方に紙コップを置いて打つ
ボールの後方50センチほどのところに紙コップを置き、それに当てないようにボールを打つ。インから低く下ろすスイング軌道が身につく。
③片手スイングドリル
片手で振るとクラブが重力に逆らわない
クラブの重さがダイレクトにかかるのでクラブが動きたいように動く。左手1本では自然にクラブを引きながら体を使って動こう。
④支え棒・手打ちドリル
右ヒジの曲げ伸ばしだけで打つ
アドレスで7番アイアンを左手に持ち、ボールの先に支えるように立てます。その際、左ヒジは真っすぐに伸びた状態にしましょう。そして、右手にはウェッジを持ち、右ヒジをたたむようにしてバックスイングし、右ヒジを一気に伸ばしてボールを打ちます。ヒジの伸び方が中途半端だと、きちんと当たらないので注意しましょう。
取材協力/箱根湖畔GC、修禅寺CC、SHIZUOKA GEARS LAB、オットチッタ、三島GC
三觜喜一
みつはし・よしかず 1974年生まれ。神奈川県出身。PGAティーチングプロ。10歳でゴルフをはじめ、プロ転向後1999年からレッスン活動をスタート。体に無理のないスイング作りを提唱し、早くからジュニアの育成に手腕を発揮。辻梨恵をはじめ多くのプロを育て指導を続けている。MITSUHASHI GOLF ACADEMY主宰。YouTube「MITSUHASHI TV」は登録者数30万人を超える。
驚くほど“芯を喰う”ようになる! ! MITSUHASHI MAGIC大特集【シリーズ一覧】
●Part1 80台ゴルフを実現するスイングの作り方
●Part2-1 正しいクラブの動きは右手だけでクラブを振るとわかる|三觜喜一が贈る「80台ゴルフを実現するスイングの作り方」(1/2)
●Part2-2 クラブは時計回り! 右旋回しながら下りていく|三觜喜一が贈る「80台ゴルフを実現するスイングの作り方」(2/2)
●Part3 トッププロに学ぶスイング力アップのポイント
●Part4 ミスが出る最大の原因は〝構え方〟にあり|ミスはアドレスで直す!