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ゴルファーに春を告げるマスターズ

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第13回

2022/04/10 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

マスターズ

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

写真/Masters Official

そもそもマスターズとは?

ゴルフをしない人でも、マスターズというトーナメントは知っていることがあります。ゴルフにおける四つのメジャー競技の一つで、昨年(2021年)、松山英樹プロが優勝したトーナメントです。早朝のテレビ中継で、美しい緑のコースと咲き乱れる花々が映る特別感もあります。

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親と一緒にマスターズのゴルフ中継を見ていて、ゴルフって楽しそうだ、と思って、ゴルフを始めました、という話も時々聞きます。

マスターズは、特別なトーナメントです。
参加できるのは、マスターズ委員会から招待状が届いたゴルファーだけという招待競技で、そもそもは、アメリカが誇る伝説的なゴルフヒーローのボビー・ジョーンズが、空前絶後の同一年に4大メジャー(ジョーンズはアマチュアだったので、全米オープン、全米アマ、全英オープン、全英アマ)に優勝するという偉業を達成して、若くして引退をした後、1934年に当時の第一人者だけを集めたジョーンズの個人的な招待競技がマスターズになっていくのです。

マスターズグリーンと呼ばれる緑をイメージした戦略は、本当に徹底していて、会場内で売られているコカコーラのコップも、こだわりのコンセプトカラーの赤ではなく、緑に統一されています。

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マスターズの歴史は、アメリカのゴルフ界をリードしてきた歴史です。
ギャラリーとの境界をロープで区切ったり、スコアボードを設置したり、途中経過をパーを基準にオーバーやアンダーでわかりやすく表現したのも、マスターズが発祥だと言われています。

メジャーの中で、毎回、同じコースで開催されるのはマスターズだけです。
会場のオーガスタナショナルは、厳格なメンバーシップコースですが、冬と夏はクローズして、春と秋にしかプレーできないマズターズ専用コースといっても過言ではないコースです。

オーガスタナショナルは、開場してから約90年間、ゴルフの進化に合わせて、コース改造を繰り返してきました。それもまた、ゴルフ界のハイレベルな基準となっているのです。

マスターズについて書き出せば、本が何冊も出来てしまうほどキリがありません。とにかく、4月の1週目は、マスターズウィークと呼ばれていて、世界中のゴルファーに春の訪れを(北半球の)知らせているのです。

見るだけではなく語り合ってこそ

僕の友人で、腰を悪くして、約20年前にゴルフのプレーが出来なくなってしまった男がいます。

年に1回ぐらい、彼と会う機会がありますが、数時間はゴルフ談義で盛り上がるのです。プレーは出来なくとも、観るゴルフをやめてはいないからです。アメリカツアーの情報などは、僕よりも詳しく、熱心なゴルフファンです。

昨年末に、彼と会ったときは、マスターズの話だけで2時間半も語り合いました。充実したゴルフ談義になりました。もちろん、松山プロが優勝したことがメインでしたが、優勝の瞬間、テレビの前で泣いたそうです。会社には遅刻して、同僚から呆れられた、とも話していました。

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ゴルフのプレーをしないのに、ゴルフを熱く語る“口だけ番長”だと、彼を否定する友人もいます。ゴルフは罪なヤツです。
プレーすることは基本かもしれませんが、鉄道オタクに撮り鉄や乗り鉄などの種類があるように、ゴルフオタクにも種類があっても良いと、僕は考えています。
「いやいや。ヤツは立派なゴルファーだよ」
と、そういう話が出るたびに、彼を擁護しています。

日本人選手の活躍とは無関係に、録画してでもマスターズを見て、ゴルフ談義をするネタにして欲しいと心から思うのです。
トリビアとしても、マスターズはネタに困りません。

例えば、マスターズにはどうして深いラフがないのか? わかりますか。

実は一昔前までは、マスターズには本当にラフが存在しませんでした。
現在は、ラフという呼び方ではなく、“セカンドカット”と呼ぶフェアウェイよりも芝生が伸びたエリアがあります。それでも、他のメジャートーナメントに比べれば、ラフとして機能していません。アマチュアでも楽々打てそうな刈高なのです。

