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なぜゴルフのグリップは指を絡めるのか?

100切りなんて簡単だ!エージシューターの極意 第16回

2022/09/07 ゴルフサプリ編集部 高橋健二

ゴルフ,グリップ握り方

100切りを目指すビギナーから、つねに80台前半で回りたいと思うアベレージまで、ゴルフが上手くなりたい人は必見!エイジシューターがやっている練習法や体調管理、スコアメイク術からホール攻略法まで詳しく紹介します。

ヘッドを動かす動力源は「重力加速度」

ゴルフボールは、クラブのヘッドで打ちます。では、ヘッドを動かす動力は何か、考えたことがありますか?
ふつう、ヘッドを動かす動力なんて、誰も考えませんよね。でも私の師匠の佐久間馨プロは、それを考えちゃう人なんですね。ヘッドを動かす動力源は何か?

ふつうにクラブを持って、手首のコックでヘッドを上から下に振り下ろしてみてください。ヘッドは地面にトンとぶち当たりますよね。この動き(クラブを握り、左手親指側に手首を折って、上から下に振り下ろす動き)は、ヘッドの重さを利用して振り下ろすので、人の力を加えなくてもヘッドに勝手に加速がつきます。

この「重力加速度」が、クラブを動かす動力源としては、一番力がいらず、最も合理的なのだそうです。

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遠くに飛ばせるのはテコの原理を使っているから

テコの原理

この動きは、あなたが小学校3~4年生のときに理科で習った「テコの原理」を応用しています。テコの原理をもう一度思い浮かべてください。

テコは「支点」「力点」「作用点」の3つから成り立っています。ゴルフに置き換えると、支点は、右手と左手の重なった部分、インターロッキングやオーバーラッピングの右手小指と左手人差し指を絡めた部分です。力点はグリップエンド、作用点はヘッドです。

ゴルフのグリップは、インターロッキングにせよ、オーバーラッピングにせよ、右手小指と左手人差し指を絡めますよね。なぜだと思いますか?

最近でこそテンフィンガーグリップ(ベースボールグリップ)のように、右手小指を左手人差し指を絡めないグリップをする時松隆光プロのような人も出てきましたが、それを除けば、ゴルフは何百年もの間、右手小指と左手人差し指を絡めるグリップが主流でした。

野球などでは指を絡めないのに、ゴルフはなぜ指を絡めてきたのでしょうか。それこそが、道具を使ってボールを打つすべての競技の中で、ゴルフが一番遠くに球を飛ばせる要因だったのかもしれないのです。つまり、テコの原理を使って、力点にほんのちょっと力を加えるだけで、作用点のヘッドを最大限に動かしてきました。

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テコの原理の応用したゴルフのスイング

スイング,イラスト

通常のアドレスをして、テークバックのスタートで、左手の小指球でグリップエンドを押し下げます。力点に、ほんのちょっとの力を加える。すると作用点のヘッドは大きく動いて浮き上がります。
そのままヘッドが右腰の高さまで上がってきたら、あとは慣性モーメントでトップの位置まで上がっていきます。この間、手首のコックはずっとキープしたままです。

この動きを、一部では「アーリーコック」として勧めないプロもいることは承知していますが、大事なのはこの先、トップからインパクト直前までの動きです。

さて、トップで切り返したらダウンスイングに入ります。ダウンに入っても、ハーフウェイダウンまでは、手首のコックはキープしたままです。そのコックをインパクトの手前で一気にリリースします。このコックの開放により、ヘッドは急加速します。

ただし、手首のコックを開放するといっても、手首はいくらでも小指側に折れるわけではありません。手首が親指側に折れる動きを「撓屈(とう屈)」、小指側に折れる動きを「尺屈」といいますが、撓屈は約25度折れるだけ、尺屈は55度折れるだけです。そして撓屈も尺屈もそれ以上は折れません。ここが大事なのです。

言い換えると、インパクト直前までキープしてきた左手首の撓屈を開放し、同時に右手首を尺屈させてヘッドを加速させたのに、尺屈は55度折れたところで止まって、これ以上は折れないという動きをするため、ここがストッパーとなって、ヘッドに慣性モーメントが働き、シャフトの逆しなりを生んで、さらにヘッドスピードがアップするという現象が生まれるのです。

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丸い棒を転がして、その端っこをストッパーで止めると、反対側は加速がついて勢いよく転がりますよね。慣性モーメントが働くためですが、もし反対側に重りがついていたら、加速度はさらに増します。

クラブの先端についているヘッドは、わずか200グラム程度の重さですが、尺屈が55度のところで止まってストッパーの働きをするため、200グラムのヘッドの重さが効果的に働いて、より一層ヘッドスピードを加速させるというわけです。

プロのスイングの分解写真を見ると、ほとんどのプロがインパクトエリアの手前でシャフトを逆しなりさせています。それは手首の撓屈の開放と尺屈を一瞬の間に処理しているからにほかなりません。

つまり、プロをはじめとする世の中の「飛ばし屋」と言われる人たちは、すべて「撓屈➡尺屈」を目に見えない速さでやっているのです。見方を変えると、このテコの原理と慣性モーメントを利用した「撓屈➡尺屈」の動きを取り入れれば、70歳を過ぎたシニアゴルファーであろうと、非力な女性ゴルファーであろうと、間違いなくヘッドスピードをアップさせ、飛距離を伸ばすことができます。

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飛ばしたいなら手を振るのではなく、ヘッドを振れ。そのためにはコックを最大限に生かせ

スイング,イラスト

なぜゴルフのグリップは、右手と左手の指を絡めるのか、何も考えずに当たり前のようにやっていることに疑問を感じて、それを論理的に解明すると、すべてのスポーツのなかで一番遠くに球を飛ばすことができるゴルフの醍醐味がわかってきます。

この理屈がわかって以来、私は74歳にして4番アイアンの精度が目に見えてアップし、ドライバーの飛距離もコンスタントに230ヤード越をキープするようになりました。

プロによっては、両手首でできる二等辺三角形を崩さずにテークバックするよう指導する人もいますが、それは「手を振る」ことを主眼に置いた教えで、「ヘッドを振る」ことは二の次、三の次になっています。

もちろん二等辺三角形をキープした状態でテークバックすることにもメリットはあります。インパクトでボールに当たる場所がズレにくいため、安定して球を捉えやすいのです。ただし、二等辺三角形を崩さずに振る動きはヘッドスピードを出す動力源にはならないため、その振り方のアプローチでは、ヘッドは走らず、スピンはかかりません。

飛ばしたいなら手を振るのではなく、ヘッドを振れ。そのためにはコックを最大限に生かせ。そこに視点を置くと、ゴルフはエイジシュート年代になってもまだまだ遠くに飛ばせる楽しみが得られるはずだと思っているのです。

高橋健二

高橋健二氏

ノンフィクションライター。1948年生まれ。

企業ものノンフィクション「スーパーファミコン任天堂の陰謀」などを多数執筆。趣味はゴルフ。エイジシュート達成者(エージシューター)を100人以上取材し、自身も68歳のとき1度達成している。

なお、エージシューターとは1ラウンド(18ホール)のゴルフで自分の年齢以下のスコアを出したゴルファーのこと。生涯で達成できるゴルファーは非常に少なく、ゴルファーにとっての究極の目標でもある。


100切りなんて簡単だ!エージシューターの極意

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