深いラフがないのは、創設者であるB・ジョーンズの考え方が表れている、といわれています。
ジョーンズは、深いラフでボールがロストしてしまうことを厳しすぎるペナルティーだと考えていたことが一つ。
ラフのボールを探す時間が、スロープレーの一因になっていると考えていたことが一つ。

ラフはなくとも、ゴルフの面白さが減少することはない、と結論を下して、オーガスタナショナルを作ったそうです。

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日本のゴルフコースも整備されているところが多いという意味では世界一ですので、ヤバすぎるラフは、一般営業しているコースでは体験できません。
ちょっとだけオーガスタナショナルを味わえるのだと考えれば、きれいに刈り込まれて、楽に打てるラフにボールが行ってしまっても、気分が違うというものです。

真っ白いバンカーの砂が、周囲のグリーンとのコントラストで美しいのもマスターズのイメージです。
あの砂は、ネバタ州の珪石粉の白色系の砂を使っているといわれています、というのも豆知識です。

バブルの頃、日本のコースでも、中国産の真っ白い砂をバンカーに入れるのが流行りました。マスターズを意識してのものです。粒の隙間が大きいことが白の発色の良さに繋がるので、常にフカフカで、ボールが目玉になりやすい砂に苦労した記憶があるオールドゴルファーもたくさんいると思います。

マスターズの疑問や豆知識を語り合うだけでも、楽しい時間になることは間違いありません。

松山英樹

マスターズで自分もレベルアップ!

20世紀末まで、マスターズの中継はインコースのみでした。
アウトコースは、コースで観戦するパトロン(マスターズはギャラリーをパトロンと呼びます)だけしか見られなかったのです。

タイガー・ウッズの登場で、彼の全てのストロークを見たいという要望と、ぶっちぎりで勝ってしまうので、前半で勝負がついてしまうことへの配慮が、アウトコースの中継に繋がったという説がありますが、いずれにしても、アウトコースがテレビ画面に出たときには、かなり興奮したことを覚えています。

以前は、早朝に3時間ぐらいの中継でしたが、現在では、メディアを駆使すれば、日本にいても、毎日10時間ぐらいの観戦が可能になりました。練習場の定点カメラや、アーメンコーナー専用カメラをチョイスして見続けることが出来るメディアもあります。
本当に素晴らしい時代になりました。

時差があるので、ライブで見るのは…… という人も、録画をしてでもマスターズは見てみるべきです。

マスターとは名人のこと。
マスターズは、世界中から集まったゴルフ名人たちが、最高の調子で競い合っている瞬間を見せてくれます。

ゲームとして勝ち負けの行方を追うのも楽しい時間ですが、録画した映像を見ながら、自分にプラスになる楽しみ方もあるのです。

「このプロが良いなぁ」というプロを選んで、成功したことがわかっているショットを選びます。
何度か再生して、動きを覚えてください。
クラブを持たずに、ちゃんと構えて、シャドースイングをします。フィニッシュまで、完全コピーをしてみるのです。

最後に、画面にそのシーンを流しながら、アドレスに入って、スイングまで、一緒にやってみましょう。

9割以上のゴルファーは、これをやるとビックリします。
見たイメージではわからないのですが、画面と合わせて動作すると、とんでもなく早いからです。

スイングスピードが速い、というのではなく、セットアップも、打つまでの間も、早いのです。

無駄がない動き、余計なことを考える間もないルーチン、名人のエッセンスは、初級者でも吸収できます。
そして、その日のゴルフから、取り入れることが可能なのです。

マスターズは、最も中継される時間も長く、色々なショットやストロークが取り出せるトーナメントです。
フルショットだけではなく、パットもやってみると勉強になります。
自分が下手な理由や不調の理由を教えてくれるのもマスターズなのです。

マズターズは、春を告げてくれます。
2022年のマスターズをきっかけに、自らのゴルフ人生の春を謳歌できるか? 信じる者は救われるのです。

篠原嗣典

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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